12月18日に、幻冬舎大学にて、落語家・桂竹千代さんによる、オリジナルの「神話落語」と、古事記の授業がありました。
年末も差し迫った時期……ということで、初詣のときに役立つ「神々のご利益」というテーマでの授業でした。
授業内容を、2回にわけて、まるっとリポート!
第1回は「正しい参拝の仕方」です。
* * *
神様のことを知って、神様に失礼のないように!
――ということで、前半では「神話落語」を聞いていただきました。
今回聞いていただいた落語をもとに、先日発売になった『落語DE古事記』という本を書いたわけですが、『古事記』そのものはたいへん長いものですから、いま落語で聞いていただいたのは、長い『古事記』のほんの一部です。もっとお知りになりたい方は、ぜひ本をお買い求めください!
さて、令和元年ももうすぐ終わります。そろそろ初詣のご予定も立てている頃でしょうか。ところで、初詣に行くにあたって、みなさんはどうやって神社を選んでいますか?
それぞれの神社には、それぞれの神様が祀られています。神様はそれぞれ得意分野があるので、的外れなお願いをしてしまったら、ご利益が期待できません。
例えば、天神様っていうのは学問の神様ですけれど、学問の神様のところにお参りして「彼女ができますように」と祈るのは、お門違い。「足が痛いなあ」って言って歯医者行くようなもんです。
その神様の“専門”を知って、正確にお願いしないといけません。それをちゃんと知っておいた方が、神様にとって失礼がないですよね。「俺のこと何も知らないじゃん」では大変な失礼でございますからね。
そういうことを知っておきましょう、ということで、今日は、「神々のご利益」というテーマでね、話を進めてまいります。
参拝を正しくしよう!
まずは、参拝の仕方。
諸説あるんですけど、「左を意識する」といいと思います。
先ほどの落語の中にアマテラスオオミカミという神様が出てきましたね。伊勢神宮に祀られている、日本の最高神と呼ばれる神様、天皇家の祖先神です。アマテラスは左目から生まれています。
日本には「左上位」って言葉がありますが、ここからきています。だから、左を意識するとよいと言われてるんですね。
参道を歩くとき。鳥居がありましたら、敬意を表して軽く一礼して、くぐらしてもらいます。聖域、サンクチュアリに入るわけですから。
このとき、左寄りを歩くといいとされます。真ん中が神様の通り道なので、左寄りを。砂利のところを歩く必要はないですよ。石だたみのちょっと左寄りを歩く。すると、神様に敬意をはらっているということになります。
すると、手水(ちょうず)という、手を洗うところがあります。
洗い方は、右手にひしゃくを持って水を汲んで、左手を洗います。やっぱり左からですよね。左手を洗ってから、右手を洗って、最後またもう一度左を洗う。それから口をゆすぐ。
神社によっては、ひしゃくの手で触った部分も穢れてるから、これも清めるためにバシャッて水で流して置くというのがあります。人間は、俗世間から神聖なとこに来て、穢れまくってるわけです。簡単な儀式ですけど、そこでお祓いするってことです。
しっかり手を洗いましたところで拝礼でございます。
拝殿がありますね。拝殿の奥に本殿がありますが、拝殿のところで拝礼です。
お賽銭を先に入れるという方もいれば、本坪鈴(ほんつぼすず)をガラガラやってからお賽銭を入れる方もいます。本坪鈴を鳴らすのは、神様に「来ましたよー」という合図でもありますし、これも穢れを祓うとか言われています。
そこから、基本的には二礼二拍手一礼となってます。でも実は、本当はたいへんな儀式をやらなきゃいけないんです。それを略式で「二礼二拍手一礼にしましょう」というのが、明治以降に決まったらしいです。
ところが、なかには違う神社もあります。出雲大社は「二礼四拍手一礼」です。全国の八幡宮の総本宮である宇佐八幡、大分にありますよね……も「二礼四拍手一礼」です。
このあいだ、奈良の吉野にある吉水神社に行ったんですよ。そしたらそこはすごいですよ。「二礼一七拍手」です。一七ですよ! 神様が一七神祀られているから一七拍手だというんですけど。途中で何回かわかんなくなっちゃいますよね。
まあ、多くは、二礼二拍手一礼です。
二回礼をして、そのあとに二回拍手するわけですが、このときに、やっぱり左を意識するといいです。右手をちょっと下にずらして、左手のほうが上に出るように、ちょっとずらして叩く。というのも、左は神様を表し、右手は人間を表す。神様の方が上の存在ですから、ずらして合わせる。
このように手を合わせると神様と一体化したということになります。そこでお願いごとです。
このとき、ちゃんと自己紹介をした方がよいとされますね。「神様だから何でも知ってんじゃないか?」ではありません。ちゃんと名乗りましょう。どこのなにがしだというのを。住所も年齢も、もちろん自分の名前も言いまして。
それから、感謝の意をまず伝えるということが大事。「お金持ちになりたい」みたいに欲を先行するんじゃなく、まず感謝です。神様のおかげで、いつも見守っていただいてるおかげで、元気で暮らしていけていますと。
そういう人にご利益があるわけですよ。
そのうえでお願いするわけですが、そのときも、「欲」を丸出しにするのではなく、「私をこうしてもらったら、世の中にこう役に立ちますよ」みたいにお願いしましょう。そういう言い方の方が、神様も優しく聞いてくれるでしょう、という話です。
みなさんが鳴らす「本坪鈴」ですが、ある神社と無い神社がありますよね。格式高い神社には、ないことが多いです。伊勢神宮にもありませんよね。実はあれ、あとから出てきたと言われてるんですよ。
日本は昔から自然崇拝です。巨石とか、大きな岩とか大きな木とかに自然の霊威を感じて、そこに祈ってきたわけです。
ところが、大陸から仏教がやってきます。仏教にはお寺があるので、こちら(古来の自然崇拝)も対抗して、何か形として見えた方がいいんじゃないかってことで、お社ができたと言われてます。つまり、仏教が先行して、神社が誕生したと。
伊勢神宮には二千年の信仰があるといわれますけど、最初は自然に向かって祈ってたんでしょうね。そこから仏教がやってきて、ああいう立派なお社が建っていくわけですよ。
それと、仏教には銅鑼(どら)があるでしょ。その銅鑼にも対抗したものが鈴だった、ってことらしいです。
さあ、参拝が終わって帰りますね。帰りも、本殿の前を横切るときは、なんかやっぱりすいませんという気持ちでやった方がよろしいですね。神様に尻を向けるのもあれですけども、ちょっと横切る。やっぱり左側通行で帰っていくということですね。
それぐらい敬意が大事なんです。
(リポート第2回に続く)
落語DE古事記
神社に行けば、私たちは神様にありとあらゆることをお願いしますよね。商売繁盛に合格祈願に延命長寿に縁結びに厄除けに……。
でもちょっと待って。こんなに頼りにしてる「神様」のこと、ちゃんと知ってますか?
神様について書いてあるのが「古事記」です。歴史の教科書でも最初の方に出てくるので、「古事記」について聞いたことのない人はいないと思いますが、でも何が書かれているかまで説明できる人って、少ないんじゃないでしょうか。
そこで、大学院まで古代史を専攻していた落語家の桂竹千代さんに、「古事記」を楽しく解説していただくことにしました。
爆笑注意ですから、静かな場所では読まないようにしてくださいね!
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