11月末に発売になり、発売即重版となった『女は、髪と、生きていく』。本書はヘアライターとして20年近く活躍してきたNo.1ヘアライター・佐藤友美(さとゆみ)さんの最新刊になります。髪の本であるにも関わらず、「泣きました」「人生のスイッチが入りました」「美容師として全同業者とお客さんに読んで欲しい!」と発売直後から反響続々の本書。テレビや雑誌、ウェブで紹介され続けています。今回は、「自分らしさ」という曖昧な言葉の呪いをさとゆみさんがほぐします。
自分らしさとはいったい何か
「らしさ」って、いったいなんでしょう。美容の仕事をしていると、必ずこの「らしさ」問題にぶつかります。
「自分らしさを大切にしよう」と、よく言われます。髪型を選ぶときも「自分らしい髪型にしたい」と話す人はたくさんいます。
でも「自分らしさって、何のこと?」とあらためて聞かれると、みんな、困ってしまうのではないかと思います。
ありのままの自分のこと?
それとも、自分が居心地のいい状態のこと?
誰かに言われた「それって、○○さんらしい!」という言葉のこと?
この「自分らしさ」を、明確に説明できる人はいないんじゃないかと思います。
私だって、めっぽう明るいキャラで通っていますが、家に引きこもってケータイゲームをやっているときがもっとも幸せです。はっきり物を言うタイプだけど、意外と奥ゆかしいんだねとか言われると、きゅんっときて「三歩下がってついていきます♡」みたいになったりします。
私も、何が自分らしさなのかよくわかりません。
主語を自分に取り戻す
だとしたら、いったん、「自分らしさ」について考えるのはやめて、そもそも、「どんな自分になれたらいいか」を考えてみるのがいいかもしれない。
どんな自分でいられたら嬉しい?
どんな自分だったら、自分を好きになれる?
どんな自分を人に見せたい?
まずは、理想の自分を考えて、その理想の自分を実現する髪を選ぶ。髪を理想の自分像に設定すれば、内面もいずれ追いつきます。
つまり、理想のあなたを、「自分らしく」しちゃえばいいのです。
誰かに言われる「あなたらしい」ではなく、あなたが選んだ、こうありたいと思う「自分らしい」を、手に入れましょう。
私はこれを、主語を自分に取り戻す行為だと考えています。誰かのために生きるのではなく、自分のために生きる。そのために、ぜひ、髪を使ってみてください。その方法は、『女は、髪と、生きていく』の4章で詳しくお話しします。
髪には上下関係がない
ところで、私がここまで髪に思い入れを持ち、他の分野にわき目もふらずに専門のライターとして活動しているのには、ひとつ、理由があります(いや、本当は100個くらい理由があるのですが、ここではまずひとつ)。
それは、髪には上下関係がないということです。
たとえばメイクには「目指すべき顔」のようなものがあると感じます。
これまでいろんなメイクページを見てきましたが、デカ目を小さく見せましょうとか、二重を一重に見せましょうとか、そういう企画はなかった気がします。鼻を低く見せたり、顔を大きく見せたりするテクニックも聞いたことがない。
つまり、メイクには正解があるのでしょう。二重が正解で、高い鼻が正解で、顔が小さいほうが正解。正解という言葉は強すぎるかもしれませんが、多くの人は、「目指すべき美人顔」の方向に向かって、自分の顔をメイクしているように思います。
ダイエットも同じです。ウエストや太ももを太くしましょうというダイエット法は、普通はないですよね。
それに比べて、髪には正解がない。上下関係もない。
ロングヘアのほうが偉いわけでもないし、ショートヘアがベストなわけでもない。その人にとって、似合う髪と似合わない髪があるだけ。
ロングでも美しくなりえるし、ショートでも美しくなりえる。100人いれば、100パターンの答えがあり、美しさがある。
私は、髪の、ここが、たまらなく好きです。
「髪」は誰かと比べる必要がない
「上下」がないということは、人と比べなくていいということです。人と比べなくていいって、心がすごく楽です。今、思い返せば、ライターになった私が、ヘアページの魅力にとりつかれたのも、それが理由だった気がします。
ファッション誌で働き始めたとき、私はそこに集う女性たちがまぶしすぎて、見た目コンプレックスをこじらせていました。
「このアイシャドウで一気に美人顔♡」とキーボードを打つたびに、「いやいや、お前みたいなブスが書くなよ」と自分ツッコミを入れながら書いていました。
でも、ヘアだけは違いました。ヘアページの撮影は「みんな違って、みんないい」が、楽しかった。
ヘアページには、雑誌撮影が初めてという読者さんがたくさんきます。
彼女たちは、最初は不安そうな顔でやってきます。でも、ヘアチェンジした自分の顔を鏡で見たとき、ほとんどの女の子はハッと息をのみます。多分、自分がこんなに素敵に見えることに驚くのだと思います。その次に、なんともいえない恥ずかしそうな顔をします。「これ、本当に私かな。なんか、いつもより可愛い気がする。でも自分を可愛いと思うなんておこがましいよね……。いや、でもやっぱり可愛い気がする……」。鏡を見ながら葛藤しているのが、手にとるようにわかります。
そして、自分の顔を右に向けたり左に向けたりして鏡に映して、やっと認めるんでしょう。「私、やっぱり可愛い」って。そうするとはじめて、泣き笑いのような顔になります。それらの過程を経て、パッとはじけるように顔が輝くのは、その数秒後です。若い子だけではありません。50代でも80代でも、それは同じです。
メイクルームの外からこっそりとその様子を見ている私は、いつも、胸がつかまれ心を打たれます。なぜなら「彼女はいま、自分のことをすごく好きになれたんだな」ということがわかるから。
元の顔立ちや体型や年齢やセンスに関係なく、髪は平等に人を輝かせてくれます。 それはなぜかというと、髪は、誰かが決めた正解を目指すのではないからです。人と比べてどうこうじゃない。ただただ、自分史上一番素敵になればいいだけ。誰にでも同じだけ、チャンスがある。
私は、髪の、ここが、たまらなく好きです。
そして、自分史上一番素敵になるためには、自分を掘り下げる必要があります。
年末年始に美容院に行こうと計画している方は、ぜひ行く前に『女は、髪と、生きていく』を読んでみてください。
美容院で「おまかせ」はNGです! どんな自分になりたいのか、イメージを明確にしてからお出かけ下さいね。
女は、髪と、生きていく
NO.1ヘアライター・佐藤友美さんの最新刊『女は、髪と、生きていく』試し読み。
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