ほかに誰がいる? わたしの心をこんなにも強くしめつける存在が。憧れのひと、玲子への想いを貫くあまり、人生を少しずつ狂わせていく16歳のえり。玲子――こっそりつけた愛称は天鵞絨(びろうど)――への恋心が暴走する衝撃の物語を、冒頭から抜粋してお届けします。ヤミツキ必至!大注目作家の話題作。
* * *
5
齧(かじ)りかけの林檎(りんご)のマーク。机の上に、ノートパソコンがのっている。
「おとうさんがね、もう、いらないからって」
天鵞絨がいった。
「ポラロイドもそうだったよね」
林檎のマークに触れながら、わたしがいった。
「新しいもの好きなんだよ、あのひと。メカっぽいの、好きでね。子どものおもちゃとおんなじ。すぐ、飽きちゃうんだ」
「おとうさん、なにやってるひと?」
「病院関係」
「医者?」
「そんなとこかな」
ほかに誰がいる
女友達への愛が暴走し狂気に変わる……衝撃のサスペンス
- バックナンバー
-
- #16「抱きしめてあげる。えりのこと」…...
- #15 放熱…破滅へ向かう少女の恋
- #14 ストップ。レビュー。スタート。…...
- #13「しゅうちゃん」…破滅へ向かう少女...
- #12 血の味…破滅へ向かう少女の恋
- #11 臓物…破滅へ向かう少女の恋
- #10 離ればなれ…破滅へ向かう少女の恋
- #9 おまじない…破滅へ向かう少女の恋
- #8 公園の「かれ」…破滅へ向かう少女の...
- #7 あってはならないこと…破滅へ向かう...
- #6 丸い箱…破滅へ向かう少女の恋
- #5 おとうさん…破滅へ向かう少女の恋
- #4 似ているふたり…破滅へ向かう少女の...
- #3 天鵞絨(びろうど)の手触り…破滅へ...
- #2 肌を灼く…破滅へ向かう少女の恋
- #1 ガシュウレイコ…破滅へ向かう少女の...
- #0 あのひとの横顔…破滅へ向かう少女の...