電子レンジでチンされた猫の話
「アメリカで、シャンプーした猫を乾燥させようとして、電子レンジであたためて死なせた人がいるんだって。しかも『生き物を入れるなという注意書きがなかった』と言って、裁判を起こしたらしい」
大学に入ってすぐの1996年頃、サークルの友達から聞いた話だ。我が家に電子レンジがやってきた頃は、肉まんを炎上させたり、プラスチックの保存容器を溶かしたり、何かと電子レンジのプチ事件が起きていた。大国アメリカなら、猫をチンするようなダイナミックな凡ミスをやらかす人がいてもなんらおかしくはない。しかも裁判に訴えるなんて「石を投げれば弁護士に当たる」とまで言われる国・アメリカらしい話だ。さらに同時期、私が聞いたものとほぼ同じ話を、タレントがテレビ番組で話しているのを見た。やっぱり有名な事件なんだなと妙に納得したのを覚えている。
「レンチン猫」は存在しなかった
ところがこれ、事実ではなく、アメリカから渡来した「都市伝説」だったらしい。実際には「レンチン猫訴訟」の記録はないという。「都市伝説(urbanlegends)」という言葉の名付け親でもあるアメリカの民俗学者ジャン・ハロルド・ブルンヴァンの著書『消えるヒッチハイカー』には、1979年頃、アメリカ・アリゾナ州で数え切れないほど収集された都市伝説サンプルとして、この話が紹介されている。
あるおばあさんが、子供たちから電子レンジをもらったそうです。彼女は自分の犬を洗ってやったあと、乾かしてやろうとして電子レンジの中に入れました。当然、レンジを開けた時には、犬は内側からすっかり調理されてしまっていました。
この話は「ホット・ドッグ!」と命名されている。日本で私が聞いたのは「ホット・キャット!」だが、ほかにも派生バージョンが大量にあり、犬、猫のほかに小鳥、亀、濡れた髪を乾かそうとして首を突っ込んだ人間(!)などの話もある。電子レンジに入れられた猫が「破裂した」「大爆発した」というエグいバージョンもあるようだ。
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オオカミ少女に気をつけろ!
嘘、デマ、フェイク、陰謀論、巧妙なステマに情報規制……。混乱と不自由さが増すネット界に、泉美木蘭がバンザイ突撃。右往左往しながら“ほんとうらしきもの”を探す真っ向ルポ。
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