日本最古の歴史書「古事記」。
神様たちのトンデモナイお話が満載です。
この奇天烈きわまりない神様の物語を、落語家・桂竹千代さんがおもしろ解説してくれる人気連載。
今回は、「乙姫様」のモデルになったという女神トヨタマヒメの出産。
ここで明らかになる、トヨタマヒメの本当の姿――。
* * *
第28話「絶対見ちゃダメ!」
ヤマサチがウミサチに勝利して従えました。釣り針を失くした時とは形勢逆転しました。釣りだけに浮き沈みある人生ですね(うまいなぁ~!)。ハリのある生活が戻ります(うまいなぁ~2!)。
そんなある日のこと、トヨタマが海からやってきます。
ヤマサチ「おぉ~! トヨタマ元気か? 海の中からはるばるよく来たな! 釣り針クソ野郎はこらしめてやったぜ! (元はお前が悪いだろ!)……どうした? 何か言いたげな顔だね?」
トヨタマ「ねえ、あなた……アタシ……できちゃったみたいなの」
ヤマサチ「……そっか、まあ3年いたからな……そらできるか。ウチのオヤジ(ニニギ)は一晩で3つ子できちゃったけどな」
トヨタマ「あなたの子を海の中で産むわけにはいかないじゃない? 海の中じゃ溺れちゃうじゃない?」
ヤマサチ「そうだよな。おれ3年いたけどよく溺れなかったなよな。やっぱおれ神なんだなって実感したわ」
トヨタマ「だから地上で産もうと思ってきたのよ……ううっ! ああっ!! 産まれるー!!」
ヤマサチ「ええっ!? いきなり臨月!? ちょっと救急車~! ってか今、産屋を作るからまだ出さないでー!!」
ヤマサチは、急いで海辺に、赤子を産む場所である産屋を作り始める(そんな場合か! )。
トヨタマ「あなたっ! うっ……! 産まれるー!!」
ヤマサチ「頼む! もうちょいガマンして~!」
そしてヤマサチは、鵜の羽根を葺き始める(やってる場合か!)。
トヨタマ「あなたっ! ……はぁはぁもうダメ……ひーひーふー、ひーひーふー、うっ! もう出るー!!」
ヤマサチ「えー! ちょっと待って待って! まだ鵜の羽根葺き終わってないけど……産むとこ見たいからー!!」
ヤマサチが慌てて産屋の中へ入ろうとすると
トヨタマ「待ってあなた! 中に入っちゃだめ!」
ヤマサチ「何でだよ!? いいだろ? おれの子なんだ!」
トヨタマ「違うの! ……はぁ、はぁ……アタシ、今から元の姿に戻って産むから……だからダメ!」
ヤマサチ「元の姿ってどゆことだよ?! フリーザ? シンゴジラ? 今第何形態?」
トヨタマ「とにかく産むとこは見ちゃダメなのお! はぁ、はぁ……ねぇ? わかった? 約束して!」
ヤマサチ「……オマエがそこまで言うならわかったよ。見ないよ、元気な子を産んでくれよ」
トヨタマ「ありがとう、言うこと聞いてくれて。ね? 絶対に! 見ちゃダメだからね!」
ヤマサチ「わかった! 頑張ってくれ!」
トヨサチ「うんありがと、絶対に、ぜぇ~ったいに! 見ちゃダメだから!」
ヤマサチ「……わかったよ」
トヨタマ「絶対に! 絶対によ!」
ヤマサチ「……見ろってこと?」
ヤマサチは「こいつ、ダチョウ倶楽部好きなのかな?」と感じたのか、「絶対見るな!」と言われたのを前フリだと思って戸をオープン!!
すると産屋の中にいたのは……大きなサメでした。サメがうねりながら苦しんでいたのです。
トヨタマ「あなた! あれほど見ちゃダメって言ったのに! とうとうこの姿を見てしまったわね……」
ヤマサチ「うっ……うわー!! サメがしゃべった!!」
トヨタマ「まずそこ?! 今までウサギとかネズミとかしゃべってたでしょ! あたしの本当の姿は……これなのよ」
ヤマサチ「えー!! ……お前、サメだったのかよー!!」
ヤマサチは、トヨタマの正体がサメだと知って、彼女に対する恋もサメたそうです(いいね!)。
トヨタマは夫に本当の姿を見られてしまい、サメザメ泣いたそうです(いいよ!)。
トヨタマ「見ないでって言ったのに! ……バカー!!」
ヤマサチはこんなことを言われてさぞ、シャークに触ったことでしょう(もういっちょ!)。
トヨタマに見つからないように、もっとジョーズに見ればよかったですね(もうええわ!)。
人魚ならよかったんでしょうけど、100%混じりっ気なしのサメだったわけですね。
さて、妻の正体を見てしまったヤマサチさん。
どーなるどーなる!
※続きは、書籍『落語DE古事記』にてお楽しみください!
落語DE古事記
神社に行けば、私たちは神様にありとあらゆることをお願いしますよね。商売繁盛に合格祈願に延命長寿に縁結びに厄除けに……。
でもちょっと待って。こんなに頼りにしてる「神様」のこと、ちゃんと知ってますか?
神様について書いてあるのが「古事記」です。歴史の教科書でも最初の方に出てくるので、「古事記」について聞いたことのない人はいないと思いますが、でも何が書かれているかまで説明できる人って、少ないんじゃないでしょうか。
そこで、大学院まで古代史を専攻していた落語家の桂竹千代さんに、「古事記」を楽しく解説していただくことにしました。
爆笑注意ですから、静かな場所では読まないようにしてくださいね!
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