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朝日新聞記者の将棋の日々

2019.05.17 公開 ポスト

佐藤名人vs.豊島二冠 激闘の名人戦第3局――豊島二冠が最高峰のタイトル奪取に王手村瀬信也(朝日新聞 将棋担当記者)

豊島将之二冠が佐藤天彦名人を破って3連勝とし、名人獲得に王手をかけた。

「豊島さんが優勢ですね」

「名人が勝ちそうだ」

検討室に詰めかけた棋士たちの形勢判断は、大きく揺れていた。

佐藤天彦名人に豊島将之二冠が挑戦する第77期将棋名人戦七番勝負は、ここまで豊島の2連勝。豊島が勝てば初の名人獲得に大きく近づく。先手番の佐藤にとっては、是が非でも落とせない一戦だ。勝負どころとも言える第3局は5月8日、2日目の夕方になっても均衡が保たれた熱戦になっていた。

 

岡山県倉敷市の観光スポット「美観地区」にほど近い倉敷市芸文館。その3階にある和室が、今回の舞台だ。2階の検討室では、立会人の淡路仁茂九段や副立会人の畠山鎮七段、大石直嗣七段らが、対局室を映すモニターを見つめている。倉敷に近い、広島県福山市出身の今泉健司四段の姿もある。午後8時半ごろの段階では、佐藤の攻めが途切れそうで、「豊島がリードを奪った」とみられていた。

この時間帯になると、記者は勝敗だけでなく、「いつ決着するのか」が気になり始める。新聞の記事の締め切り時刻が迫ってくるからだ。判断の助けになればと思い、私は手元のノートパソコンにインストール済みの将棋ソフトが示す形勢判断を注視していた。

するとどうだろう。人工知能(AI)は、わずかに豊島側がリードではあるものの、ほぼ互角の「評価値」を示している。あれ? 豊島二冠が勝ちそうだったのでは……

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朝日新聞記者の将棋の日々

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村瀬信也 朝日新聞 将棋担当記者

1980年東京都生まれ。早稲田大学将棋部で腕を磨き、2000年の学生名人戦でベスト16に。2003年、朝日新聞社に入社。2008年に文化グループ員になり、2011年から将棋の専属担当に。大阪勤務を経て、2016年、東京本社文化くらし報道部員になり、将棋を担当。名人戦や順位戦、朝日杯将棋オープン戦を中心に取材。共著に『大志 藤井聡太のいる時代』(朝日新聞出版)がある。

Twitter:@murase_yodan

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