日本人で唯一「YouTube週間チャート世界第1位」を獲得、さらに日本人として26年ぶりにビルボードチャートインした「ピコ太郎」。その再生回数は、なんと累計4億4千万回! 一世を風靡したこのエンターテイナーは、どのようにして生まれたのか? そしてどのようにして一大ブームを巻き起こしたのか? ピコ太郎の「プロデューサー」である芸人、古坂大魔王の著書『ピコ太郎のつくりかた』から、その秘密を探ります。
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多面的、一極集中、スピーディー
僕はインターネットを長い間やってきた中で、ネットでバズを生み出すためには3つの条件があると気づいた。
それは、多面的、一極集中、スピーディーだ。
僕はそもそもR‐1ぐらんぷりに出るために、ピコ太郎の動画を出そうと思っていた。
しかし、ピコ太郎はあまりにも世の中に出ていない。テレビとかインターネットとかに出ている動画はほぼ0件だった。
そこで、まずはピコ太郎を知ってもらうためにとにかく一回バズらせたいなと考えた。
「転校生の原理」から考えても、無名のままのピコ太郎をR‐1ぐらんぷりに出しても、現場ではまずウケない。ウケたとしても、それだけでは足りない。テレビの番組である以上話題性が伴ったほうが勝ち抜くチャンスが増える。
だから自腹で動画を作って、自分の後輩とか、アーティストの仲間とか、アイドルとかに「ごめん、今回は自腹だから、ちょっと広めてほしい。ぜひともバズらせてほしい」と頭を下げて頼んだ。
いざやるなら一気にやらないといけないことはここまでで感じていた。
火を1カ所につけても少量の雨で消えてしまうから、大きいキャンプファイヤーじゃないといけない。
ということは、同時期に、多面的に火をつけるしか方法はない。
だからお笑い芸人、アイドル、歌手、俳優、いろんな人に「今日やってくんない?」と言って、同日にやってもらった。
ジャスティン・ビーバーに届くまで
そして8月25日に動画をアップして、8月30日ぐらいまでにちょっと盛り上げたいなと思っていたところ、たまたま運よく、文化祭シーズンだった。
この時期は、学校に携帯を持っていって何かを撮るのがOKな時期だったのかもしれない。
しかも文化祭シーズンって、「なんかおもしろいことない?」と探している時期。
たまたま、そういう時期に当たったから、まず中高生がパッと飛びついてくれた。
そして、ミックスチャンネルっていうアプリで盛り上がって、ずーっと1位になって、そこからユーチューブにボーンと広がっていった。
日本の中高生って世界的にもとても興味を持たれている。
日本の中高生の間で流行っているものって、レディー・ガガも「カワイイ」って言うし、ファッション的にもカルチャー的にも、ちょっと飛んでいる世界なのだ。
そこに世界中が興味を持って、まずはタイ、韓国、台湾などのアジアに広がって、次にじわじわヨーロッパに行って、9月25日にはアメリカの9GAGっていうサイトがドーンと載っけて、そこから僕のところにメールがドッと届き始めた。
さらに、バットマンがピコ太郎をぶんなぐっている絵とかが流れてきて、ワッと盛り上がっているときに、例のジャスティン・ビーバーのツイートがボーンと来たのだ。
「ジャスティンインパクト」である。
多くの人はジャスティン・ビーバーが偶然ツイートしたから一気にバズったという印象を持っていると思うけれど、実は多面的、一極集中、スピーディーに小さな火をつけて行ったことがきっかけだった。でもでも、ジャスティンはでかいよ……そこはごめん……。