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雑事に「没頭」してみよう
不安や緊張で落ち着かないとき、何か別のまったく関係ないことをすると、気が紛れることもよくあります。
神経科医の森田正馬氏が一九二〇年頃に考案した、「森田療法」という神経症に対する精神療法があります。
ネガティブ感情をなんとかしようとするよりも、「あるがまま」に受け止め、積極的な行動を行うことで、心の状態をプラスに変えていくという考え方は、平成の世になった今もなお、国内外から高い評価を受けています。
森田療法のなかに、炊事や洗濯、掃除など日常に関わる雑事をこなし、規則正しい生活を徹底するという行動療法的なアプローチがあります。
じっとしているだけでは、自分のなかのネガティブ感情に呑み込まれてしまう。だから何かの作業をすることによって雑念が入るのを抑える、いわば作業療法という発想です。
目の前の雑事に集中して、ネガティブ感情を含む雑念をシャットアウトすると、気がつけば、イライラや怒りや悩みごとが忘却の彼方へと消え去っている。
「雑事にまみれる」という発想は、日常生活にも取り入れやすい感情整理の方法と言えるでしょう。
単純作業に没頭するというのも、これに類似した方法です。
心がストレスフルなときに単純な作業を繰り返すことで気分を落ち着かせる。オフィスなら、たとえば会議用の資料をコピーする。溜まった不要書類をシュレッダーにかける。家庭だったら洗い物をする、洗濯物を干すなどの家事をする。
こうした“あまり頭を使わずにできる作業”に精を出すことで、ネガティブ感情を紛らわせることができるのです。
心が「無の境地」へ近づく
単純作業を繰り返していると、「ハイ、次。ハイ、次」というリズムを感じて、“ノッてくる”ような感覚を覚えることがあります。
初めは何となくやっていたことでも、集中して続けるうちにだんだん気分が盛り上がって熱中することがあります。
こうした心理状態は、ドイツの精神科医エミール・クレペリンによって「作業興奮」と名付けられています。ウォーキングやジョギングで感じる昂揚感や興奮、いわゆるランナーズハイに似た感覚と言っていいでしょう。
この状態になったときや、単純作業の持つシンプルワールドに没頭しているとき、私たちの心は“無の境地”に近づき、とらわれていたストレスから心は解放されて、落ち着きを取り戻しているはずです。
単純作業、とくに手先を使う作業は、感情のコントロールにおいてとても重要な役割を果たしていると考えられます。
ネガティブ感情の矛先を意識的に手先に集中させることで、感情の質を変換させる。家事や雑用といった日々の雑事が、乱れた感情を救ってくれることもあるのです。
イライラしない本
心穏やかに毎日を過ごしたいのに、ついイライラしたり、モヤモヤしたり、カッとなったり……。みなさんにも、心当たりがあるのではないでしょうか? そんな方におすすめなのが、テレビでもおなじみの教育学者、齋藤孝先生の『イライラしない本』。心を整え、感情をコントロールする方法が満載の本書より、今日から試せるノウハウをご紹介します!