落語家・桂竹千代さんが、不思議がいっぱいの「古事記」を、さらに不思議なテンションで解説している人気連載!
さて、神様中の神様「オオクニヌシ」のもとで、次々国ができていくのですが、その国の生み方が、現代人にとったら「ほんとに、そんな感じでいいの?」的な……。
いったいどんな感じなのか、どうぞお楽しみください。
* * *
第15話「B型かよ」
オオクニヌシが国作り&子作りをしていると、海の彼方より人影が現れます。
その神はガガイモ(植物)で作った船に乗り、蛾の皮を丸剥ぎにして作った衣服を着ていました(どんな服? 流行り?)。
オオクニヌシ「えーっと……あなた誰ですか?」
謎の男「……」
オオクニヌシ「あの……聞こえてます?」
謎の男「……」
オオクニヌシ「いや、てんてんてんじゃなくてさ」
謎の男「……」
オオクニヌシ「ダメだこりゃ!」
するとそばにいたヒキガエルが、教えます。
ヒキガエル「その神の正体はカカシが知ってるゲロ!」
オオクニヌシ「ありがとうカエルくん!」
ヒキガエル「あたしメスなんだけど!」
オオクニヌシ「ごめん! 見た目じゃわからないから」
ヒキガエル「鳴き声が全然違うでしょ? メスはゲロゲーロゲロゲーロ! オスはゲロゲーロゲロゲーロ!」
オオクニヌシ「……一緒じゃない?」
ヒキガエル「違うよ! メスはゲロゲーロゲロゲーロ! オスはゲロゲーロゲロゲーロ!」
オオクニヌシ「……わからない」
ヒキガエル「もう! 青空球児好児師匠に怒られろゲロ~!」
てなわけで、オオクニヌシはカカシ(畑にある動物除けのアレね)に尋ねます。この世界は、動物でも作り物でも、何でも喋れるワンダーランドなのです!
カカシ「そいつはね、カミムスビさんのせがれの少名彦那神(スクナビコナノカミ。以下スクナビコナ)だーよ」
カミムスビノカミ、覚えてますでしょうか? 一番冒頭に出てきた「造化三神」の1柱です(第2話参照。お久しぶり)。そのカミムスビの子供が、この神様の正体だというわけです(てことは先輩か? 敬語使うべき?)。
オオクニヌシは、早速カミムスビに聞いてみます(えっ!? 時代が全然違うと思うけど会えちゃうの? って意見はやめてね!)
オオクニヌシ「カミムスビさんの子供ってヤツが来てるんですけど……」
カミムスビ「間違いなく、ワタシの子だ。ワタシの手の指の間から生まれた子だ」
オオクニヌシ「手の間からって……手垢?」
カミムスビ「そーゆーわけなんで、オオクニヌシ、スクナビコナと兄弟になって国を作りなよ」
オオクニヌシ「えー!? 全然知らないヤツといきなり兄弟なんてなれないですよー! てか、こいつ無口すぎるし! イヤです!」
カミムスビ「いいから兄弟になれ! 生まれた時は別々かもしれないが……死ぬ時も別々の仲になれ!」
オオクニヌシ「いやそれ当たり前の仲じゃないすか! 古典落語に出てくる、はっつぁんとくまさんの関係じゃないんですから!(丁寧なツッコミ)」
こうして無理矢理に兄弟となったオオクニヌシ&スクナビコナのコンビ。ここから2柱で国を作り上げていきます。
スクナビコナは、温泉をたくさん作ったことから温泉の神様でもあります。
全国各地の温泉地にある温泉神社の祭神は、スクナビコナ。無口だけど開拓の神なのです。
ちなみに、ボクは温泉が大好きで「温泉ソムリエ」の資格を持ってます。
温泉ソムリエはすごい資格なんです。なんと4時間講義受けると……もれなく取れます(簡単!)。
温泉だけに「ゆ(湯)~だけ」って資格です。
……これはお湯に流してください。
順調に国造りは進むのですが……、スクナビコナは飽きたのか、まだ途中なのに、さっさと自分のところへ帰ってしまいます。
オオクニヌシ「えー! またひとりー! アイツ、突然来て突然いなくなって気まぐれすぎんだろ! 振り回しやがってー! アイツ絶対B型だろー!(僕はそんなB型の人が
と嘆いていると、また海の彼方から謎の男が……。
謎の男2「おーい」
オオクニヌシ「おっ、今度はちゃんとしゃべってくれそうなやつ来た」
謎の男2「おれをとりあえず祀ってよー。祀れば国おさまるよー」
オオクニヌシ「いやあんた誰ー!? 知らないヤツいきなり祀れるかい!」
謎の男2「まつらないと血祭りよー」
オオクニヌシ「こわっ! まつりゃいんでしょ! くそー、どいつもこいつも理不尽だー」
こうして奈良県三輪山に鎮座したのが、大物主命(オオモノヌシノミコト。以下オオモノヌシ)です。
三輪山麓の大神神社には本殿がなく、山自体がご神体という神社の最古形です。
三輪山には古来から蛇が多く生息しているそうで、オオモノヌシは蛇の神様と言われております。
なので大神神社には、蛇の好きな「卵」をお供えして参拝するのが通例となっております。
三輪山にもオモシロ伝承がたくさんあるんですが、それはまた別の機会にさせて頂きます(もったいぶりやがって!)。
とにかくオオクニヌシは、言われた通りにオオモノヌシを祀ります。そして国作り終了~。国が完成します。
さあ、これで平穏に暮らせるかと思いきや……。
落語DE古事記
神社に行けば、私たちは神様にありとあらゆることをお願いしますよね。商売繁盛に合格祈願に延命長寿に縁結びに厄除けに……。
でもちょっと待って。こんなに頼りにしてる「神様」のこと、ちゃんと知ってますか?
神様について書いてあるのが「古事記」です。歴史の教科書でも最初の方に出てくるので、「古事記」について聞いたことのない人はいないと思いますが、でも何が書かれているかまで説明できる人って、少ないんじゃないでしょうか。
そこで、大学院まで古代史を専攻していた落語家の桂竹千代さんに、「古事記」を楽しく解説していただくことにしました。
爆笑注意ですから、静かな場所では読まないようにしてくださいね!
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