12月18日に、幻冬舎大学にて、落語家・桂竹千代さんによる、オリジナルの「神話落語」と、古事記の授業がありました。
年末も差し迫った時期……ということで、初詣のときに役立つ「神々のご利益」というテーマでの授業でした。
2回に分けて、授業内容を、まるっとリポート!
後半は、「主な祭神」の前半です。
* * *
神社の数は、コンビニの倍以上!
全国には、すごい数の神社があるわけですが、どれぐらいあると思いますか?
全国のコンビニの数は、5万7000軒くらいらしいんですけど、神社はなんと12万社以上あると言われてます。コンビニの倍以上あるってわけです。
その12万社ある神社で祀られている神様のほとんどが、『古事記』の神話に出てくるんです。
『古事記』は日本最古の歴史書で、上・中・下巻とあるんですけど、上巻の部分に、日本初の神武天皇が誕生する前の「神様の時代」が書かれています。
『古事記』っていうとなんとなく神様のことが書かれているイメージがあると思いますけど、ほとんどが上巻に登場する神様たちなんです。
そこで、古事記に出てくる神様のうち、有名な神様、ご利益のある神様をご紹介していきましょう。
イザナギ・イザナミ
イザナギとイザナミは夫婦の神様です。
さっきの『古事記』の落語では、アメノミナカヌシの神、タカミムスビの神、カミムスビの神という三神が出てきましたが、特に活躍することなく、次の章でもう消えました(笑)。そこからまた何代か――神世七代とか言ったりしますけど、何代か誕生するんですが、男女の性別がない神様です。
そうして最後に誕生したのが、イザナキ・イザナミです。ちゃんとした夫婦としては初めてです。
イザナキとイザナミが交わって国が生まれてくるんですね。
ご利益としては、イザナキのほうは、やっぱり子孫繁栄です。国生みの神様でありますから。淡路島とか、いろんな島も生みましたし、いろんな神様もそこで生んでいったので、子孫繁栄です。
そして、夫婦円満。
先ほど落語でも見てもらいましたが、イザナミが焼き殺されてしまって、黄泉の国へ行きます。それを追ってイザナキが行くわけですが、行けるのがすごいですね。「黄泉の国って、死んでねえのに行けるのかい」って話ですけど、行けちゃうんですね。
行ってみると、イザナミがゾンビ化してるわけです。それがウェーッと来るんです。
で、イザナキは大きな岩で塞いだんですよ。黄泉比良坂(よもつひらさか)――この世とあの世の境と言われる。「坂」というのは「堺」つまり境界です。島根県に伝承地があります。そこには黄泉の国行きのポストがあって、亡くなった人に投函したら、それをお焚き上げしてくれるっていうので、死んだ友達に書いたんですが、返事来ないです。
その黄泉比良坂ってとこで大きな岩でバシッと塞いだら、イザナミが呪いをかけるわけです。
「おまえの国の人間を1日に1000人絞め殺してやる」というんです。
そしたらイザナギは、「君が1000人殺すなら、僕は1500人生んでやる」っていうんですよ(笑)。殺すのを止めるのではなく、生んでやる……。「おまえ独りで1500人生めるのかよ」って話ですけどね。今まで夫婦でずーっとやってきたのに、独りでも生めたんだ?! って。
実は、世界の人口が増えていく理由について、日本神話では、このエピソードで説明されてるんです。1500₋1000で500人ずつ増えて行ってるんだと。各国の神話でなぜ人口が増えていくのかっていうのそれぞれ説明されてるんですが、日本ではこのエピソード。
つまり、人の寿命が決まっているのは、イザナミが殺してるってこと。
落語にも「死神」って演目がありますけど、日本における死神はイザナミだってことです。
最後はそんな感じだけど、一番最初は仲良かったですし、一番初めの夫婦でもありますから、夫婦円満の神様でもあります。
