ほかに誰がいる? わたしの心をこんなにも強くしめつける存在が。憧れのひと、玲子への想いを貫くあまり、人生を少しずつ狂わせていく16歳のえり。玲子――こっそりつけた愛称は天鵞絨(びろうど)――への恋心が暴走する衝撃の物語を、冒頭から抜粋してお届けします。ヤミツキ必至!大注目作家の話題作。
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6
大きめの箱を買った。
クリスマスシーズンに見つけた箱は、蝋(ろう)引きの厚手の紙に、オールドローズが描かれている。つばの広い帽子をしまうのにちょうどいいような円(まる)い箱だ。
その箱にノートや写真や天鵞絨からの手紙を入れた。
ポスターも入れた。外国の町並みを空撮したものだ。海も空も青い。青は、ここまで青くなければ嘘(うそ)だというような青だった。
ポスターの景色にはオレンジ色の屋根をいただいた石造りの家が並び、白い道が蜘蛛(くも)の巣状にのびている。そこを旧い年式の車が走っている。車は水色だったりミント・グリーンだったりした。あちこちに、こんもりと葉を茂らせた木が立っている。
わたしは、わたしと天鵞絨を、写真から切り抜き、そのポスターに貼(は)った。すると、わたしたちは、空からそのまちへ、いままさに降りていこうとしているようだった。
ここをわたしたちの家にしよう。ポスターのなかの、いちばん大きな家をそう決めた。
そして、わたしたちは、がちょうやにわとりやうずらを飼って、たくさんたまごをかえすのだ。雛(ひな)たちは、ぴいぴい鳴いてやかましいだろうが、わたしたちは微笑(ほほえ)んで顔を見合わせるだろう。
ほかに誰がいる
女友達への愛が暴走し狂気に変わる……衝撃のサスペンス
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