日本最古の歴史書と言われる「古事記」には、神様たちのトンデモナイお話が満載。
理解できないと、頭の中がぐるぐるですが、これを、落語家・桂竹千代さんに爆笑解説してもらうと、よ~くわかる!
海の神様と山の神様の、なかなか“セコイ”きょうだいゲンカ、ついに決着!
有名な海幸彦と山幸彦のお話は、とりあえずここまで。
* * *
第27話「いや、もう勝てねーって」
ヤマサチは3年ぶりに海中から地上へ戻ります。
そして、ワダツミの言った通りに、兄のウミサチに釣り針を返します。
ヤマサチ「兄貴、遅くなって悪かった!」
ウミサチ「いや遅すぎんだろ! どの口が言えんだそれ! もうこっちが忘れかけてたわ! ……で、あったのかよ?」
ヤマサチ「これやで! ……と、おやっさんの言った通りに渡さないといけないんだっけ……てか、絶対怒られそうだなこれ言うとな」
ウミサチ「何をひとりでごちゃごちゃ言ってんだ。あったなら早くよこせ」
ヤマサチ「兄貴、今からこれ返すけど絶対に怒らないでね?」
ウミサチ「いいよ、あったならもう怒らないよ。ほれ返せ」
ヤマサチ「はい、じゃあ絶対怒らないでね」
ウミサチ「わかったっての」
ヤマサチ「じゃあ返すね。この釣り針は貧乏っちい、ダメな釣り針だね」
ウミサチ「何だとこのヤロー!!」
ヤマサチ「ほら怒るじゃーーん!!」
呪いをかけられたウミサチは、どんどんどんどん貧しくなっていきます。
一方のヤマサチは、どんどんどんどん栄えていきます。
怒ったウミサチは、八つ当たりで攻めてきます。
ウミサチ「うらー!! 何でオマエだけ裕福なんだこらー!! 釣り針3年も返さなかったくせにー!」
ヤマサチ「兄貴が攻めてきた! そんな時はこれだ!」
ヤマサチは、ワダツミからもらったタマタマ(2個なので)のうち、シオミツタマを使って海を満潮にして、ウミサチを溺れさせます。
ウミサチ「ぎゃー! あっぷあっぷ! おれ泳げねんだー! 助けてー!! (名前ウミサチなのに!? )」
ヤマサチ「兄貴が助けを求めてる! そんな時はこれだ!」
ヤマサチは、今度はシオフルタマを使って海を干潮にして、ウミサチを助けます。
ウミサチ「……げふっ! あー! 海の水飲んじゃったよおえー! 気持ちわる(いやウミサチなのに! )……てめー! ヤマサチ! よくもやりやがったなー!! うらー!」
ヤマサチ「攻めてきた時はこれだ!」
ヤマサチは、再びシオミツタマで海を満潮にしてウミサチを溺れさせます。
ウミサチ「うおー! あっぷあっぷ! 助けてくれー!」
ヤマサチ「……もう何もしない?」
ウミサチ「おれが悪かったよ! もう何もしないから許してくれー!」
ヤマサチ「よし、わかった!」
ヤマサチは、シオフルタマを使って海を干潮にして、ウミサチを助けます。
ウミサチ「おえー! また飲んじゃったよ! しょっぺー!! ……てめえこのやろー!! うらー!!」
ヤマサチ「何もしないって言ったのに……はっ!」
ヤマサチは、シオミツタマを使って海を満潮にして、ウミサチを溺れさせます。
ウミサチ「ごべーーん!! もうやらないから、あっぷあっぷ助げでー!!」
ヤマサチ「……」
ウミサチ「ごべんよ! ほんともうやらないからー! あっぷあっぷ!」
ヤマサチ「……ほんとに絶対もうやらない?」
ウミサチ「さっきは騙して悪がったよー! あっぷあっぷ! もうほんとに絶対やらないからゆるしてー!!」
ヤマサチ「……もうこれで最後だぞ、アニキ」
ヤマサチは、シオフルタマを使って海を干潮にして、ウミサチを助けます。
ウミサチ「ごべー! ……はぁはぁ助かった。わかってるわかってる! もうしないから、約束だからな。助けてくれてありがと……って油断したところをうらー!!!」
ヤマサチ「……はっ!!」
ヤマサチは、シオミツタマで……以下同文!!
このやり取りを、100回くらい繰り返します(諦め悪すぎだろ! )。
ウミサチ「はあはあ……もうだみだこりゃ……家来になるので許してくらはい~(ダメって気付くの遅いな! )」
というわけで、ヤマサチVSウミサチはヤマサチの圧勝に終わります。
こういう神話なので、ヤマサチは海の守り神として、海沿いの神社に祀られていることが多いです。
ヤマサチが祀られる代表的な神社の一つが、宮崎県の青島神社です。
九州本土から歩いて10分くらいにある小島で、ここが「海幸山幸神話」の舞台ともされています。干潮時に行くと、横に「鬼の洗濯板」と呼ばれる波状岩が姿を見せます。
この青島神社の境内に「日向神話館」という建物があります。ここは、日本神話の中でも宮崎が舞台の「日向神話
」の名場面を全12シーンに渡って、蝋人形で再現している博物館です。数年前に青島神社へ参拝したときに、面白そうだからここへ寄りました。1シーン目がニニギの天孫降臨で、2シーン目がコノハナの火中出産など、蝋人形がよく出来ていて、見応えあります。最後の12シーン目が、初代天皇である神武天皇が船出して東征に向かうシーンでした。これで終わりか、さぁ外へ出よう、と思ったらもう1つ部屋があるんです。「あれっ? 12シーンて書いてたけど13シーン目があるのかな?」と思いながら13個目の部屋へ入ってみると、そこにいたのは長嶋茂雄さんの蝋人形でした。そりゃビックリしましたよ。隣見ると神武天皇で、こっちにはミスターがいるわけですから。どういうことか調べてみたら……長嶋さんは宮崎出身なわけじゃいけど、巨人軍の度重なる宮崎キャンプによって宮崎名誉市民になってるそうで。だからここに長嶋茂雄さんの蝋人形があるそうです……ここじゃなくて良くない!? ここに置くのは……ん~、どぉでしょぉ~!! (似てるね! )
ちなみに、ウミサチを主祭神として祀る神社は全国にただ一つ、宮崎県日南市の潮嶽神社(うしおだけじんじゃ)のみとされています(負けちゃうとそうなっちゃうのね)。
この辺りの地域では、神話に学び、人に針を貸してはいけない風習が今でも残っているそうです。
兄VS弟の兄弟対決が、『古事記』にはたくさん記されていますが、弟が勝つのがほとんどです。
兄が悪、弟が善で描かれているので、古代においては長子より末子の方が優遇されたのでしょうか(ボクは一人っ子です)。
さて、海幸山幸神話は以上となりまして、お次はヤマサチとトヨタマのお子さんが生まれるお話です。
これもまたイカれてまっせ。
落語DE古事記
神社に行けば、私たちは神様にありとあらゆることをお願いしますよね。商売繁盛に合格祈願に延命長寿に縁結びに厄除けに……。
でもちょっと待って。こんなに頼りにしてる「神様」のこと、ちゃんと知ってますか?
神様について書いてあるのが「古事記」です。歴史の教科書でも最初の方に出てくるので、「古事記」について聞いたことのない人はいないと思いますが、でも何が書かれているかまで説明できる人って、少ないんじゃないでしょうか。
そこで、大学院まで古代史を専攻していた落語家の桂竹千代さんに、「古事記」を楽しく解説していただくことにしました。
爆笑注意ですから、静かな場所では読まないようにしてくださいね!
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