自律神経の名医、順天堂大学医学部教授・小林弘幸先生の最新刊は『死ぬまで“自分”であり続けるための「未来日記」』。先生が提唱する「未来日記」は、「達成したいことを完了形で書く」日記でも計画表でもない、1日の価値を上げる、まったく新しいツールです。
本書より、「みなさんの人生が満足いくものになりますように」と、願う小林先生のメッセージをお届けします。
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希望と絶望を分けるのは、考え方次第
人は、未来に希望を見出すことができれば強くなれます。これは、私自身も経験によって実感していることです。
私は医学部6年生のときに、ラグビーの試合で足を骨折しました。強烈な痛みに襲われながら地面に倒れ込んでいると、チームメイトや、試合を観戦していたOBである現役医師たちが「これは、ただごとではない」という様子で駆け寄ってきました。そして私はICUに救急搬送され、担当の医師から「一生、まともに歩けないでしょう」と告げられたのです。
ショックでした。
もうすぐドクターとしての生活が始まるはずだったのに。白衣を着て、病院内をせわしなく動き回っている自分。患者さんの退院を笑顔で見送る自分。思い描いていた未来が暗闇の中に消えていきました。
絶望したまま退院し、経過を観察するために通院することになりました。骨は相変わらず、くっつく気配がありません。X線写真を見た担当の医師からも「全然、くっついてないね」と言われ、私も医学部の6年生ですから、それなりの知識で自分のX線写真を見て「本当だ。全然くっついていない」と思っていました。
ところが、です。同じ写真を見て、別の医師はこう言ったのです。
「あれ!? ここにさぁ、ひげみたいなのが見えるだろう? これがいいんだよ~。これは再生してくるきっかけになるんだよな」と。
それを聞いた瞬間、真っ暗だった未来に光が差し込みました。「もしかしたら、治るかもしれない」。目の前がパーッと開けていくのを感じました。現状は何も変わっていないのに、考え方を変えただけで力がこみあげてきたのです。
そうして、未来に希望を見出した私は懸命にリハビリに励み、結局3年間かかりましたが、何不自由なく歩けるようになりました。
心の持ちようで、体の状態も、未来も、大きく変わります。
だから私は、自分が患者さんとお話をするときは、希望を見出していただけるような伝え方を心掛けています。たとえ、一般的には手遅れと言われるような患者さんでも、事務的に余命を宣告するようなことはしません。私が、がんを告知するなら、次のように伝えます。
「悪性に近い腫瘍で、がんです。けれども、がんにはいろいろながんがあります。悪くなることもありますし、よくなることもあります。がんというのは、なってみないとどんなことが起こるかわかりません」
その人にとっては、初めてのがんです。だから過去のデータ上は完治しないがんだとしても、その人が完治する第一例になるかもしれません。
希望は、必ずあります。
希望と絶望を分けるのは、考え方次第なのです。