苦しいときに耐え、信念を貫くことで、風は吹く。さまざまな重圧を乗り越え、現在も活躍を続けるサッカー元日本代表GK(ゴールキーパー)、川島永嗣。彼の著書『耐心力 重圧をコントロールする術がある』は、重圧をコントロールし、成功をつかむための術を教えてくれる、ファンならずともためになる一冊。読めば「心の体力」がつくこと間違いなしの本書より、一部を抜粋してお届けします。
ゴールキーパーの魅力とは?
人生も、サッカーも何が起こるかわからない。たった1試合を見てもそう。ほんの小さなきっかけで流れはガラリと変わるし、たったひとつのゴールで試合が決まる。
GKの面白さは、そこにある。試合の流れを決定的に変える。それができるポジションであり、その瞬間に最高の興奮がある。ストライカーがゴールを決めるのと同じように、GKがシュートを止めることでゲームの流れを引き寄せることができる。
僕はその瞬間のために生きている。
たまたまGKというポジションを僕は選んだけれど、GKとしてだけでなく、サッカー選手としていつも人が感動するプレーをしたいと思っている。その試合が、W杯の1試合でも、フランスリーグの1試合でも、知っている人が誰も目にしないようなリザーブリーグの試合でも。
小さい頃から「プロサッカー選手になりたい」「日本代表になりたい」「海外でプレーしたい」という夢があった。でも、それは子どもなら誰もが思い描く漠然とした夢で、特別なものではなかった。
いまの自分が抱く夢も、あの頃とは変わらないのかもしれない。
所属クラブがなくなった時、こう思った。
「自分が信じる道を進んで、日本代表に呼ばれなくなるなら、それは仕方がない」
夢は夢として、日本代表のゴールマウスに立ち続けたいという思いはある。でも、自分がその立場にいられなくなるなら受け入れるしかない。
だからといって自分が追い求める夢、進むべき道をあきらめる必要はない。あの頃の自分には、もっと高いレベルでプレーしたい、もっと高いレベルでプレーできるという感覚があり、それを疑うことはなかった。
夢をあきらめるな
日本代表のGKというポジションは、その先にあるのだと思う。自分自身が常に進化し続けなければ、いままでと同じ自分だったら、そのポジションを手に入れる資格も価値もない。
もし自分が日本代表のいちファンであるなら、進化し続けようとしない選手にゴールマウスを守ってほしいとは思えない。ただ日の丸を背負うことだけを考えて夢をあきらめるような選手なら、日本代表にふさわしくない。
あの時、自分の信念を曲げて所属クラブを決めてしまえば、日本代表から離れる“空白の1年”はなかったのかもしれない。正直に言えば、日本代表の一員じゃなくなる自分を想像することが怖くて仕方がなかった。それまで守ってきたもの、努力してつかんできたものを失ってしまうことが、怖くて仕方がなかった。
それでも僕は、自分を信じ続けた。追い求めるものに集中することができた。このまま必要とされなくなるのなら、仕方がない。でも、この道を突き進まない限り、いま以上の自分にたどり着くことはできない。そう確信していたからこそ、いまの自分ではなく、未来の自分のために決断することができた。厳しい時期を支えてくれたのは、そんな思いだった。
あの経験を通じて思う。チャレンジしないで終わるより、チャレンジして失敗するほうがずっといい。失敗しても死ぬわけじゃない。サッカー人生が終わるわけじゃない。この先の人生でチャレンジしなかったことを悔やむより、「チャレンジしたけどダメだったな」と笑えるほうがずっといい。
やりたいことがあるなら、覚悟を決めて勝負したい。夢があるなら、それを絶対にあきらめたくない。この8年間の僕の原動力は、そんな思いだった。
耐心力 重圧をコントロールする術がある
苦しいときに耐え、信念を貫くことで、風は吹く。さまざまな重圧を乗り越え、現在も活躍を続けるサッカー元日本代表GK(ゴールキーパー)、川島永嗣。彼の著書『耐心力 重圧をコントロールする術がある』は、重圧をコントロールし、成功をつかむための術を教えてくれる、ファンならずともためになる一冊。読めば「心の体力」がつくこと間違いなしの本書より、一部を抜粋してお届けします。