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美しい暮らし

2019.06.05 公開 ポスト

蕨を煮ながら、考える矢吹透

ご近所の神社の大きなお祭りが、週末に終わり、それからの数日は、静かに過ぎて行きました。

そして、街にも、日常の落ち着きが戻ってまいりました。

私は、汗になった祭り袢纏や浴衣を洗濯し、丁寧に畳んで、箪笥の奥に仕舞ったり、祭りでお世話になった町内の方々に御礼に伺ったりしながらも、どこか少し腑抜けたように、数日間を過ごしました。

気がつくと、スーパーマーケットの野菜売り場に、実山椒が並び始めておりました。毎年、実山椒が出る季節に、大量に買い求め、下処理を済ませ、小分けにして冷凍し、一年分のストックを確保する、というのが習いなのですが、まだ出初めで、若干お値段が張るので、もう少し出回って、価格が落ち着くのを待とう、などと思い、売り場を行き過ぎました。

見切り品の売り場に、蕨が並んでいるのを見つけました。先っぽが少し茶色くなって来てはおりますが、1束が90円です。2束を買い求めました。

見切り品ではない立派な蕨は、1束が398円です。

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矢吹透『美しい暮らし』

味覚の記憶は、いつも大切な人たちと結びつく——。 冬の午後に訪ねてきた後輩のために作る冬のほうれんそうの一品。苦味に春を感じる、ふきのとうのピッツア。少年の心細い気持ちを救った香港のキュウリのサンドイッチ。海の家のようなレストランで出会った白いサングリア。仕事と恋の思い出が詰まったベーカリーの閉店……。 人生の喜びも哀しみもたっぷり味わせてくれる、繊細で胸にしみいる文章とレシピ。

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美しい暮らし

 日々を丁寧に慈しみながら暮らすこと。食事がおいしくいただけること、友人と楽しく語らうこと、その貴重さ、ありがたさを見つめ直すために。

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矢吹透

東京生まれ。 慶應義塾大学在学中に第47回小説現代新人賞(講談社主催)を受賞。 大学を卒業後、テレビ局に勤務するが、早期退職制度に応募し、退社。 第二の人生を模索する日々。

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