ある日突然、イギリス人の夫から「リコンをクダサーイ」と言われ、傷心と勢いで「カミーノ」へと旅立ったのをきっかけに、世界中を旅し続けている、もりともこさん。
現在、スペイン、イタリア、モロッコでの安宿暮らしを描いた「マンマ・ミーア!」が好評発売中です。
プロの旅士であるもりさんが、”カネがなくてもヨーロッパを楽しむ方法”や、”ツウしか知らない絶品料理&スラング”などを5回にわたってご紹介!
ガイドブックには載っていない裏技や現地事情が満載ですよ~♪
カネがないけど地中海に行きたい、
しかもできるだけ長く!
なんだって? アジアに比べるとグッとお高いヨーロッパ旅行を、安く上げたいだとぉ?
そんなの、“とんかつ・ラーメン☆ダイエット”ぐらいに難しい。ワガママを言うんじゃないよ、キミ!
と、旅行代理店には言われるかもしれない。離婚および失業による傷心旅行を計画した時の私もこれに近かった。自分の心の中の、自分旅行代理店に、あたしゃこうリクエストしましたよ。
1.いろいろ耐えた自分へのごほうびに、1、2か月は日本を離れて旅をしたい。
2.だけど失業中だから、予算は限りなく抑えなきゃ。
3.かといって、物価の安いアジアの喧騒地帯をガンガンせめるって気にはまだなれないの傷心だから。何てゆーか、どこかの美しい自然に包まれて、風に吹かれていたいのよね。でも超孤独なのはイヤ。ちょっとは出会いも欲しいってゆーか……。
そして選んだ旅先は、『カミーノ』とよばれるスペイン巡礼だった。
カトリック教徒の聖地、サンティアゴ・デ・コンポステーラをめざす900キロの徒歩の旅。
この旅の魅力はまず、徒歩だから現地での交通費がかからないこと。しかも巡礼中に泊まる宿はどこも一泊600円前後というのが気に入った。毎日ただ歩いて、疲れたら道沿いの巡礼宿に泊まって眠るだけ。お楽しみは、巡礼中に立ち寄るバル(バー)で飲む、一杯の生ビールやスペインワイン。カンパーーーイ♪
雄大な自然の中を歩くカミーノでは、好きなだけ、気がすむまで泣けるのも傷心旅行にはうってつけだった。それでいて、宿では世界中からやってきたカッコイイ巡礼者たちと知り合い放題。毎日がトキメキの連続で、42日間かけて歩き終えた頃には元夫への未練もすーーーっかりふっとんでいたのでした。めでたし、めでたし。
あのー、スイマセン。こーゆー旅の例も、「低予算で憧れのスペインを楽しむ」、に入りますでしょうか? (笑)
えっ、いくらエコノミーにスペインに滞在できても、徒歩の旅なんかイヤだって?
ではそんなアナタには、2011年の離婚以降、いまだにどこにも拠点をもたず世界を転々としている私が実行しているワザをお教えしましょう! その名も、
【安宿に住み込んで働いて
宿代と食費を浮かそう大作戦!】
働くといってもお給料をもらうわけじゃないから、就労ビザとかそんな面倒臭いものはいりません。宿の仕事を手伝うかわりに、タダで寝床と食事を与えてもらえる、あくまでもボランティア。
最初に私が挑戦したのは、スペインのカミーノの道の上にある巡礼宿だった。
利用する側から受け入れる側にまわって、おもにスペイン人の同僚たちと一緒に掃除したり、料理したり、買い出しへ行ったりしているうちにスペイン語はメキメキ上達するし、たっぷりとスペイン文化には触れられるしで、まぁこれが楽しいこと!
味をしめた私は、2015年から3年間にわたって、スペイン、イタリア、モロッコのあちこちの宿、合計11軒で働いたのでした。
夏は巡礼宿を中心に転々として、それ以外のシーズンは、ボランティア求人サイト「ワークアウェイ」を使って、民間のホステルにもボランティアスタッフとして滞在。もう、お金を払って客として泊まるなんて、もったいなくて、味気なくてできない⁉
とはいえ、タダを甘く見ちゃいけませんよ、アナタ!
巡礼宿はとにかく労働時間が長かった。毎朝6時の朝食の支度から、消灯後の片付けが終わる夜の11時までシゴト、シゴト、シゴト。民間のホステルは労働時間が1日5時間以内、週休2日と決まっていたから遊ぶ時間も十分にあったけれど、寝床が廃墟の教会だったり、オーナーがうそつきの最低男だったり……。でもまぁ、そのたびにあらゆる解決法を考えて、クリアしていったのも今となってはよき思い出です♪
最初に働いた巡礼宿の83歳のおばあちゃんなんて、いまや自分にとってスペイン人の母だし、「キミはもう、うちの家族の一員だよ」と言ってくれたオーナーファミリーの家は“実家”同然だし、イタリア・ナポリの宿では20代のかわいい若者たちと同じ釜のメシを食って4か月間暮らして、まるで「遅くやってきた青春」をもらえたような、そんな人生経験。節約をきっかけに、思わぬ人生の宝を得ることができて大ラッキー♪
この作戦を使って1年のうちのほとんどを海外で暮らして、毎年冬になると日本へ帰って、リゾート地のホテルに住み込んで働いたりしながら家なし人生を続けている。
そんな体験をエッセイにまとめた6年ぶりの新刊、
『マンマ・ミーア!スペイン、イタリア、モロッコ安宿滞在記』
発売にあわせて、今年は久しぶりにニッポンの夏に帰国した。
本のPR活動等が一段落したいまは、故郷鹿児島県にある屋久島の“屋久島のユースホステル”さんにお世話になっています。もちろん、客としてでなく、住み込みボランティアスタッフ「ヘルパーさん」として。(まだやるか!)
「はじめまして、新人ヘルパーのもりともこです。歳はちょっと行ってます。海外のホステルは経験がありますが、日本の宿は初めてです。よろしくお願いします!」
毎朝、おフロを掃除しながら目の前の海を眺めてうっとりし、夜には世界中からやってきたバックパッカーたちと焼酎宴会。休日には森の中を歩いて、屋久島の自然にココロから感動。
住み込みボランティア、いや、たとえば「マンマ・ミーア!(なんてこった)」という名の観光アトラクションだと思って、アナタも一度やってみてはいかがですか?