ひとつの会社で一生を終えることは、もはや不可能。究極の個人戦を生き抜く、新しい働き方とは……。終身雇用、年功序列、新卒採用など、従来のシステムが崩壊しつつある今、ぜひ読んでおきたい本がある。それが、ソーシャル経済メディア「NewsPicks」副編集長、佐藤留美さんの『仕事2.0』だ。佐藤さんが考える、これからの時代の働き方とは? 本書の一部をご紹介します。
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「クリエイティブ・エコノミー」の時代が到来する
有名大学の学位保有という名誉、就職後の固定化された地位……。以前、グーグルで人材開発のリーダーを務めていた、『ニューエリート』(大和書房)の著者でもあるピョートル・フェリクス・グジバチ氏は、こうした「旧エリート」の特性は、今急速に価値を失いつつあると指摘します。
モノを収穫していた生産経済の時代は肉体労働が主で、働く人には服従と勤勉が必要とされました。次のナレッジ・エコノミー(知識を基盤とした経済)の時代になると、専門性や知恵が求められるようになりました。ところが今やその専門性や知恵も、AIによる代替が議論されています。
このような動きにより、人間のこれからの働き方のステージは、より創造性を問われる「クリエイティブ・エコノミー」の時代に入るといわれています。
だからこそ、グジバチ氏は「この時代に生きる人材は、ゼロから新しい価値を生み出す情熱、創造性、率先が必要になる」といい、そのことを踏まえて、今後のキャリアについて相談に来る相手にはいつも、こう問いかけるそうです。
Are you ready to get fired? ──クビになる準備はできていますか?
つまり、たとえ今の職を失うといったショッキングなことが起きても変化を受け入れ、変わり続けることができる。常に次の可能性に備えることができる人材こそが、これからの時代の「ニューエリート」の条件だというのです。
重要なのは「今どこにいるか」という地位よりも、元いた場所と今いる場所に差があること。生まれながらのエリートがいつまでもエリートで居続けられる時代ではなく、「持続的に成長できる人」こそがニューエリートなのです。
未来の子どもにも劣る存在に
立教大学の中原淳教授も、持続的に成長することこそ、人生100年時代を生き抜くサバイバル術だといいます。NewsPicksのインタビューでこう語りました。
「人がずっと同じような生活をしたり、生涯を通じて仕事をしたりすることが安定的でなくなった今、たとえ大人になったとしても学び続けない限り、『次世代の子ども』にも劣る存在に落ちてしまいます。つまり、学ぶことを放棄した大人は、次世代の子ども以下に『劣化』する。私たちは、そういう変化の激しい時代を生き抜かなくてはなりません」
古代社会は変化に乏しく非常に安定的で、時間がゆっくり流れていました。人は一生のうち1つの「出来上がった世界」にしか住んでいませんでした。そのため、子どもは一度「イニシエーション(通過儀礼)」を経験し大人になると、その後はずっと、大人は「大人でいること」ができました。
しかし、周知の通り、現在は「右肩上がりに技術や知識が進歩する」社会です。
このような世界においては、たとえば「A」という世界で独り立ちできる知識や経験を積み、「大人」になれたとしても、安泰ではありません。変化の早い社会ではいったん大人になっても、大人で居続けられるわけではないのです。
時代は常に斜め上方向に流れ、「B」という世界に移行してしまいます。時代が「A」から「B」に移れば、前時代の「大人A」は、もはや「大人」のままではいられません。前時代の「大人A」は次世代の「子どもB」と同じ立ち位置になってしまうのです。つまり、現在の大人は、何もしなければ「次世代の子ども」にも劣る存在に落ちてしまうのです。
実際、前時代の大人が次世代の子どもに逆転されている現象は、変化の激しい分野ではもはや常識になっています。
本書の原稿を書いている2018年5月末現在も、「乳がん見つける“IoTブラジャー” メキシコの19歳青年が開発」というニュースが話題となりました。
元オラクル幹部で、テスラなどでリーダー育成を手がけ、『ルーキー・スマート』(海と月社)などの著書があるリズ・ワイズマン氏も、NewsPicksの取材でこう語りました。
「科学的な情報の量は9カ月で2倍のペースで増え、1年間に30%のペースで時代遅れとなる。常に知識を更新し続けない限り、5年先に使える知識は15%しか残っていない恐れがあります」
そして知識の“短命化”が進み、新しい発見のペースが速まる一方の時代においては、「経験を積んだベテランこそが危険」と警告します。
仕事2.0
ひとつの会社で一生を終えることは、もはや不可能。究極の個人戦を生き抜く、新しい働き方とは……。終身雇用、年功序列、新卒採用など、従来のシステムが崩壊しつつある今、ぜひ読んでおきたい本がある。それが、ソーシャル経済メディア「NewsPicks」副編集長、佐藤留美さんの『仕事2.0』だ。佐藤さんが考える、これからの時代の働き方とは? 本書の一部をご紹介します。