シェアハウスに住み始めて、早10年。
女3人で始めたシェアハウスでしたが、メンバーが一人増え二人増え……、気づけば当初の同居人は結婚し、その夫と子どもを含めた総計11人(夫婦と子ども+独身8人)の大所帯シェアハウスに成長しました。
本連載では、私・アベ タマエ(独身)が「夫婦がいるシェアハウス」の日常を綴るほか、「シェアハウスに一緒に住んでくれるムコ殿候補を募集する」という企画の顛末までお届けしてきました。(詳細は電子書籍『結婚してもシェアハウス! ~普通の婚活は、もうやめた~』をご覧ください)
ムコ殿を募集し、25人の応募者の中から1人を選び同棲の末、お別れした珍道中から早1年ちょっと。
なんと私、結婚しました!!!
3年前からシェアハウスに一緒に住んでいる男性と。
夫になった男性は、いち同居人として、あのムコ殿募集を横目に眺めながら「タマエさんと結婚したら毎日が楽しいかもしれないなあ」と感じたというツワモノです。真・ムコ殿と呼びましょう。
2018年の夏の終わりから付き合い始め、年末には結婚を決め、3月に入籍。顔合わせから始まる結婚前後のドタバタで、気づいたら半年が経ってしまいました。改めて振り返っても「こんなに人生がトントンと進むことってあるんだ」とボーゼンとしています。
さて、入籍して夫婦になった後も、2人とも変わらずシェアハウスに住み続けています。しかしながら、色々考えた結果、私たち夫婦は来年にはシェアハウスを出ることにしました。
もちろんシェアハウスでの夫婦生活はかなり快適で、出ることに不安もあります。何より、この連載中で「結婚してもシェアハウスに住む生活は楽しい」と言い続けたのに、何故出ることにしたのか?
その理由をお話する前に、そもそもなんでシェアハウス内結婚に至ったのか、少しだけ説明(弁明?)させていただきます。
ありがとう、サッカーワールドカップ
「シェアハウス住人同士で恋愛に発展しないの?」という質問には、これまで幾度となく答えてきました。
「私たちが住んでいるような小規模シェアハウスは、住人同士が“いとこ”みたいな距離の近さになるので、恋愛に発展しづらい。30人住まいなどの大規模シェアハウスでの結婚話はたまに聞くよ」と。
これは嘘じゃなく、様々なシェアハウス住人たちと話した率直な感想です。自分自身、まさかシェアハウス内の人と付き合って結婚するとは! 一緒に住んできた3年間の間にお互いに彼女彼氏もいたし、特に恋愛感情を持つこともなく、本当に「いとこ」的な気持ちで過ごしてきたんです。
そんな私たちが付き合うことになったキッカケは2018年、サッカーワールドカップ。もともとサッカーをやっていた真・ムコ殿が熱を込めてサッカーの面白さを語るのを聞き「夜更かししても見るべき戦いかもしれない」と思い、サッカーが始まるまでの夜中の数時間をビールとポテトチップスをお供におしゃべりするうちに(酔った勢いもあり)、アレヨアレヨと付き合い始めた……という流れでした。
振り返ってみると、シェアハウスに3年ともに住みながらも、平日は仕事が忙しく、土日もそれぞれ外出していることも多くて、しっかり話す時間って実はあまりなかったんですね。それがW杯のおかげで試合開始の深夜1~2時まで毎晩のように話す時間を持つことになり、意外と知らなかった仕事やプライベートの考えを知れて「すごい信頼できるヤツだ……!」と思うようになったというワケです。
シェアハウスの住人同士は恋愛関係になりやすい?
それでもやっぱり、シェアハウスで恋愛感情が産まれるって珍しいと思います。
シェアハウスの日常って、ベロベロに酔っ払ってきて仕事のジャケットも脱がず(いや、脱ごうとしたのかもしれない、というよく分からない姿で)リビングで寝てしまったり、休日に2日間に渡りゲームをしていたり、夜明けまで飲んで15時頃に起きてきたりという超日常的な姿を見られているわけです。さらに仕事や部活と違い、みんなで一つのゴールを目指してアドレナリンを出したりという体験もないわけで、キラキラした恋愛が産まれづらい環境なんですよね……。
しかし、そんな環境下でも付き合うことになった私達。お互いにダメなところも見せているぶん、「がっかりポイント」がほとんど存在しないことはラッキーでした。付き合って1年、結婚して半年が経ちますが、むしろ「意外とこういう優しい面があるんだ」というグッドな発見が日々進んでいます。そしてもともと遠慮がない関係なので、猫をかぶらずにアレコレものが言える。恋愛ゴトに脳内CPUを割く必要がないってストレスフリー!
「昔からの知り合い・友人・同僚と付き合うことになった」というケースもこんな感じなんでしょうか。シェアハウス内恋愛は、門戸は超狭いですが、付き合ってからは続きやすいということは確かです。
シェアハウス内結婚の行方は、意外な結末に?
と、入籍してからも幸せに暮らし続けている私たち。冒頭でお伝えした通り、今も変わらずシェアハウスに住み続けています。もともとお互い住んでいる家なので、引っ越す理由が全くなかったんですよね。私が飲み会や趣味のために外出しても、彼も家でシェアハウスメンバーと遊んだりしていて楽しそうだし(逆の場合もしかり)、結婚してからもシェアハウスに住んでいた方が良いなあと実感する日々でした。
しかし今後私が妊娠し、7LDKに小さい子どもがもう一人増えることまで考え始めると、少し話は変わってきます。
私たちの家は3階建の一軒家なので、3階の自室とリビング・キッチンのある1階を行ったり来たりしており、赤ちゃんを持ち運ぶには厳しい造りです。リビングも子ども2人が動き回るなら、もう少し広い方が良いのかも……。
そう思い、6LDKの他の家も探してみましたが、都内にそんな広さの家はほとんどありません。
子どもが産まれたり、一緒に暮らしたい夫婦・人数が更に増えたとしても、シェアのメリットを得られる暮らし方ってできないものだろうか? そんなことを話す中で、私たち夫婦は、思い切ってシェアハウスを出て二人暮らしをすることにしました。ただし、友人も多く住む、シェアハウス近くのエリアで。
人工的に「ご近所さん」がいる生活を作り出すことで、今のシェアの良い面である「何かあったら助け合える、ちょっと相談できる相手が沢山いる」環境を保ち続けられるのではと思っています。私はこうしたゆるいシェアの関係を「仮想団地」と呼んでいます。
参考)結婚してもシェアハウスの次は、「仮想団地」! ?
https://www.gentosha.jp/article/10394/
暮らし方は、もっと柔らかくていい
ということで、本連載は終了し、アベは新たなライフスタイルにチャレンジしてみたいと思います。
「あれ? 結婚してもシェアハウスじゃなかったの?」と思う人もいるかもしれません。でもシェアは「1ハウス内」の概念を超えて、隣のマンション、徒歩5分先の友人宅などに広がっていくと思ったら、それはそれで面白いと思うんです。子育てがひと段落したら、またシェアハウスに皆で住むのも楽しいし。
「結婚してもシェアハウス」をしてみて感じたのは、暮らし方や家族のカタチはもっと柔軟に考えても良いということ。「夫婦2人暮らし=核家族」という考え方自体も少し硬いのかもしれません。近所に住む友人なども巻き込んで、子育て・家族の関係人口を増やしていくことも、都心での暮らしを生き抜く一つの戦略ではないのでしょうか。やってみないと分からないけど!