もうすぐお正月。お正月といえば、初詣。
毎年なんとなく参拝しているみなさんも多いかもしれませんが、神様のことちゃんと勉強しておかないと、ご利益に影響しますよ!
落語家・桂竹千代さん著の新刊『落語DE古事記』より、今回クローズアップするのは、初詣にぴったりの有名な神社ですが、その”いわれ”まで知ってる人はあまりいないのでは?
* * *
「第八話 おれのオロチ」より
全国各地にある、勝利・厄除けの氷川神社。祀られてるのはなんていう神様? そしてそのおおもとは?
アマテラスが岩戸隠れしてしまったのは、元はと言えばスサノオの責任……というわけで、バツとして、スサノオは地上へと行かされました(島流し的な)。しかも自慢の髭(ひげ)を切られて(ア~ンせっかく伸ばしたのにぃ! 板垣退助みたいにしたのにぃ!)、手足の爪を抜かれます(めっっちゃ痛いよね!)。
地上に着いたスサノオは、罪を償うため、大気都姫神(オオゲツヒメノカミ。以下、オオゲツ。急に出てきたよ!)に、神にお供えする(お前も神だけどな)食べ物を求めました。
オオゲツは鼻、口、ケツからたくさん食べ物を出します(尻から食いモンて! まさにオオ「ゲツ」ってやかましわ)。
これを見たスサノオは「きったな!」と思い(そりゃそーだ)、オオゲツを斬り殺します(でもかわいそん)。
すると死んだオオゲツの体から、食べ物がたくさん誕生します(これも衛生的にはどーなの!?)。
頭から蚕(かいこ。これは食べないけど)、目から稲、耳から粟(あわ)、鼻から小豆(あずき。牛乳と言いたいとこだよね)、アソコから麦(アソコはアソコよ)、尻から大豆が生まれます。
これらをカミムスビ(第二話に登場した造化三神、久しぶり! 覚えてるかな?)が、種として地上にまきました。これが五穀の起源です(何度も言うけど、衛生面どうなの?)。
やがてスサノオは、出雲国(いずものくに。現在の島根県)に到着しました。
そこに流れる川の上流から、箸はしが流れてくるのを発見します。スサノオ「はしだ! 壽賀子! ……呼び捨てごめんなさい)上に誰かいるのか?
腹減ってるからメシ食わしてもらおっと」
上流に向かって歩いていくと、今度は泣きわめく老夫婦を発見します。
スサノオ「どしたの?」
老夫婦「どうもこんにちは。ワシは足名椎(アシナヅチ)、こちら妻の手名椎(テナヅチ)と申します」
スサノオ「漫才コンビみたいだな。で、何で泣いてんのよ?」
アシナヅチ「ワシらの娘が毎年怪物に1人ずつ食べられてしまうのですじゃ、神様」
スサノオ「あっ、オレが神ってわかる?」
アシナヅチ「何かオーラあるんで。それはともかく、ワシには8人の娘がいたのですが、残りは1人となってしまったのですじゃ」
スサノオ「8人とも娘ってすごい確率だよね。絶対どこかで男が生まれそうだけど、全員女だとはね。奥さんもいるし、アンタ男1人で大変だろ?」
アシナヅチ「……いえ、問題はそこじゃないんです。もうすぐ怪物が来て、最後の娘が食べられちゃいそうなんですじゃ」
スサノオ「オレがさきに娘食べちゃおっかな」
アシナヅチ&テナヅチ「(シーン……)さようなら」
スサノオ「ウソごめん! でもその怪物退治したらいいんでしょ? どんなヤツなのよ?」
アシナヅチ「目は赤く、頭が8つ、尾が8つ。体の大きさが、8つの谷と8つの山ほどありますじゃ」
スサノオ「8ばっかり好きだねー。ラッキーナンバー? 怪物だからアンラッキーだけどね~。OK! 退治するのはいいけど、成功したらちゃんと娘くれよ?」
アシナヅチ「……いつの間にそういう話に?」
スサノオ「いいっしょ? 怪物が食うか、オレが食うかだよ」
アシナヅチ&テナヅチ「(シーン……)さようなら」
スサノオ「ウソウソ! ごめんって! わかったよ、ちゃんと付き合ってからそういうことするから、怪物退治したら、ちゃんと交際許してよ」
アシナヅチ「まぁ付き合ってからなら……わかりました。怪物退治をしてくれたら、娘の櫛名田姫(クシナダヒメ。以下、クシナダ)との交際を認めます」
スサノオ「クシちゃんていうんだね。とりあえず紹介してよ」
アシナヅチ「あっ、はい。おーいクッシー」
クシナダ「何か用?」
アシナヅチ「かくかくしかじか……」
クシナダ「うんうんはいはい……えっ? この人が? ……うんうん、それはいいけど……えっ? マジで? 何でよ勝手に決めないでよ! あたしの人生よ、ふざけないで! ちょっ……何すんのよ! 放して~(羽交い締めして口を押さえられて)……んぐぐ~!」
アシナヅチ「娘もOKです」
スサノオ「OKなのか!? ものすごい嫌がってるように見えるけど……まあいいか、とりあえずクシちゃんを櫛に変えさせてもらうね(何だいきなりその魔法は!?)。