そして、イザナミさんが人の寿命をコントロールしてるってことは、イザナミさんに「もっと長生きさせて」って言えばいけるってことで、延命長寿の神様ということです。
この二神が祀られている神社はいっぱいありますが、有名なのが滋賀の多賀大社。
というのも『古事記』に「イザナキは最終的におうみの多賀にいます」って書いてあるんです。イザナキの最後の登場シーンです。「おうみの多賀」というのは「淡海(あわうみ)多賀」って書くんです。「近江の国」の「おうみ」っていうことだろうと解釈されて、近江(滋賀)に多賀っていう地名があるから多賀大社ってことなんですけど、ところが、淡路島にも多賀という地名があるんです。
いきなり近江が出てくるのはちょっとおかしいんです。いままで出てこなかったのに。だから、これは、書き写し間違いじゃないかともいわれています。
『古事記』といっても、今残ってるのは全部写本です。原本はもちろん残ってないので、書き写したものが今に伝わってるわけですけど、一番古い写本でも七百年前ぐらいのものと言われています。鎌倉時代ぐらいのものが一番古いものなんですね。何回も書き写されてるんで、そのあいだに書き間違えた可能性はああります。
淡路島だったら、日本で初めに誕生した島ですから、イザナキが最後にここにいるっていうのも、「実家に帰った」ってことになって意味が通るわけですよ。淡路島にも多賀がありますし。
そんなわけで、どっちなんだと言われてるわけです。
淡路島の多賀には伊弉諾神宮ってとこがあります。
あとは埼玉の秩父の三峯(みつみね)神社。白いお守りで有名な。毎月一日になると、大行列ができるという、山の上にある神社です。
アマテラス
言わずと知れた最高神です。左目を洗って生まれたのがアマテラスであります。
女性か男性かみたいな話もあるんですけど、一応女性とされてます。
アマテラスは、スーパースターで、太陽神でもあるんで、国家の安穏。アマテラスが岩戸にこもったときに災害がすごく起きたんですね。だから、平和に保つにはアマテラスのご機嫌を保とうということです。
そして、天皇家の祖先神でもありますから、子孫繁栄です。
万能の神様です。
伊勢神宮の外宮・内宮のうちの内宮に祀られています。
イチキシマヒメ
スサノオとアマテラスが、姉と弟のケンカをします。そのときアマテラスが「おまえは私の陣地を奪いにきたんだろう」と言うんです。
スサノオが「そんなことはないよ。僕はお姉ちゃんと仲よくやりたいんだよ」と。
「じゃ、それを証明してみせろ」と。
「わかったよ」ってことで、ここで占いみたいなことをするわけなんです。
ウケイというものなんですけど。「誓約」と書いてウケイと読みます。
よく神話の中に登場するんですが、お互いの身につけているもの、アクセサリーなどを交換して噛み砕くんです。噛み砕いてフッてやると、神様が生まれるんですよ。本当にそう書いてあります! それで、男の子が生まれた方が勝ちだよっていう。
アマテラスとスサノオはそれをやりました。
アマテラスの方が生んだのが、宗像三神になります。宗像大社とかに祀られている神ですね。タギリビメとタギツヒメとイチキシマヒメ。三柱の女神が生まれる。
それで、スサノオの方が、アメノオシホミミとか男神五柱が生まれるわけです。
スサノオが男を生んだので、「俺の勝ちだね」って言ったら、
アマテラスが、「いやいやいや。あたしのアクセで生んでるんだから、あたしの勝ち」って言うんですよ。ややこしいでしょ。ジャイアンみたいな理屈ですけど。
そしたらスサノオが「俺によこしまな気持ちがないんだから、俺の武器の方から女性が生まれたんだよ。だから俺によこしまな気持ちはないんだよ」とか主張しだすんですよ。そもそもは「男を生んだら勝ち」のゲームなんですよ。最終的に「女を生んだら俺の勝ちだ」って主張しだすんですけど。おかしいですよ。
