良く読むとたいそう奇天烈な「古事記」を、落語家・桂竹千代さんが、さらに不思議なテンションで面白解説している人気連載!
オオクニヌシにムカついてるアマテラス(; ・`д・´)が、自分の子どもを使って、日本列島を獲りに行きます。
しかし、いつの時代も、目の前に楽しいことがあると、役目を忘れちゃうのであります。
* * *
第16話「どいつもこいつも」
オオクニヌシは無事に国作りを終えました。
「あ~終わった~! さーてスクナビコナの掘った温泉でも入ってゆっくりしよー!」
とノビをしているわけですが、一方で、天上世界の高天原は、何やら不穏な空気です。
アマテラス「オオクニヌシのヤツ、チョーシ乗ってんな。地上はアタシ達のシマだっつーの。アタシのかわゆーい息子のオシホミミちゃんが治めるのがいいに決まってんだからー!」
オシホミミは、アマテラスとスサノオの誓約(あの変なゲームね)の時に誕生した神様です(第5話参照。ご無沙汰してます!)。
てか、アマテラス、また出たー!!
なんて言わずにそろそろ慣れてくださいね。神様は時空を超えられるのです。
オシホミミは、天浮橋(あめのうきはし。地上を見下ろせる橋。第2話参照)に立って地上を見下ろして言います。
オシホミミ「ダメだこりゃ! (いかりや風)」
アマテラス「あら、どうして帰ってきちゃったの。オシホミミちゃん?」
オシホミミ「ママ。地上世界は怖そうな神がたくさんいて、荒れすぎちゃってダメだよ。ぼくには手に負えないよ」
アマテラス「あーらそう。オシホミミちゃんがそう言うなら仕方ないわねぇ。誰か代わりはいないかしらねえ……」
困った時は、知恵の神オモイカネに頼もう!
オモイカネは、アマテラスの岩戸隠れの時に色々考えて作戦実行した指導者的神(第7話参照)です。
オモイカネ「はい八百万(やおよろず)の神集合~!」
神々「出た出た、またあいつの呼び出しかよ~。だりぃ~」
オモイカネ「アマテラスさんが地上世界を治めたいらしいんだけど、おぼっちゃんがビビッておられるんで、誰か代わりに地上行って、国もらって来てくれないか?」
神々「それは大変ですねー(めんどくせーお前が行けよー)」
オモイカネ「う~ん。どうしよ、一番交渉に向いてそうなのは……よし、お前!」
アメノホヒ「なんすか?」
オモイカネ「八百万の神、代表として地上へゴー! )」
アメノホヒ「えっ! オレっすか? 地上なんか行ったことないっすよー。パスポートいります?」
オモイカネ「つべこべ言わずにゴウデス! ジャパーン!」
神々「アメノホヒ、頼むね~。さー帰ってパズドラしよ~(ぞろぞろ帰り出す)」
アメノホヒ「え~! みんな薄情者~」
アメノホヒもオシホミミと同じく、アマテラスとスサノオの誓約によって生まれた神様です(第5話参照。久しぶりの登場が多いね。同窓会みたい)。ということは、アメノホヒもアマテラスの子供ですね。
さあ、アメノホヒは、神々を代表して国獲りネゴシエーターとして地上へ参ります。
オオクニヌシ「ようこそ。夢の国へ」
アメノホヒ「あっ、どうも初めまして~」
オオクニヌシ「ボクはこの国の代表取締役、オオクニヌシと言います。どうぞ高天原の神さん、ごゆっくりしてってくださいな。温泉とかもありますので」
アメノホヒ「ありがとうございます。うわっ、ナニコレ!? 地上ってめっちゃ楽しい! 温泉も最高~」
アメノホヒ。楽しむ。
アメノホヒ。とにかく楽しむ。
アメノホヒ。ひたすらに楽しむ。
アマノホヒ「楽しぃ~帰りたくない~」
あっという間に3年の月日が流れます。
アマテラス「アメノホヒちゃん遅くない? (よく3年も待ったな! )」
オモイカネ「そうですね。さすがに3年帰って来ないってのは遅いですね」
アマテラス「どうする?」
オモイカネ「う~ん……よし! 次は天若彦(アメノワカヒコ。以下、ワカヒコ)に行かせましょう!」
ワカヒコ「えっ? おれすか? マジすか? 地上ってパスモいります?」
アマテラス「いいからゴー! ジャパーン!」
今度はワカヒコが弓矢を持って、地上へとやって参ります。
オオクニヌシ「ようこそ。夢の国へ」
ワカヒコ「あっ、どうも初めまして~」
オオクニヌシ「ボクはこの国の代表取締役、オオクニヌシと言います。どうぞ遠路はるばるお疲れでしょうからごゆっくりなされてください。アメノホヒさんもすっかり地上が気に入られたようですよ~」
ワカヒコ「ホントですか? じゃあちょっとだけ楽しんじゃおっかな」
オオクニヌシ「どうぞどうぞ~。あっ、お荷物の弓矢、こちらでお預りしておきますね~」
ワカヒコ。楽しむ。
ワカヒコ。とにかく楽しむ。
ワカヒコ。ひたすらに楽しむ。
ワカヒコ「楽しぃ~帰りたくない~」
あっと言う間に8年の月日が流れます(デジャブか! )。
しかもワカヒコは、オオクニヌシの娘と結婚して、勝手にこの国を自分のものにしてやろうと考え始めます。
ワカヒコは「天若彦」と書きます。この「天若」の部分が「アマノジャク」とも読めることから、「人に逆らった行動をする人」のことを「あまのじゃく」という語源になっているとも言われます(諸説あります)。
アマテラス「ワカヒコ遅くない? (いや8年もよく待ったな! 絶対忘れてただろ! )」
オモイカネ「さすがに遅いですよね(完全に忘れてたわ)。桃栗3年柿8年ならぬアメノホヒ3年ワカヒコ8年ですね」
アマテラス「言うてる場合か。ミイラ取りがミイラになるってこのことよ。どうするのよ?」
オモイカネ「よし、こうなったらまた別の神を……」
アマテラス「ね~それ大丈夫? ミイラ取りのミイラ取りがミイラにならない? まずワカヒコが何してんのか確かめてよ」
オモイカネ「かしこまりました。ではワタシにいい考えがあります」
さてオモイカネのその作戦とは?
落語DE古事記
神社に行けば、私たちは神様にありとあらゆることをお願いしますよね。商売繁盛に合格祈願に延命長寿に縁結びに厄除けに……。
でもちょっと待って。こんなに頼りにしてる「神様」のこと、ちゃんと知ってますか?
神様について書いてあるのが「古事記」です。歴史の教科書でも最初の方に出てくるので、「古事記」について聞いたことのない人はいないと思いますが、でも何が書かれているかまで説明できる人って、少ないんじゃないでしょうか。
そこで、大学院まで古代史を専攻していた落語家の桂竹千代さんに、「古事記」を楽しく解説していただくことにしました。
爆笑注意ですから、静かな場所では読まないようにしてくださいね!
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