日本最古の歴史書「古事記」を、落語家の桂竹千代さんが爆笑モリモリで読ませるこの連載。
今回は、有名なアマテラスオオミカミとスサノオノミコトが、「神様対決」を始めます。
ルールから何から、想定外すぎて、ほんとうにこんなことが日本最古の”歴史書”に書かれてるの?と、びっくり仰天するはず…。
思わず笑っちゃいます。どうぞお楽しみください!
* * *
第5話「ルール教えろって!」
父親のイザナギから勘当されたスサノオは、高天原にいる姉ちゃん・アマテラスの元へ泣きつきます。
アマテラス「あっ、山や川が揺れてる……もしかして、あいつ来るかな。やだな。苦手なんだよな、あいつ。泣き虫だし。だいたい何しに来るんだよー。姉ちゃんヒマだから遊んでよ~! ……ってか。いやいやそんなヤツじゃねーか……何か来るには理由があるはずよ! ……まっ……まさかアタシの高天原を奪うとかそんなんじゃないわよね。やーよそんなの。ふざけないでよ。よーし念には念をよ!」
アマテラスは髪を解いて、左右に分けて束ねて、ボーイッシュガールになります。
完全武装して、弓とか1000本の矢とか勾玉とか付けて、スサノオを待ち受けます。
アマテラス「いよーし! こい!! バカ弟!!」
スサノオ「姉ちゃーん! ……うわ、何その格好。ハロウィン?」
アマテラス「コスプレじゃねーよ! お前こそ何しに来た! この国奪う気だろ! ただじゃおかないぞ! ケツの穴から指突っ込んで奥歯ガタガタ言わせるぞ!」
スサノオ「その攻撃、弓矢関係ないじゃん! 違うんだよ~! 聞いてよ姉ちゃん。オレさ、イザナミ母ちゃんに会いたくて根之堅州国(ねのかたすくに。黄泉の国の別名ともされるし、それに近い場所ともされる。わかりまへん!)に行きたいって泣いてたら、イザナギ父ちゃんから「お前もうどっか行け」って追い出されちゃったんだよー! ゔぇーん!」
アマテラス「だから何だよ! こっちにも来んなよ! てかオメェ鼻の穴から生まれてんだからイザナミさんは母ちゃんじゃねんだよ! そんなこと言ってアタシの国奪う気だろ! ケツの穴に奥歯突っ込んで指ガタガタ言わしたろか!」
スサノオ「あべこべになってるよ! 何も奪おうなんて思ってないよ!」
アマテラス「じゃあその証拠を見してみろや!」
スサノオ「わかった! 誓約(うけい。占い)をして示すよ!」
2柱の神は、天の安の河(あめのやすのかわ。高天原に流れる川)を挟んで対峙します。
それぞれの持ち物を交換して(何で?)、誓約(という名のゲーム)スタート!
ルール:男の子神を生んだ方が勝ち。
アマテラス「いっせーのーで! で始めるわよ!(伊勢神宮の「いっせー」とかかってるわよ!)」
スサノオ「わかった」
アマテラス「では! 3、2、1……スタート! (違うじゃんウソつき!)」
まずアマテラスが、スサノオの十拳の剣を3つに折り(とつかのつるぎ。握り拳10個分のでけー剣)、天真名井の水ですすぎ(宮崎県高千穂町の高千穂峡に真名井の滝ってのがあって、これが神秘的できれい! 手漕ぎボートで滝をくぐれるんだけど、これが楽しい! ここが伝承地ってわけじゃないけど、ボクの中でイメージが近いので紹介しました)、噛み噛みして(神だけにね。うえーい)、吹き出した息の霧から神々が誕生しました(ややこしい占いだな!)。
ここから生まれたのが3柱の女神。
長女:多紀理姫命(タキリビメノミコト。以下タキリビメ)
次女:市寸島姫命(イチキシマヒメノミコト。以下イチキシマヒメ)
三女:多岐都姫命(タギツヒメノミコト。以下タギツヒメ)
ここで暮らしに役立つワンポイント講座!
