京都のお寺の副住職で、コラムニスト・編集者としても活躍中の稲田ズイキさん。そんな僧侶が、なんと「家出する」と宣言。この連載は、「僧侶」に虚無を、「寺」に閉塞感をおぼえた27歳の若い僧侶が、お寺を飛び出し、他人の家をわたり歩き、人から助けられる生活の中で、一人の人間として修行していく様子をほぼリアルタイムに記録していくというものです。気になった人はどうか、稲田さんをお家に泊めてあげてください。
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何気ない日々のワンシーンに”真理”は眠っているのかもしれない。
家出の旅中、友人と二人で街を歩いていると、目の前に『ライフ』があった。ご存知だと思うが、ただのスーパーマーケットである。近畿地方・関東地方を中心に、全国に270店舗あるらしい。
ライフ。そう、ただの『ライフ』だ。
看板を発見した僕は、会話の隙間を埋めるくらいの軽いボケで、
「人生だな~」
と言った。今から考えると、なんともお尻がこそばゆくなるセリフ。でも、別に深い意図はなかった。ただ、「ライフ(LIFE)」という英単語を見て、頭に浮かんだ言葉を口に出しただけだ。
ところが、この会話の先には、思いもしなかった展開が待ち受けることになる。友達はこう答えたのだ。
「えっ、生活でしょ?」
二人の間に、雷に打たれたような沈黙が広がった。
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僧侶、家出する。
若手僧侶がお寺や僧侶のあり方に疑問を持ち、「家出」した!
さまざまな人に出会うこと、それ自体が修行となると信じ、今日も彼は街をさまよう。
(アイコン写真撮影:オガワリナ)