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仕事2.0

2019.06.07 公開 ポスト

「人生100年時代」変身できる人、できない人の間に格差が生まれる佐藤留美

ひとつの会社で一生を終えることは、もはや不可能。究極の個人戦を生き抜く、新しい働き方とは……。終身雇用、年功序列、新卒採用など、従来のシステムが崩壊しつつある今、ぜひ読んでおきたい本がある。それが、ソーシャル経済メディア「NewsPicks」副編集長、佐藤留美さんの『仕事2.0』だ。佐藤さんが考える、これからの時代の働き方とは? 本書の一部をご紹介します。

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「老後破産」を防ぐたった1つの方法

我々現役世代は、老後資金をどのように確保したらよいのでしょうか? 考えうる選択肢は次の5つです。

(写真:iStock.com/bee32)

1. 定年までに貯金する。

2. 資産運用する。

3. 老後生活のコストを下げる。

4. 現役時の生活コスト(支出)を下げる。

5. 現役期間を延ばす。

1つ1つの選択肢を考えていきましょう。

1の場合、仮に生涯年収が2億円だとして、そのうち15%を貯蓄しておいたとしても、3000万円にしかなりません

2の場合、“95歳で資産がなくなることを想定し、60歳から75歳までを「資産運用を続けられる時代」、それ以降は「使うだけの時代」とする”、前出の野尻氏の考えで見てみましょう。

それによると、60歳で資産が約4000万円ある場合、60歳から75歳まで毎年、残高の4%を引き出し、毎年平均3%の運用益を確保できれば、計算上では75歳で約3500万円の資産を持っていることになります。しかし、現実的に投資に頼り切るのはリスキーです。

3の老後生活のコストを下げることも、一度確立した生活設計を、極端に下げることは困難です。

4については、40代は子どもの成長とともに教育関係費の支出が50代に次ぎ家計を圧迫するため、支出を抑えるのはそう簡単ではありません。事実、総務省統計局の調査によると、40代は年間で、平均45万9521円の教育関係費を負担しています。

ちなみに、文部科学省の「文部科学調査白書」によると、大学卒業までに各家庭が負担する平均的な教育費は、幼稚園から高校まで公立に在学し、国立大学に進学した場合で約1000万円。それらがすべて私立の場合は、約2300万円に跳ね上がります。

同白書によると、とりわけ大学に進む年齢の子どもが多い52歳、53歳は可処分所得の実に52%を教育費が占め、平均貯蓄率は長子が大学生となった段階でマイナスに転落することがわかります。

そして、「それまでに十分に貯蓄できる余裕がある家庭でなければ進学を選択肢に入れることすら難しくなる」と指摘しているのです。ということは、子どもの大学進学を視野に入れると、現在の30代、40代はそれに備えて貯蓄する必要があるといえます。

ちなみに40代は、子どもの教育、親の介護、自分の老後不安と、一度に解決できない3つの課題に直面する「トリレンマ」世代といわれています。

高齢者数の増加とともに介護による離職者も増加しています。2012年の「就業構造基本調査」の結果を見ると、介護をしている有業者は290万人となっており、そのうち40歳から69歳までが7割近くを占めています。また、介護・看護のために過去1年で仕事を辞めた人は10万1000人もいます(総務省統計局「明日への統計2017」)。

そう考えると我々現役世代が、今から老後に備える上で一番重要かつ現実的な選択肢としては、5の「現役期間を延ばす」ことがもっとも妥当なのではないでしょうか。

現金より「無形資産」が大事になる

では、我々が長く働くためには、どのような準備をすべきでしょうか? グラットン氏は、NewsPicksの取材で「有形資産より、無形資産を蓄えよ」と、次のように語りました。

(写真:iStock.com/patpitchaya)

「『有形資産』とは、お金やモノのことを指しますが、それ以上に健康や仲間、変化への対応力といった『無形資産』が重要だと私は考えています。

平均寿命が短い時代では、『引退』ステージのために、金融資産を蓄積することが合理的でした。しかし寿命が延びると、お金を蓄積するより、『より長く働くための資産』を蓄積する必要があります。それこそが、生産性資産、活力資産、変身資産からなる『無形資産』です」

グラットン氏は人生100年時代に向けて、以下の3つの「無形資産」を蓄えるべきと論じています。

1. 生産性資産

生産性を高めて成功し、所得を増やすのに役立つ要素。構成要素はスキルや知識など。

2. 活力資産

肉体的・精神的な健康と幸福のこと。健康、友人関係、パートナーや家族との良好な関係などが該当。

3. 変身資産

人生100年時代を生きる人たちは、その過程で大きな変化を経験する。それに対応するために自分をよく知っている、助けてくれる人的ネットワークがある、また、新しい経験に挑戦する意欲があるといった要素。

わけても、100年人生を生き抜くためには「変身資産」を貯蓄することが重要としています。その理由について次のように説明します。

「我々は、常に変化できるようにならなければなりません。これまでの3ステージの人生では、誰もが同時に、ロックステップ式(密集行進式)に人生のステージを変わるため、個人が変化を意識する必要がありませんでした。

しかしこれからの『マルチステージ・ライフ』では、自分自身で変化を制御することが求められます。自分は一体どうなりたいのかを選択しなければならないのです。だから私は、『無形資産』の柱の1つとして『変身資産』を位置付けたのです。

具体的には自分自身に対する深い理解や、変化を助ける多様なネットワークが挙げられますが、変身できることそれ自体が、これからは資産になってくるのです」

そして、今後は時代の変化に対応して変身できる人とできない人の間で格差が拡がる、と指摘するのです。

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ひとつの会社で一生を終えることは、もはや不可能。究極の個人戦を生き抜く、新しい働き方とは……。終身雇用、年功序列、新卒採用など、従来のシステムが崩壊しつつある今、ぜひ読んでおきたい本がある。それが、ソーシャル経済メディア「NewsPicks」副編集長、佐藤留美さんの『仕事2.0』だ。佐藤さんが考える、これからの時代の働き方とは? 本書の一部をご紹介します。

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佐藤留美

NewsPicks編集部副編集長。青山学院大学文学部卒業後、出版社、人材関連会社勤務を経て、2005年編集企画会社ブックシェルフ設立。人事、人材、労働、キャリア関連の記事を多数執筆。2014年7月からNewsPicks編集部に参画、2015年1月副編集長に。専門は雇用、労働、キャリアなど。

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