落語家・桂竹千代による、笑って学べる「古事記」の爆笑解説、スタートです!
そもそも「古事記」って誰が書いたの? ってあたりから教えていただきましょう。
あまりにも大胆なその成り立ちに、びっくりしてください。
* * *
第1話「覚えられるか!」
日本最古の歴史書、『古事記』には「序文」が頭に付いていて、ここに成立の経緯が記されています。
それによれば、『古事記』の成立は、西暦712年。8世紀のことです。中国では唐という大国家が最盛期を迎え、世界三大美女と言われる楊貴妃(ようきひ。会ってみたい!)が皇帝をたぶらかしていた頃です。
日本では、「乙巳の変(いっしのへん)」というのがありましたが、それが645年です。これは、中大兄皇子(なかのおおえおおうじ)と中臣鎌足(なかとみのかまたり)が、天皇家を乗っ取ろうとする蘇我入鹿(そがのいるか)を倒した「変」で、前は「大化の改新」と言ってたので、そっちで聞き覚えのある人も多いかも。その後、大和朝廷は701年に大宝律令(刑法と民法)を出して中央集権化(一つの組織で支配するってこと)を目指し、710年には都を奈良の平城京に移した……そんな時代です。
時の帝は、元明天皇という女帝でした。
その家臣であった稗田阿礼(ひえだのあれ)という人が記憶していた日本古来の伝説・伝承を、太安万侶(おおののやすまろ)という人が文字に起こしたのが、古事記の始まりです。つまり原作:稗田阿礼、筆:太安万侶ってこと。
これ、すごくないですか? 冷静に考えてみてください。国の歴史書が1人の部下の記憶力に頼って書かれたんですよ。
この稗田阿礼って人、実は何者かよくわかっていません。古事記の編纂に携わったということしか史料がない。とても賢い人だったとしかわかっていない。何なら男か女かもわかっていない。
一説には、
中大兄皇子と協力して蘇我氏を滅ぼした、「中臣鎌足」の子供、藤原不比等(ふじわらのふひと)と同一人物とも言われますが、わかっていません。藤原不比等といえば、後に何百年も藤原氏の繁栄を築いた人です。
そんなよくわからん人が原作者なのに、1300年以上のロングセラーとなってるんです(印税ヤバいよね!)。
とにかく稗田さん(中学校の時、稗田先生っていたなあ)の暗記力はすごかったんでしょうね。
ちなみにボク達芸人は、お客様の顔をちゃんと覚えています。わざわざお金を払って足を運んでくださるお客様は神様ですから(八百万もいませんけど。お祀りしてお賽銭(さいせん)上げて参拝したいくらいです! )。
……いや正直言うと、一度来ただけのお客様は覚えられない……。覚えて欲しかったらもっと来……いや一度でも来て頂けるだけでとってもありがたいデス。
ただ! 数年に一度しか来ないお客様に限って……ヤボなこと聞いてくるんですよね。
客「おうタケチヨー! おれ、前にオマエの落語見たんだけど、おれのこと覚えてるー?」
「覚えてねーよ!」とは言えないので
竹千代「もっ……もちろん覚えてますよ!」
客「どこで会ったか覚えてる?!」
こーゆー人に限って掘り下げて聞いてくるよね。
竹千代「何かしらの落語会ですよね?」
ぼんやりアバウトに言うと
客「どこの落語会かわかるー?」
こんな具合に、さらに掘ってくる(ちなみにこのお客さんの職業は土木関係で、なるほど掘るのがお上手! ……ってやかましいわ! )。
竹千代「都内ですよね?」
客「違うよー! 静岡だよ! 覚えてないじゃん! 舞台から客席見てお客さんの顔一人ひとり覚えないとダメだよー!」
聞いてみると5年前、ボクがまだ歌丸師匠のかばん持ちのとき、静岡のホールで師匠の前座をやらせて頂いたときでした。歌丸師匠のお客さんなんで、その方は大ホールに2000人いる中の1人。
わかるか!!
客「おれ、あん時風邪ひいててさ、マスクして帽子被ってたんだよー」
顔出てねーじゃねーか!!
……といいたいところではありますが、もし稗田阿礼なら、全てのお客様の顔を覚えることもできたのでしょう。
「芝浜」とか「文七元結」とか「百年目」なんて、すぐ覚えられるのでしょう(これ3つとも1時間くらいある落語の演目だよ! )。
そんなうらやますぃ~記憶力をもった稗田阿礼が語る神々の物語、はじまりはじまり~。
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落語DE古事記
神社に行けば、私たちは神様にありとあらゆることをお願いしますよね。商売繁盛に合格祈願に延命長寿に縁結びに厄除けに……。
でもちょっと待って。こんなに頼りにしてる「神様」のこと、ちゃんと知ってますか?
神様について書いてあるのが「古事記」です。歴史の教科書でも最初の方に出てくるので、「古事記」について聞いたことのない人はいないと思いますが、でも何が書かれているかまで説明できる人って、少ないんじゃないでしょうか。
そこで、大学院まで古代史を専攻していた落語家の桂竹千代さんに、「古事記」を楽しく解説していただくことにしました。
爆笑注意ですから、静かな場所では読まないようにしてくださいね!
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