……えい!」
スサノオは、櫛に変身したクシナダヒメを自分の髪に挿します(これは本当に『古事記』に書いてあるのだけど、謎の行動。クシナダをクシって、ただダジャレを披露したかっただけかな)。
スサノオ「よーし、じゃあ怪物退治するんで、強めの酒を酒船(酒を入れる器)に入れて、8個用意しといてー」
アシナヅチ「飲むんですか?」
スサノオ「そうそうそう……出会いにかんぱーい!! ……ってバカ! 怪物退治に使うんだよ! 頼むよ」
アシナヅチ&テナヅチ「はい喜んでー(居酒屋風)」
スタンバイOK。
すると、遠くの方から怪物こと八俣大蛇(ヤマタノオロチ)がやってきます。
ドシーン! ドシンドシン!(ここでかかるのはゴジラのテーマがいいかな)
ちゃかちゃんちゃかちゃんちゃかちゃかちゃかちゃかちゃん♪
ヤマタノオロチ「あんぎゃー!!」
スサノオ「よっしゃ怪物ー、正々堂々勝負だ! まずこれを飲めー!!」
ヤマタノオロチ「あんぎゃー!!」
ヤマタノオロチは、8つの頭をそれぞれの酒船に突っ込み、酒をがぶがぶ飲んでバタンキュー。
「今だ!」と、スサノオは剣を抜いて、寝ているオロチの首を1本ずつ切り始めます。
アシナヅチ&テナヅチの心の中「えーっ! 神様めっちゃ卑怯~!」
スサノオ「(剣でギコギコ切りながら)ヨサクは首を切る~♪ ヘイヘイホ~♪
……ホレ、ぼ~っと見てないで掛け声!」
アシナヅチ&テナヅチ「……へいへいほー」
スサノオ「(8本切り終えて)よし勝ったー!! これでクシナダはオレのものだ
ー! オレのオロチを味わえー!」
アシナヅチ&テナヅチの心の中「うわーっ! 神様ひどい下ネタ~!」
オロチ退治の舞台は、島根県斐伊川(ひいかわ)の上流だったと伝わっています。
斐伊川は何筋にも分かれた川で、暴れ川として地元では有名です。よく氾濫して人を飲み込んでいたそうですが、これがヤマタノオロチのモデルになったとかいう説もあります。現在でも斐伊川が氾濫すると、各々の家で、荒神様(こうじんさま。スサノオのこと)と呼ばれる石に祈りを捧げて鎮める風習があるそうです。もしかしたらスサノオが斐伊川の治水工事をしたのが、この伝承になったのかもしれません。
島根県雲南市(うんなんし)には、ヤマタノオロチ退治神話関連の神社や伝承地がたくさんあります。
オロチ退治に使う酒を造った釜とされる「釜石(かまいし)」。
その酒を盛った壺の1つをまつる「八口(やぐち)神社」。
オロチが酒に酔って、そこを枕にして寝たという「草枕山(くさまくらやま)」(でかっ!)。
オロチの8つの頭を埋めて8本の杉を植えたという「八本杉(はちほんすぎ)」。
オロチの住んでいた場所とされる「天が淵(あまがふち)」。
……etc. オロチ巡りをしてみるのもいいかもしれません。
ところで「オロチ」という文字ばかり見ていると、オルニチン(シジミに含まれる二日酔いに効くやつね)がオロチに見えてきます。島根県の宍道湖(しんじこ)は、シジミがたくさん採れるので、お土産屋に行ったらこの“あるある”をきっと理解して頂けると思います。
ちなみに、後の時代に斐伊川がなまって氷川となったので、全国にある氷川神社には、スサノオがまつられています。特に有名なのが、埼玉県さいたま市大宮区の氷川神社です。勝利、厄除けの神様として親しまれています。それから大宮という地名ですが、氷川神社の境内が広かったから「大きい宮」で「大宮」になったそうです。
~ここから先は本書でお楽しみください!桂竹千代著『落語DE古事記』~
* * *
「氷川」神社って、全国あちこちにありますが、これって、「斐伊川」がなまったものだったとは。
ということで「氷川神社」に祀られているのは、勝利・厄除けの神様とのことで、初詣にもぴったりですね!
さて、次回は、病気平癒の神様をご紹介します。
落語DE古事記
神社に行けば、私たちは神様にありとあらゆることをお願いしますよね。商売繁盛に合格祈願に延命長寿に縁結びに厄除けに……。
でもちょっと待って。こんなに頼りにしてる「神様」のこと、ちゃんと知ってますか?
神様について書いてあるのが「古事記」です。歴史の教科書でも最初の方に出てくるので、「古事記」について聞いたことのない人はいないと思いますが、でも何が書かれているかまで説明できる人って、少ないんじゃないでしょうか。
そこで、大学院まで古代史を専攻していた落語家の桂竹千代さんに、「古事記」を楽しく解説していただくことにしました。
爆笑注意ですから、静かな場所では読まないようにしてくださいね!
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