とげとげ、もふもふ、まんまる、くしひげ、くびなが……。昆虫の概念がひっくり返る、279種のおかしな甲虫を厳選したビジュアルブック『とんでもない甲虫』(丸山宗利・福井敬貴著)が好評発売中!
ところで、そもそも「甲虫」とはどんな虫のこと? 今回は本書より「甲虫とはなにか」を、抜粋してご紹介します。
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甲虫とはなにか
カブトムシを思い出していただければわかるように、甲虫のいちばん大切な特徴は硬い前翅(ぜんし)だ。
みなさんも知っているクワガタムシやカナブンも同じ特徴をもっていることがわかるだろう。
もうひとつ大きな特徴をあげるとしたら、とにかく種数が多いことである。そもそも昆虫は100万種あまりが知られているが、その約40パーセントにあたる約40万種が甲虫なのだ。
そしてこの数字は全生物の約25パーセントにあたる。
さらにこの数倍の新種が存在しているといわれており、種がちがえばかたちや暮らしが変わると考えると、じつに底知れない世界といえよう。
実際、生息場所は熱帯から極地のあらゆる陸上環境から水中まで、食性は肉食性から雑食性、草食性、菌食性、寄生性などなど、大きさも0.33ミリメートルから17センチメートル程度までじつに幅が広い。
かたちの多様性に関しては本書『とんでもない甲虫』をめくっていただければ説明の必要はないだろう。
じつは、最初に話した「硬い前翅」というのが、その多様性の要因なのだ。
甲虫のもっとも古い化石の記録は約2億7千万年前のもので、その当時から硬い前翅をもっていたことがわかっている。
そのころの甲虫は石の下や枯れた植物のなかなどに隠れて暮らしていたが、硬い前翅は体が傷つくことや雑菌の感染を防ぐ役割をもっていた。
やがて明るい環境に出てくると、こんどは前翅で乾燥や敵の攻撃を防いだり、一部は体に毒をたくわえて、前翅に警告色をもったりするようにもなった。
このような前翅のもつさまざまな役割によって、甲虫はいろいろな環境や食性に特化して、たくさんの種にわかれていったのである。
前翅の下には後翅(こうし)が折りたたまれて収納されており、飛ぶときにそれを広げる。
しかし、後翅が退化して、飛べなくなった甲虫も少なくないし、逆に前翅が短くなってしまった甲虫も多い。
いろいろな進化の妙があって、さまざまな甲虫の姿があるのだ。
とんでもない甲虫
『ツノゼミ ありえない虫』『きらめく甲虫』につづく、丸山宗利氏の昆虫ビジュアルブック第3弾!
硬くてかっこいい姿が人気の「甲虫」の中でも、姿かたちや生態がへんてこな虫を厳選。
標本作製の名手・福井敬貴氏を共著者に迎え、掲載数は過去2作を大幅に上回る279種!
おどろきの甲虫の世界を、美しい写真で楽しめます。
この連載では『とんでもない甲虫』の最新情報をお届けします。
●パンクロッカーみたいだけど気は優しい――とげとげの甲虫
●ダンゴムシのように丸まるコガネムシ――マンマルコガネ
●その毛はなんのため?――もふもふの甲虫
●キラキラと輝く、熱帯雨林のブローチ――ブローチハムシ
●4つの眼で水中も空中も同時に警戒――ミズスマシ
●アリバチのそっくりさんが多すぎる! ――アリバチ擬態の甲虫 など