京都のお寺の副住職で、コラムニスト・編集者としても活躍中の稲田ズイキさん。そんな僧侶が、なんと「家出する」と宣言。この連載は、「僧侶」に虚無を、「寺」に閉塞感をおぼえた27歳の若い僧侶が、お寺を飛び出し、他人の家をわたり歩き、人から助けられる生活の中で、一人の人間として修行していく様子をほぼリアルタイムに記録していくというものです。気になった人はどうか、稲田さんをお家に泊めてあげてください。
* * *
家出をしていると、不思議な出来事に遭遇する時がある。
大阪の梅田での話。待ち合わせしている店を探すため、僕はGoogleマップを片手に一人歩いていた。遅刻していたため、歩調は早めだ。画面を見ては進行方向を確認し、あっちの方角だなと目星を付ける。地図と現実の行き来、別になんてことない作業だ。
「ああ急がなきゃ」と足を駆け始めた瞬間、未知との遭遇は起こった。
「もしかして道に迷われていますか?」
そんな声が横から飛び出てきた。周りには誰もおらず、間違いなく僕に対しての言葉だった。ひとりの若い男性がこちらをまっすぐに見つめている。
ここから先は会員限定のコンテンツです
- 無料!
- 今すぐ会員登録して続きを読む
- 会員の方はログインして続きをお楽しみください ログイン
僧侶、家出する。
若手僧侶がお寺や僧侶のあり方に疑問を持ち、「家出」した!
さまざまな人に出会うこと、それ自体が修行となると信じ、今日も彼は街をさまよう。
(アイコン写真撮影:オガワリナ)