ひとつの会社で一生を終えることは、もはや不可能。究極の個人戦を生き抜く、新しい働き方とは……。終身雇用、年功序列、新卒採用など、従来のシステムが崩壊しつつある今、ぜひ読んでおきたい本がある。それが、ソーシャル経済メディア「NewsPicks」副編集長、佐藤留美さんの『仕事2.0』だ。佐藤さんが考える、これからの時代の働き方とは? 本書の一部をご紹介します。
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ヤフーの「真の狙い」とは
仕事と学びが一体化した新時代の働き方を奨励する企業も、ITやネット関連企業を中心に出現してきました。なぜ副業の解禁や短時間勤務、テレワークなど「柔軟な働き方」がITやネット業界を中心に進んでいるかといえば、理由は主に2つあります。
1つはITやネット企業の中心的存在であるエンジニアはもともと、実践による体験学習がスキルの向上に不可欠なため、学びを兼ねた副業・兼業を当然のごとく行ってきた習慣があり、これを認めない限り優秀な人材の確保やリテンション(流出防止)が難しいこと。
2つ目は、テクノロジー企業のため、テレワークを進める上で欠かせない、遠隔会議システムの導入などが比較的容易であることなどです。
さて、柔軟な働き方をいち早く実践する企業としては、ヤフーが有名です。2016年9月、ヤフーは「週休3日制」の導入を検討していることを発表しました。
同社社長の(当時は副社長執行役員 最高執行責任者)である川邊健太郎氏は、新オフィスの見学会で「単純な作業などはAIや機械学習に任せて、人間にはより創造性が豊かな仕事をしてもらう。(中略)それによって週休3日を実現していきたい」と語りました。
通常の週休2日に加えてあと1日休みになり、その間は副業しようが勉強しようが遊ぼうが本人の自由、という新制度の狙いとは何なのでしょうか。
日本の企業は他の先進国に比べて、ワーキングマザー向けの「短時間勤務制度(時短)」が普及しています。そして、この制度を利用する女性は、たとえ成果はフルタイム勤務の社員と同じだけ出していても、働く時間が減るだけ、きっちり減額されるのが常です(このあたりの問題点については拙著『凄母』〈東洋経済新報社〉をお読みください)。
では、ヤフーの「週休3日制」の場合はどうなのでしょうか。
「成果」がより求められる
同社の人事を統括する上級執行役員、コーポレート統括本部長の本間浩輔氏はNews Picksの取材で、そもそも「週休3日制」導入の前提は時間拘束ではなく、成果に対してお金を払うことを徹底することにあると語りました。
「そもそもこれまでの会社というのは、従業員に対して横柄だったと思うのです。ウチは9時から5時までの勤務だから、この通りに働いてくれなきゃ会社に入れてやんないよ、という世界じゃないですか。そうではなくて、あなたが好きな働き方で働いてくださいという会社があったっていいと思います」
よって、週休3日でも、貢献度の高い社員はむしろ給料を上げるし、そうではない人は給料を下げるといいます。「週休3日制」というと、なんて楽なんだと羨ましがる人も多いかもしれませんが、何時間働いたといった「根性論」はどうでもよく、求めるのはあくまで成果という、ある意味厳しい制度ともいえるのです。
もっとも、従業員を時間で管理しない場合、難しいのは各人の成果や貢献度をどう測るかです。実際本間氏も、「週休3日や在宅勤務が成功するかどうかは、上長がメンバーを正しく評価できるかどうかがすべて」と強調します。
そのため同社では、より公正な評価にするため360度評価を取り入れ、いくら仕事ができても部下を適正に評価できない管理職は、マネジメントからは外れてもらうということを徹底しているそうです。
また、ヤフーが示した「脱時間給」の流れは、これまでの“会社の常識”を2つ否定することになるといいます。
1つは、会社に来て働かなければいけないという常識です。会社への貢献度が高ければいつ来てもいいし、むしろ来なくてもいいという自由を与える代わりに、長時間会社にいることでガッツを見せつける、上司にゴマをするといった、かつての出世の小技は一切使えなくなります。
そして2つ目は定年という概念です。
本間氏は、「実は僕らがチャレンジしたいのは定年の廃止。そもそも定年なんて、ナンセンス」と語ります。確かに65歳の誕生日を迎えたからといって、いきなりその人のスキルや成果が落ちるのかといえばそんなことはありません。
前述したように、今や新卒採用においても「一律初任給」といった横並びの考えは通用しなくなりつつある以上、「一律定年の廃止」も検討されるべきではないでしょうか。
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