落語家・桂竹千代さんが、爆笑の迷宮へ誘い込む「古事記」解説。
オオクニヌシは、スサノオの執拗なイジメに打ち勝てるのか!? それとも!?
* * *
第13話「ムカデ乗ったままよね」
火攻めの試練を無事に乗り越えたオオクニヌシですが、次なるイジメが待ち受けていました。
スサノオはオオクニヌシを広い部屋に呼びます。
スサノオ「おい、醜い男」
オオクニヌシ「はい! (いい加減、「醜い」ってやめてくれねーかな。あんたの子孫なんだから、あんたのDNAも入ってるだろ)」
スサノオ「頭のシラミを取ってくれ」
オオクニヌシ「えっ? ……はっ、はい! (どゆこと? これも試練なの? こわいよー何なのー)」
スサノオの頭を覗くと、そこにいたのはでっかいムカデ。
オオクニヌシ「……キモー!!」
てか、イジメのためとは言え、自分の頭の上にムカデ乗せるの、イヤじゃないのかね。
あと気になるのは、ムカデがシラミに見えるってことは、それくらいスサノオの頭でかいってことよね!
オオクニヌシ「どうしよう、キモ過ぎて触れない(子供の時は平気で虫に触れたのに)……またオネエ出ちゃいそう……」
でもこんな時は……スセリビメチャーンス!
スセリビメ「あなた! 心配いらないわ! これ使って!」
スセリビメは、椋(むく)の木の実と赤土をオオクニヌシに渡します。
オオクニヌシ「……ナニコレ? 家庭菜園つくるの?」
スセリビメ「椋の実を噛んで音を立てて、赤土を口に含んで吐き出せば、きっとお父さんはあなたがムカデを噛んで吐き出しているように見えるからダマせるわ!」
何だ、そのアドバイス!!
オオクニヌシ「ムカデ噛むヤツいるわけないし、サイズ違うし、絶対ムリだよー!」
スセリビメ「いいからやんなさい!」
オオクニヌシ「はっ、はいー! ……仕方ないなあ、もう。プチップチッ(椋の実噛んでる)、(赤土噛んで)ペッ(地面に吐き出す)、何だコレ。何やってんだと思われちゃうよ」
これを見たスサノオは、
スサノオ「おおっ、ワシの頭の上のムカデを噛んで吐き出してくれておるのか!」
ダマされたー!!!
これでダマされる方もアホだし、こんなアドバイスするのもアホだし、それを実行するのもアホだし、登場人物みんなアホです。
てか、でかいムカデを頭の上に乗っけておいてわからないって、頭の感覚どうなってんだスサノオ! きっとムカデはまだ頭の上で這ってるぞ!
そしてスサノオはオオクニヌシの行いに感心して、イジメ疲れもあったのか、そこで寝てしまいます。
オオクニヌシ&スセリビメ「チャーンス!!」
次またどんなイジメをされるかわからないオオクニヌシは、この隙に、いじめっ子スサノオの髪を束ねて、部屋の柱に結びつけてしまいました(どんだけロン毛なんだ)。
そして、ばかでっけー岩で部屋の入り口を塞いでしまいました。この岩は500人の力で持ち上がるほどの大きさと言われています。
いや、オオクニヌシもすげえな! (でも虫は苦手)
さらに太刀、弓矢、琴をパクってオオクニヌシ達は逃げます。
すると、琴が木の枝に触れて鳴っちゃった!(琴の音は、神を降ろすと言われてるよ)
この音でスサノオは目を覚まします。
スサノオ「いやーすっかり寝ちゃったよ(ムカデはまだ頭の上)……ってアイツらがいねえ! くそう! 逃げられた!」
スサノオはすぐさま追いかけます(ムカデはまだ頭の上)。しかし、髪が柱に結ばれちゃってるから動けない! (こんなことなら床屋行っときゃ良かった!)
スサノオ「くそー! こうなったら……」
さあ、どうするのかスサノオ……何と何と……、
柱を……倒したー!!
家が……崩れたー!!
毛根強えー!! いや、家がモロいのか?
スサノオは、髪が解けたので走り出します(ムカデはまだ頭の上)。
黄泉比良坂(イザナギの黄泉国訪問のとこだね! 第3話参照)まで来ると、2柱の神の姿が、遠くの方に見えてきました。
スサノオ「おまいらー!!」
オオクニヌシ&スセリビメ「うわー!! キタキタ! いじめっ子ー!!」
スサノオ「その太刀と弓矢でヤソガミをやっつけろー! ワシの娘よろしくなー!!」
……あ、認めてくれたのねー!
オオクニヌシ「ありがとう、おとうさーん!(まだムカデ乗ってるけどね!)」
スサノオ「お前にお父さんと言われる筋合いはねぇ!(だって6世の孫だし!)」
オオクニヌシ「ごめんよ、ひいひいひいひいじいちゃーん!」
スサノオ「じじい扱いするんじゃねぇ!」
オオクニヌシ「めんどくさー!」
スサノオ「あっ!……ムカデまだいるじゃん!」
オオクニヌシ&スセリビメ「おそーっ!!」
オオクニヌシは、スサノオによる数々のイジメを乗り越えて、ようやく「父」兼「先祖」に認めてもらえました。
ちなみにここまでずっと、わかりやすくするためにオオクニヌシと呼んでましたが、本当は、ここからオオクニヌシと呼ばれるようになっています。一人前に成長して名前が変わったわけです(ブリみたいだね)。それまではオオナムヂという名でした。
さあオオクニヌシは、スサノオに言われた通り、太刀と弓矢でヤソガミを倒します。
文字通り、オオクニヌシが、この国の主となります。
オオクニヌシが国を造る、「国作り」神話が始まります。
落語DE古事記
神社に行けば、私たちは神様にありとあらゆることをお願いしますよね。商売繁盛に合格祈願に延命長寿に縁結びに厄除けに……。
でもちょっと待って。こんなに頼りにしてる「神様」のこと、ちゃんと知ってますか?
神様について書いてあるのが「古事記」です。歴史の教科書でも最初の方に出てくるので、「古事記」について聞いたことのない人はいないと思いますが、でも何が書かれているかまで説明できる人って、少ないんじゃないでしょうか。
そこで、大学院まで古代史を専攻していた落語家の桂竹千代さんに、「古事記」を楽しく解説していただくことにしました。
爆笑注意ですから、静かな場所では読まないようにしてくださいね!
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