だんだん皆さんわかってきましたね。「古事記」は、歴史書とはいえ、たいへん変わった、奇天烈な、まるでSFです。
難解でもある古事記を、落語家・桂竹千代さんが、楽しく解説してくれる人気連載。
しかし神様、ケンカばっかしてます。今回は、誰と誰がケンカするかな?
* * *
第19話「能力者タケミカヅチ」
続いてタケミカヅチは、オオクニヌシの次なる息子である建御名方神(タケミナカタノカミ。以下、タケミナカタ)の意見を聞くことになります。
タケミナカタを訪ねると、千人の力でようやく動かせる岩を手に持って遊びながら、タケミナカタがやってきました(これは強そうだぞ! )。
タケミカヅチ「おーい! お前かタケミナカタってのは! おれと名前似てんじゃねーよ! この国よこせや!」
タケミナカタ「何だお前は! お前なんかにこの国を渡すか! おれの力、なめんなよ! 勝負だ!」
これが日本初の力比べ、相撲の発祥と言われております。
タケミカヅチがタケミナカタの頭をビール瓶で殴り、タケミナカタは頭をホチキスで縫って……ではなく!
タケミナカタがタケミカヅチの手を掴むと、その手が氷の柱に変化します。
タケミナカタ「冷たっ! 何だこりゃ! もしかして悪魔の実の能力者か! (ヒエヒエの実かな。Ⓒワンピース)」
タケミカヅチ「驚くのはまだ早いぜ!」
今度はタケミカヅチの手が剣に変化します。
タケミナカタ「えー!? ヒエヒエの実かと思ったらスパスパの実か! (Ⓒワンピース)」
タケミカヅチ「覚悟しろぉ!」
タケミカヅチの手刀(マジの剣だけど)が、タケミナカタを襲う!
今度はタケミカヅチがタケミナカタの手を掴み、思いっきり握ります。
タケミナカタ「うう……痛い! くそっ! おれの手も剣に、なれー!!」
……ならない!
そりゃ気合いだけで手が剣になるもんか!
子供の頃はみんながみんな、手からカメハメ波出ろと願ったけど、出ないもん!
タケミナカタ「くそー! おれに覇気があれば! (ワンピースからもう離れろって)」
タケミナカタの手は握り潰され、体を投げ飛ばされます(千人の力持ってるのに!)。
タケミナカタ「こいつはマジヤベー!! 歯が立ちましぇん! こうなりゃ……逃げるが勝ちやー!」
タケミナカタ逃げる!
タケミカヅチ追う!
長野県の諏訪湖の方まで逃げていきます(島根から長野って、めっちゃ逃げたな! )。
タケミナカタ「もう勘弁してくださーい! 許してください! もうこの土地から一歩も出ませんからー!! もちろんこの国は差し上げますー!」
さっきまでの勢いはどこへやら。
こうして、タケミカヅチが勝利します。
タケミナカタは、この地に留まることになりました。
そんなわけでタケミナカタは、長野県の諏訪大社に祀られています。
諏訪大社は、「御柱祭(おんばしらまつり)」という日本三大奇祭で有名です(でっかい柱に乗って坂を下ったり、死者も出るくらい危険なお祭りよ)。
タケミカヅチには負けてしまったけど、力強いので、勝負事にご利益がある神様です。
ちなみにタケミナカタは、タケミカヅチに最後に一言だけ謝ったそうです。
タケミナカタ「諏訪だけに、スワン!」
そしたらまた投げ飛ばされたそうです(ウソですよ)。
タケミカヅチは、オオクニヌシのいる出雲へ戻ります。
タケミカヅチ「うらー! オオクニヌシ! タケミナカタの野郎も、この国くれるって。いいかコラ!」
オオクニヌシ「はいー! でしたら従います従います! 差し上げます! だから乱暴しないでください!
……この国は差し上げますが……でもその代わりに……1コだけ条件いいですか?」
タケミカヅチ「何だとこのやろー!!」
オオクニヌシ「ひゃっ! すみません! これだけやって頂けたら、この国はちゃんと差し上げますので」
タケミカヅチ「けっ一応、言ってみろ」
オオクニヌシ「ワタシを天に届くほどに高くそびえる、立派な宮殿へと住まわせて頂けないでしょうか……?」
タケミカヅチ「な、に、をー!!」
オオクニヌシ「うわー! すみません! 生意気なことを! 言ってみただけでして! ほんとすみません!」
タケミカヅチ「いいよ」
オオクニヌシ「いいんかーい! じゃ、お願いしまっす!」
というわけで、オオクニヌシが祀られたのが、島根県の出雲大社です。
「いずもたいしゃ」は俗称で、正式名称は「いずもおおやしろ」と言います。
超有名な縁結びの神様です。
ちなみに出雲大社のすぐそばに、竹内まりやさんの実家があります。
すごいと思いませんか? 神社なのに、マリア(まりやだけど)。
ちなみにボクは、定期的に「かんたん日本神話の落語会」というのをやってます。古代史のあらゆるテーマをおもしろおかしく笑いを交えながら講義する会です。「出雲大社」のテーマで90分くらい喋ります。
出雲大社って、ほんと面白いんです。
祀られているオオクニヌシが拝殿の中で横を向いているため、出雲大社では前から拝むのは正式ではないとか、しめ縄の向きが他の神社と反対とか、参拝方法が何故二礼「四」拍手一礼なのかとか、当時50メートル近くもあったと言われる本殿を(今は半分の24メートル)、古代人がどうやって建てたのかとか……。
気になる方は、ぜひボクの出雲大社講演においでください。
……話してる間についコマーシャルが入ってしまうのが、ボクの悪いクセなんです。落語を話している最中でも、コマーシャルしちゃう時があります。だから仲間からは竹千代の落語は「実演販売」なんて言われます。
落語仲間からは「すぐ会の宣伝しやがって、お前はほんと金儲けが好きだなー!」なんて言われます。
そういう意味では、竹千代も出雲大社も……エン(縁・円)で結ばれております(うまいっ! )。
……ささ、ととのった所で以上が日本神話の「国譲り」というエピソードでした。
オオクニヌシが主人公の出雲が舞台の物語はこれでおしまいです(お疲れっした! )。
こうして日本は、高天原にいるアマテラス軍団のものとなります。
アマテラスは、日本の統治者を地上へと送ります。
ここから舞台が九州へと移り、「天孫降臨」神話に入っていきます。
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落語DE古事記
神社に行けば、私たちは神様にありとあらゆることをお願いしますよね。商売繁盛に合格祈願に延命長寿に縁結びに厄除けに……。
でもちょっと待って。こんなに頼りにしてる「神様」のこと、ちゃんと知ってますか?
神様について書いてあるのが「古事記」です。歴史の教科書でも最初の方に出てくるので、「古事記」について聞いたことのない人はいないと思いますが、でも何が書かれているかまで説明できる人って、少ないんじゃないでしょうか。
そこで、大学院まで古代史を専攻していた落語家の桂竹千代さんに、「古事記」を楽しく解説していただくことにしました。
爆笑注意ですから、静かな場所では読まないようにしてくださいね!
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