10月6日夜、巨人系の新聞社から金田正一の訃報が届いた。86歳は私より1歳若い。「急性胆管炎による敗血症」だそうだが、誰よりも元気な男だったから驚いた。
あらためていうまでもなく、歴代トップの400勝を挙げたすごい投手だった。巨人で現役を引退したので巨人が金田の死去を発表し、マスコミも「巨人の金田」として大々的に報じているが、400勝の偉業は、現役通算20年のうち15年間に353勝を挙げた国鉄(現ヤクルト)時代につくられた。「国鉄の金田」を忘れてはいけない。
ついでにいえば、巨人は金田を川上哲治、長嶋茂雄、王貞治らとともに「永久欠番」にしたが、永久欠番は長年そのチームに貢献した選手を顕彰するもので、ヤクルトこそ金田を永久欠番にするべきだ。
ダブルヘッダーで2勝稼いだ「国鉄の天皇」
私も巨人のショートとして1954(昭和29)年から10年間、国鉄のエース・金田と戦った。私が新人の年、金田はもう5年目で、3年連続で20勝以上、奪三振のタイトルも3年連続で獲っていた。
私はもともと左投手が好きだったので、金田との対戦はあまり苦にならず、それほど速い投手という記憶もなかった。私が「速いなー」と感心したのは広島の右腕・大石清で、切れのいい速球がバッターの手元でキュンと伸びた。
大石は身長176センチで大きな投手ではなかったが、広島のエースとして3年連続20勝以上を含む5年連続の2ケタ勝利を挙げ、通算134勝を残している。
金田の投球を一言でいえば、184センチの長身から投げおろす速球とカーブが素晴らしかった。カーブは大きく縦に割れるドロップで、速球もカーブもコントロールがよかった。
金田は長身の本格派だったから小柄なバッターが苦手で、阪神の吉田義男にはよく打たれていた。吉田の金田に対する通算成績は打率.294、本塁打8本である。
いまでも覚えているのは、金田が小柄な選手に打たれると「おー、よく打ったなー」というように、余裕の笑顔で打った選手を見ていたことだ。チーム内で「天皇」と呼ばれていた金田の照れ隠し、プライドだったのだろう。
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