年末年始は病院も通常の診療がお休み。体調を崩したら、救急外来にお世話になることになります。救急外来は一般外来とは違うことがいろいろあります。いざというときのために、どんなことを知っておけばいいのでしょうか?「外科医けいゆう」こと山本健人さんの『医者が教える 正しい病院のかかり方』からお届けします。
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救急外来は、救急車で受診したかどうかにかかわらず待ち時間が長いのが一般的です。休日や夜間は外来を開けている病院が少なく、限られた病院に患者さんが集中しやすくなっているからです。
特に連休中は、「休みが続いてしばらく外来に行けないから救急外来に行っておこう」という発想の方が増えるため、かなり混みます。連休中は2~3時間待ちが普通、というケースも少なくないでしょう。働く医師の方も激務です。
一般外来より長い待ち時間に耐える必要が時にあり、かつ日によっては、大変申し訳ないのですが、疲弊した医師に診療される可能性がある、というのも救急外来の欠点と言えます。
「コード・ブルー」や「救命病棟24時」のような、救急医療の現場を舞台としたドラマのイメージが強いためか、救急外来では「救急医療の専門家」が診てくれる、と思っている方が時々います。実際には、世の中の大半の病院に救急外来「専属」の医師はいません。
医療ドラマのように救急の専門家が多くいて、救急外来の全患者を救急医が診療しているのはごく限られた施設だけです。
では誰が診ているのでしょうか?
多くの場合、各科の医師が持ち回りで診ています。こういうシステムを「各科相乗り型救急」と呼びます。日本の病院の大部分はこのタイプの救急医療を行っています(日本救急医学会HPによる)。
専属の救急医がいる病院なら、救急医がシフトを組んで、平日・休日、日中・夜間問わず24時間体制で診ることができます。一方、救急医不在の各科相乗り型の病院ではそれができません。平日の日中なら、症状に合った科のその日の救急当番の医師が診ますが、夜間や祝日は各科の医師は不在です。そこで、ローテーション表が作られ、外科系1人、内科系1人、研修医2人のような形で分担して勤務しています(ルールは病院によって様々です)。
よって、休日や夜間に足をケガして救急外来に行っても、その日に診てくれる外科系医師は消化器外科医かもしれないし、乳腺外科医かもしれないし、泌尿器科医かもしれません。「整形外科医に診てほしい!」と思っても、その希望が叶うのは、「外科系医師のローテーションで偶然その日が整形外科医担当であったときだけ」です。
「そんなことでは困る!」と思った方は、もう少し読み進めてみてください。
休日や夜間の救急外来の目的は二つあります。
・専門科医師へ引き継ぐための応急処置
・専門科医師が診る必要があるかどうかの緊急性の判断
です。
具体的には以下のような流れです。
ケガや病気に対して診察・検査を行い、重症度を判断
↓
軽症なら応急処置のみ行い、平日の専門科の外来を予約する
重症なら(緊急性が高ければ)その場で専門科の医師を呼び出して治療を依頼する
常に専門科の医師が全員揃っていて診療可能という状態を、休日や夜間まで実現するほどのマンパワーはありません。むしろ、「その必要はない」とも考えられています。休日や夜間に専門科の医師が診なくてはならないほど緊急性の高い状態の患者さんは少ないからです。
必要なときに呼び出せば十分なのに、仕事のない医師を勤務させると人件費が無駄に多くかかります。このコストは将来的に患者さんの負担となって跳ね返ります。
軽症の方にとっては、あくまで救急外来は「一般外来へのつなぎ」の役割しかない、ということをご理解いただきたいと思います。
なお、病院によっては産婦人科医、小児科医が単独で夜間・休日のローテーションを組んでいるところもあります。このタイプの病院だと、妊婦や産科疾患の患者さんは産婦人科医が、子どもは小児科医が診てくれます。ただし、この体制を作るためには、産婦人科医、小児科医がそれなりの人数いなくてはなりません。
また、小児急病センターなど、小児科医だけが勤務する救急施設もあります。
医療機関によって役割はやや異なるものの、救急外来の原則については、ここに書いた内容を知っておくとよいと思います。
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