この3柱の女神は、福岡県の宗像大社(祝! 世界遺産になりました!)に祀られています。宗像三女神と呼ばれるなかなかメジャーな神々です。宗像大社は沖津宮(おきつのみや。沖ノ島にあり)、中津宮(なかつのみや。九州本土の隣の大島にあり)、辺津宮(へつみや。九州本土にあり)とあって、それぞれタキリビメ、タギツヒメ、イチキシマヒメが祀られています(生まれた順番とは違うよ)。
このうち沖津宮のある沖ノ島は、島全体が御神体(神様が宿るとこ)で、基本的には立ち入り禁止です。女人禁制で、入る時は男性もマストで禊をしないといけません。古代の祭祀遺物がめっちゃ残っているまさに「神宿る島」です。
ちなみにその他、有名な神社だと広島県の厳島神社(こちらも世界遺産だ!)、栃木県の日光二荒山神社(日光と言えば家康公だ! 家康公の幼名は竹千代だ! ボクもいずれ祀られたい!)、神奈川県の江島神社(しょうなんですね! うえーい)にも祀られています。もう一つ。イチキシマヒメは神仏習合(仏教の神様と日本の神様が合体するってこと)すると、七福神の弁財天と同一とされます。だから参拝すると財運アップします!
さぁ~て本編に戻ります!
さっきはアマテラスが3柱の神を生みましたが、次は、スサノオの番です。アマテラスの髪に巻いてあった勾玉を手に取り、天真名井の水ですすぎ、噛み噛みして、吹き出した息の霧から5柱の神々が誕生します。
天忍穂耳命(アメノオシホミミノミコト。後に出てくる天孫降臨の主演:ニニギノミコトの父。以下、オシホミミ)
天菩比神(アメノホヒノカミ。出雲大社の神主、出雲国造の祖。天皇家の次に長く続く家系と言われてる千家さん。以下、アメノホヒ)
他3柱の神が誕生(エキストラなので省略します! すみませんかみたま!)
スサノオ「やった! 男の子だ! オレの勝ちだ!」
アマテラス「……いや、アタシの勝ちよ」
スサノオ「何で?」
アマテラス「だってアタシの勾玉から男の子が生まれたんだから。それはアタシが生んだってことだもん」
スサノオ「ズルっ!」
アマテラス「アタシから生まれたらアタシの子。アタシのモノから生まれてもアタシの子」
スサノオ「ジャイアンかよ! ……いいや! やっぱりオレの勝ちだよ」
アマテラス「何で?」
スサノオ「オレに邪心がないから清い女の子が生まれたわけだから! だから女を生んだオレの勝ち!」
アマテラス「……いや男生んだら勝ちゲームじゃなかったっけ?」
スサノオ「とにかくオレの勝ちだ! オレに邪心はないんだー!!」
もはやノールールのゲーム終了。
勝ち誇ったスサノオは、これからめっちゃイタズラをし始めます。
そのイタズラの斬新さと言ったらハチャメチャです。
落語DE古事記
神社に行けば、私たちは神様にありとあらゆることをお願いしますよね。商売繁盛に合格祈願に延命長寿に縁結びに厄除けに……。
でもちょっと待って。こんなに頼りにしてる「神様」のこと、ちゃんと知ってますか?
神様について書いてあるのが「古事記」です。歴史の教科書でも最初の方に出てくるので、「古事記」について聞いたことのない人はいないと思いますが、でも何が書かれているかまで説明できる人って、少ないんじゃないでしょうか。
そこで、大学院まで古代史を専攻していた落語家の桂竹千代さんに、「古事記」を楽しく解説していただくことにしました。
爆笑注意ですから、静かな場所では読まないようにしてくださいね!
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