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美しい暮らし

2019.11.20 公開 ポスト

虹の彼方には、何もない矢吹透

虹の彼方には、何もないことを僕たちは知っている。

30数年前、フジテレビの入社試験の第一次面接で、出願票の「将来の希望」という欄に、「歌って踊れる会社員になること」とふざけたことを書いた僕は、面接官に「じゃ、歌ってみな」と言われ、その場に直立して、ジュディ・ガーランドの「虹の彼方に」を英語で二節ほど、高らかに歌ってみせた。

僕はその前の年、帝劇の「レ・ミゼラブル」初演のキャスト・オーディションで第二次審査まで進んで、あえなく敗退という戦績を残し、それなりに歌は上手かったのである。

小学生の頃、ピンク・レディーの振りをコピって、休み時間に女子たちと踊っていたくらい、踊ることも好きだった。

思い返すに、ジュディ・ガーランドとか、ピンク・レディーの振りコピとか、なんて、ゲイ。

 
虹っちゅうもんは、ただの光の屈折だから、その向こう側に行こうと、何かがあるわけではない。

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関連書籍

矢吹透『美しい暮らし』

味覚の記憶は、いつも大切な人たちと結びつく——。 冬の午後に訪ねてきた後輩のために作る冬のほうれんそうの一品。苦味に春を感じる、ふきのとうのピッツア。少年の心細い気持ちを救った香港のキュウリのサンドイッチ。海の家のようなレストランで出会った白いサングリア。仕事と恋の思い出が詰まったベーカリーの閉店……。 人生の喜びも哀しみもたっぷり味わせてくれる、繊細で胸にしみいる文章とレシピ。

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美しい暮らし

 日々を丁寧に慈しみながら暮らすこと。食事がおいしくいただけること、友人と楽しく語らうこと、その貴重さ、ありがたさを見つめ直すために。

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矢吹透

東京生まれ。 慶應義塾大学在学中に第47回小説現代新人賞(講談社主催)を受賞。 大学を卒業後、テレビ局に勤務するが、早期退職制度に応募し、退社。 第二の人生を模索する日々。

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