日本最古の歴史書「古事記」には、神様の歴史が書かれています。
さすが神様、やることなすこと、スケールがあまりに壮大!
落語家・桂竹千代さんが、この神々の物語を、毎回楽しく解説してくれる人気連載。
ついに、日本列島争奪戦は、アマテラスの勝利で決まり!
物語は、かの有名な「天孫降臨」へ――。
* * *
第20話「コーヒーの神様」
高天原より派遣されたタケミカヅチによって、地上世界はアマテラス軍団のものとなりました。
アマテラス「いよーし! でかしたわよタケミカヅチ! オシホミミちゃん! 地上世界は平定されて逆らうヤツいなくなったから、統治頼んだわよ!」
オシホミミ「始めにママに地上へ行けって言われた時からもう10年以上経ったんで(アメノホヒ3年ワカヒコ8年だからね)、忘れてたよ」
アマテラス「確かにあいつらのせいで時間かかったけど……行ってくれる?」
オシホミミ「実はその間に子供が生まれたんで、我が子に行かせてもいい?」
アマテラス「えっ! 息子が生まれたってことはアタシの孫やーん! 大泉逸郎やーん! よく何年も隠してたわねぃ! きゃわい~!! 行かせたくない~! アンタが行ってよ!」
オシホミミ「いや、やっぱ若い人が行った方がいいと思うよ。ホラ、かわいい子には旅をさせろって言うじゃない(めんどくさいから行きたくねー)」
アマテラス「ん~……それもそうね、これも社会勉強だと思って行ってもらうおか! 小さいうちから英才教育よ! まごまごしちゃいられないわね!(もちろん孫だけにね!)」
というわけで、アマテラスの孫である邇邇芸命(ニニギノミコト。以下ニニギ)とお供の一行が、地上へとやって参ります。
「天」照(アマテラス)の「孫」なので「天孫」。これが「天孫降臨」です。
何故子供ではなく孫を遣わせたのか? これは『古事記』編纂当時の政治情勢が関係しているのではないかと言われています。天皇の後継者は、通常その直接の子供がなるわけですが、その子が皇位に就く前に死んでしまったために孫へと相続された例(孫が成長するまでお母さんや叔母さんが中継ぎで即位)が、この時期に、あるんです。「祖父母→孫」という継承を正当化するために神話に反映させたという説もあります。
さて、高天原からニニギが降りようすると、下からまばゆい光が差し込んできます。
ニニギ「……ん~? 何かまぶしいな。何かいるな下に。ねえ、ウズメちゃん見てきてちょ」
ウズメ「はーい!」
ウズメは、アマテラスの岩戸隠れの時に裸踊りした、女性の神様(第7話参照)です。
ウズメ「おーい! そこに誰かいるのー? めっちゃ光ってるってことは、めっちゃハゲてんのー?」
??「めっかっちゃった!」
ウズメ「さんまさん? アンタだれ?」
??「私は猿田彦神(サルタヒコノカミ。以下サルタヒコ)と申します!」
ウズメ「へー! コーヒー好き?」
サルタヒコ「そうそう、サルタヒココーヒーがね……って違いますよ!」
ウズメ「あんまりツッコミは焙煎されてないね」
サルタヒコ「いやどんな意味ですかそれ!」
ウズメ「じゃさよなら」
サルタヒコ「ちょっとラテ!」
ウズメ「マテでしょ! やっぱコーヒー好きなんじゃない」
サルタヒコ「いやっ……つい」
ウズメ「で、何なのアンタ?」
サルタヒコ「天上世界から尊い神が来られるというのをお伺いしまして、地上までご案内しよう参じました」
ウズメ「それは助かる! ありがとうコーヒー屋さん!」
サルタヒコ「はい、コーヒーだけにマメなんです」
ウズメ「……よく分かんないけどよろしくー!」
こうしてサルタヒコ先導のもと、ニニギ一行が地上世界へと参ります。
ちなみにサルタヒコは、市境とか区境とかいった境界、あるいは道の分岐点などの角にある神社に祀られています。道祖神(どうそじん。道端にある石像、祠)にもサルタヒコが祀られております。
サルタヒコは道案内をした神様なので、交通安全の神であり、また「道開き」の神でもあります。
新たなことにチャレンジする時は、サルタヒコにお願いすると道が拓けるかもしれません。
アマテラス「あっ、そうだニニギちゃーん! これをアタシだと思って持ってきなー」
ニニギ「わかったよばあばー!」
アマテラス「ババアって言うんじゃないわよ!」
アマテラスばあばから授けられたのが、八咫鏡(やたのかがみ)、尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)、そして天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ。別名、草薙剣)です。
勾玉と鏡はアマテラスの岩戸隠れの時(第7話参照)に、天叢雲剣はヤマタノオロチ退治の時(第9話参照)に出てきたものです。
この3点セットが「三種の神器」と呼ばれ、この時から三種の神器が天皇の継承の証となるわけです。
このうち、特に鏡を「アマテラス自身だ」と言ったことから、伊勢神宮には鏡が祀られています。
ちなみにこの三種の神器ですが、後の時代――源氏と平家の最終合戦、「壇ノ浦の戦い」の時に、安徳天皇(当時6歳)とともに海底に沈んでます。
後に勾玉と鏡は回収されたけど、剣は見つからなかった。
だから現在、熱田神宮に祀られる草薙剣(ヤマトタケル伝説に依ります。それはまた別の機会に! )はレプリカとする説もあります(でもホンモノと信じたい)。
安徳天皇は幼少でありながら入水を余儀なくされたため、これを怨霊鎮魂(不幸な死を遂げるとタタリ神にななってしまうからそれを鎮める)のために祀りあげます。すると水神様となります。
だから全国にある「水天宮」に祀らていれるのは、安徳天皇なのです。
子供の神様なので、安産、子宝の御利益があります。
さてと、話を戻します(キュルキュルキュル……って昔のビデオか)
天孫降臨の時にニニギにお供した神々ですが、オモイカネ、コヤネ、フトダマ、ウズメ、タヂカラオというアマテラスの岩戸隠れの時に活躍したスタメン達がいたのを覚えていますか? おいしいところに出てきます。
彼らの子孫が、朝廷の祭祀において重要な役割を占める氏族となります。
さあ、ニニギ一行がサルタヒコに導かれて天孫降臨した先とは?
落語DE古事記
神社に行けば、私たちは神様にありとあらゆることをお願いしますよね。商売繁盛に合格祈願に延命長寿に縁結びに厄除けに……。
でもちょっと待って。こんなに頼りにしてる「神様」のこと、ちゃんと知ってますか?
神様について書いてあるのが「古事記」です。歴史の教科書でも最初の方に出てくるので、「古事記」について聞いたことのない人はいないと思いますが、でも何が書かれているかまで説明できる人って、少ないんじゃないでしょうか。
そこで、大学院まで古代史を専攻していた落語家の桂竹千代さんに、「古事記」を楽しく解説していただくことにしました。
爆笑注意ですから、静かな場所では読まないようにしてくださいね!
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