日本の神様のことが、たくさん書かれている日本最古の歴史書「古事記」。
こんな時代に生きている私たちの方が、なんでも知ってるような気がしますが、古事記に書かれている物語は、どんどん想像を超えてきます!
そんな古事記を、落語家・桂竹千代さんが、爆笑解説してくれる人気連載。
今回は、ニニギノミコトと結婚したコノハナサクヤヒメの出産シーンをどうぞ。
* * *
第23話「いきなり三つ子はきちーって!」
ニニギ&コノハナは夫婦となりました。彼らが初めて宮を構えた場所と伝わるのが、鹿児島県南さつま市の「笠沙宮跡」です。ここへ行くと「日本発祥の地」という石碑もあります。
この宮殿で夫婦生活を始めたある日のこと、ニニギはコノハナから衝撃の告白をされます。
コノハナ「ねえ、あなた。ちょっと話があるの」
ニニギ「どうした、改まって?」
コノハナ「アタシ……デキちゃったみたいなの」
ニニギ「えっ!? ウソだろ? ちょっと待てよ、まだ遊んでたいのに、子どもまだ欲しくねーって、まだ自分の時間欲しいって、……てかちょっと待て……! あの日? 1回しかしてないよね? ウソウソウソ! それぜってーオレの子じゃねーって! オマエ浮気したんだろ?」
コノハナ「アタシが浮気なんかするわけないでしょ! アンタじゃないんだから!」
ニニギ「誰が浮気してるだと!? とにかくそれはオレの子じゃない!」
コノハナ「間違いなくあなたの子です!」
ニニギ「ネコじゃねーんだから、一晩ではらむのおかしいだろ!」
コノハナ「……いいわ、もうやめましょ。これ以上やってもネコだけに、いたちごっこよ。正真正銘アナタの子だってわからせてあげるわ」
ニニギ「……どうやって?」
コノハナ「この出入り口のない部屋の中で火をつけて、その中でこの子を産むわ。もし、あなたの子なら無事に産まれるはずよ!」
ニニギ「……何で?」
めっちゃWhy? なやり方だけど、ヒステリックになってるコノハナは怖いから、もう従うしかないよね!
どうやら、神の子なら、どんな状況でも産まれるってことらしいです。
ニニギは家の外から見守ります。
ニニギ「いやーどゆこと? これ一体どゆことなの? ホントにオレの子だったとして、それはそれで危なくね? ……でもアイツもう怒っちゃってるかんなー、任せるしかないか」
コノハナは、出入り口を塞いで家に内側から放火します。
コノハナ「うわちっ! あっち! ……うわー! 自分であんなこと言っちゃったけど! うわちっ! やめときゃ良かった!」
熱い中で出産は大変ですよね。
ボクも熱い中で落語は大変ですから。
実は、岩盤浴で落語やったことあるんです。
岩盤浴室内ですよ? 40℃ある中で1時間やってくれと言われまして。ご飯食べるところとか、脱衣所とか、他にスペースいくらでもあるのに、敢えてそこでやってくれって言うんです。
そこの支配人が、ちょっと変わった方だったんです。チラシに「日本初! 岩盤浴〇〇!」と書きたいがために、岩盤浴室内でよくイベントしてるらしいんです。そりゃ日本初ですよね。そんなバカな発想、誰も思いつきませんから(もうイッちゃってるよ! )。
着物が汗でびしょびしょになりながらやりました。熱演したら倒れてしまうので静かにやりました。もし倒れて死んだら殉職です。階級特進して真打にしてもらいたいです。お客さんも笑うと酸欠になるから、笑わないようにするんです(誰が得するんだ! )。お客さんが倒れるのが先か、ボクが倒れるのが先か、我慢比べ大会です。
何とか全員無事に終わりまして、支配人がボクのところへやって来て、
支配人「竹千代さん、オモシロかったですね~!」
竹千代「アンタだけだよ!」
支配人「次は浴槽内でやりましょう!」
次回は、湯船に浸かってやるようです。
「若い時の苦労は、買ってでもしろ」と聞きますので、日々チャレンジですね。
さて、コノハナは熱い火の中で出産を試みます。
コノハナ「ひーひーふー! ひーひーふー! (火の中だからね! )」
ニニギ「がんばれ! ファイヤー!」
格闘の末に……
オギャー! オギャー! オギャー!
ファイヤーベイビー誕生!
しかも~……三つ子ちゃん!!
ニニギ「えー! いきなり三つ子はきちーなー! いよいよ遊べないやーん! (そこかよ! )」
長男:火照命(ホデリノミコト。以下、ホデリ)
次男:火須勢理命(ホスセリノミコト。以下、ホスセリ)
三男:火遠理命(ホオリノミコト。以下、ホオリ)
こうして、3柱の神々が誕生します。
どうやって出入り口のない建物の、火の中から脱出できたかは、プリンセス天功に聞いてください。
コノハナ「あなたー! どう? ちゃんと産めたわよ! これで間違いなくアナタの子だってわかったでしょ?」
ニニギ「(確かめ方わけわからんけど……てかいきなり三つ子って、おい三つ子って! )……わかったよ」
コノハナサクヤヒメのこの行いを、「火中出産」と言います。
この物語にちなんで、活火山である富士山が御神体である静岡県の浅間大社には、コノハナが祀られております(富士山頂に奥宮があるよ)。
子供が生まれて大喜びしたコノハナの父・オオヤマは、酒を造ってふるまったことから酒の神様とも言われます。愛媛県にある大山祇神社などに祀られています。
鹿児島県南さつま市に、火中出産の伝承地があります。竹屋神社(たかやじんじゃ)は、この火中出産を焼酎の発祥と解釈して焼酎神社として地元の人に親しまれています。コノハナは酒の神の娘だからイコール醪(もろみ)として、部屋に閉じこもって火をかけて子供を産んだというのは、「産す」と「蒸す」をかけて焼酎の造り方を神話的に表現してるっていうんです。面白い解釈ですよね。ぜひとも子供たちに教えて欲しいです。特に小中(焼酎)学生に(イイネ! )。
さて次は、この生まれた三つ子のうちの、2柱の神様の物語です。
落語DE古事記
神社に行けば、私たちは神様にありとあらゆることをお願いしますよね。商売繁盛に合格祈願に延命長寿に縁結びに厄除けに……。
でもちょっと待って。こんなに頼りにしてる「神様」のこと、ちゃんと知ってますか?
神様について書いてあるのが「古事記」です。歴史の教科書でも最初の方に出てくるので、「古事記」について聞いたことのない人はいないと思いますが、でも何が書かれているかまで説明できる人って、少ないんじゃないでしょうか。
そこで、大学院まで古代史を専攻していた落語家の桂竹千代さんに、「古事記」を楽しく解説していただくことにしました。
爆笑注意ですから、静かな場所では読まないようにしてくださいね!
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