我が形見見つつしのはせ荒珠(あらたま)の年の緒長く我も思(しの)はむ(巻四・五八七)
(現代語訳)お別れの時に私があげたプレゼント、ちゃんと見返して私のことを思い出してくださいね。私もずっとずっとあなたのことを思っていますわ(はぁと)。
……これが長年連れ添った夫婦のあいだで贈られた歌なら「わーラブラブだー」とにっこり微笑みたくなるけれど。結婚しているわけでもない女性から、遠くへ赴任することになった時に贈られた歌だとすると、けっこう「うっ、おそろしい」と背筋を凍らしてしまう、かもしれない。
今回ご紹介するこの歌の作者は、その名も笠女郎(かさのいらつめ)さん。
笠女郎、めちゃくちゃかわいい歌詠むんだけど、その一方で愛が重たく歌も重たく、現代風に言うと「LINEを送りすぎて既読スルーされる女子」なのですわ……。
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ラブコメ!萬葉集
新元号「令和」の元ネタとして今注目の「萬葉集」。萬葉集研究をしていた京大院卒書評家が、その面白さを現代目線からぶったぎりつつ解説します。