自律神経の名医、順天堂大学医学部教授・小林弘幸先生の最新刊は『死ぬまで“自分”であり続けるための「未来日記」』。先生が提唱する「未来日記」は、「達成したいことを完了形で書く」日記でも計画表でもない、1日の価値を上げる、まったく新しいツールです。
本書より、「みなさんの人生が満足いくものになりますように」と、願う小林先生のメッセージをお届けします。
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自分の物差しで人生を測る
私たち医師は、患者さんがお亡くなりになるとご家族に死亡を宣告し、亡くなった時間をお伝えします。「〇時〇分、ご臨終です」と。多くの医師は、自分が身に着けている腕時計や病室の時計を見て時刻を確認するのですが、先日、こんな話を耳にしました。
担当の女性医師が、患者さんの死亡を確認したとき、こう言ったそうです。
「いつも使っていた腕時計はどれですか?」
そして、亡くなった方の腕時計の時刻を見て、「〇時〇分、ご臨終です」と伝えたというのです。
私はこの話を聞いたとき、胸にこみあげてくるものがありました。なぜなら、その患者さんが生きてきた時間は、その人ならではのものであり、その証が、愛用していた腕時計だからです。女性医師は、病室の時計や自分がはめている腕時計など、他人の物差しではなく、その人ならではの物差しで人生を測ったのです。
私自身も、多くの患者さんのご臨終に立ち会ってきましたが、そのたびに思います。
「この人は、どういう人生を送ってきたのかなぁ」と。
お亡くなりになってベッドに横たわっている姿は、抜け殻そのものです。仕事で成功した人も、事業に失敗した人も、幸せだった人も、苦労を重ねた人も、死ぬときはたった畳一畳。行きつく先は、みんな畳一畳なのです。
だからこそ、自分の人生に誇りが持てるような生き方をしたいと思います。
お金や仕事がどうこうというよりも、自分が自分の生き方に納得できるかどうか。誇りを持てるかどうか。それが最も大切なことではないでしょうか。
つまらないストレスに翻弄されて生きるのではなく、毎日が楽しいと思って過ごすほうが、絶対に得です。いやなことがあっても、笑って過ごすのです。
もし、明日死ぬとわかっていたら、誰もそんなくだらないストレスに頭を悩ませて時間を費やしたりはしないでしょう。私だったら、大好きな家族と過ごします。
あなたの愛用の腕時計を見てみてください。刻一刻と進んでいるはずです。それと同じように、私たちもドクンドクンと命を刻み、確実にゴールへ向かっています。
時間は命そのものです。ただなんとなく毎日が過ぎていく生活は、命を無駄遣いしている生活と言っても過言ではありません。「このままなんとなく日々が過ぎていく」という流れを断ち、一歩を踏み出しましょう。
今だからこそ、やり直せる
先日、80歳の方とお話をしていたときに年齢を聞かれたので、59歳だとお答えしたところ、その方は目を細めて私を見つめ、こうつぶやきました。「若いね~」と。
私は常々「人生、これからだ」という気持ちを持つようにしていますが、その方に「若い」と言われたとき、改めて自分の若さを実感しました。
「そうか、俺はまだ59歳なのか」
もう59歳、ではなくて、まだ59歳。
一般的には、59歳は年長者の部類に入るかもしれません。しかし、80歳の方からすれば、たしかに50代は若いでしょうし、私自身も、70歳のときに今の自分を振り返れば「あのころはまだまだ若かった」と思うはずです。
つまり、未来の自分から今の自分を見れば、今日が一番、若いのです。
過去を基準に「今」を見るのではなく、未来から捉える。そうすれば、今だからこそやり直せることがたくさんあります。今から始めればいいことも、たくさんあります。
また、私たちは普段、呼吸をしたり、ご飯を食べたりすることをごく当たり前に行っていると思います。質素な食事が続くと、わびしさを覚える方もいるかもしれません。
けれども、普通に呼吸ができて、ご飯を食べられるということが、どれだけ幸せなことか。どれほど喜びに満ち、ありがたいことか。それを噛みしめなくてはいけません。
あなたも私も、未来の自分から見ればまだまだ若いし、元気です。だから、「もう遅い」と、ブレーキをかける必要はありません。
今日が一番若いのだから、今日という日を存分に楽しみましょう。