深夜のファミレスにはある種のグルーヴがある。明らかに帰る家がなくドリンクバーで何時間もしのぐおじさん。ホテヘル嬢だろう、うつむいて電話を待っている女の人。未成年と思われる勉強のできなそうな家出少年。席は向かい合ってはいるが、お互いの顔を見ることはなくゲームの画面に没頭するオタク。
各々が訳ありなムードを内包しつつ、そこには不干渉だ。だが確かに存在していることをお互いに肩で認知しあっている。手を取り、徒党を組むことだけではなく、無干渉だが無関係ではないというグルーヴも存在することをわたしは真夜中のファミレスで学んだ。
いきつけのジョナサンにわたしが入店して24時間をゆうに経過している。店員はわたしと目があうと会釈するが、毎日来るためだろう、その微笑みにもわずかだが親しみを感じ取ることができた。
わたしはタイピングしている。当たり障りない趣味の有線がややうざったい店内で黒いキーをパチパチ打ちながら、複数の人間の人生を描いている。このキーボードを打つ画面の向こう側の景色を創造することは、まるで神様の仕事のようで、大げさなようだが、時にナーバスに入ることもあった。現実世界の友人と同じように、書いているうちに登場人物に思い入れも生まれる。
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