まあまあ、そのときに生まれたのが宗像三女神っていうんですが、中でも「イチキシマヒメ」が有名。
なぜ有名かというと、大陸から七福神がやってきたときに、弁財天と習合して、日本における弁財天がイチキシマヒメなだからであります。
なので、財運向上というご利益ですね。
有名なところはやっぱり宗像大社。世界遺産になりましたね。福岡県にあります。
あとは江の島。近場です。
そして、イチキシマはイツクシマになるんですね。ということで、世界遺産の広島の厳島神社にも祀られてる。
アメノウズメ
落語でもやりましたけど、天の岩戸を裸になって踊って開けたという、日本初のストリップショーです。これは日本初の芸能でもあるので、芸能上達の神様。
アマテラスの伊勢神宮のすぐそばに佐瑠女(さるめ)神社ってのがありますが、佐瑠女とアメノウズメは一緒なんです。
アメノタヂカラオ
アマテラスがこもっていた岩戸をグッと開けた神様。
開けたってことは力持ちの神様でありますから、スポーツ向上。
あとは開けたことによって災いがなくなったわけですから、運も開ける。開運招福。
みなさん、高千穂とか行かれたことありますかねえ。高千穂神社というところで毎日神楽をやってるんです。
舞台には二枚の岩型の板がありましてね。この前で神楽をするわけですよ。タヂカラオとかアメノウズメが出てきて、お囃子にのせて踊ったりして、この二枚の岩をちょっとずつ開けていくっていう神楽なんです。これを一時間やるんですよ。
最終でこれが開いて、ワーッでおしまいなわけですよ。終わると、司会者というか、神主さんが現われて、「えー、以上見ていただきました高千穂の夜神楽、天の岩戸開きでしたー。ありがとうございますー」みたいなことを言いながら、この板を軽々となおす(戻す)んですよ(笑)。一時間かけて開けるか開けんのか!? のやつを。そこが一番大爆笑です。
スサノオ
スサノオはこのあとに、アマテラスの岩戸ごもりはおまえのせいだ、ってことで、出雲の国、島根県の方に行かされますが、そこでヤマタノオロチを退治したことから「厄除け」です。
ヤマタノオロチという災害をつぶしたわけなので、病気平癒というご利益もあります。
ヤマタノオロチのことを「災害」と言ったのは、島根の方に斐伊川(ひいかわ)という川があって、何またにも分かれてるそうなのですが、この川が昔からよく氾濫をしたそうなんです。暴れ川と言われていたそうで。
これがヤマタノオロチのモデルじゃないかと言われてるんですね。
ヒイカワがちょっとなまって「ヒカワ」となって、氷川神社です。
いろんなとこありますけど、ここにはスサノオが祀られてるわけです。一番有名なのは大宮の氷川神社ですが、氷川神社の境内が広かったから、あの土地には大宮という名前がついたと言われてます。
ところで、関西には氷川神社ってあまりないんですね。関東の人間からしたら、馴染み深くて、いろんなとこあるイメージですけど。氷川神社は何百とあるんですけど、ほぼ関東に集中してました。
関西でいうと、スサノオが祀られていて有名なのは八坂神社ですね。祇園祭のとこです。
オオクニヌシ
スサノオノミコトの六世の孫ですね。めっちゃ孫です。昆孫(こんそん)っていうらしいです。ひ孫のひ孫を昆孫っていうらしいですよ。使うときないと思いますけど(笑)。
『古事記』の上巻が神様の話だって言いましたけど、上巻の中でも一部・二部・三部と大きくわけると、一部がイザナキ・イザナミの国生みや岩戸隠れのところ。二部が、オオクニヌシノミコトが成長して日本列島の支配者となる物語。第三部が、アマテラスがこれをぶんどってですね、アマテラスの孫のニニギノミコトから神武天皇の誕生まで。
だから二部では、オオクニヌシノミコトがすごい大活躍するんです。
オオクニヌシはめちゃくちゃ女好きの神様として有名。方々で女性をつくっては子どもを生んじゃうんです。子どもは180人いたと言われます。シャケみたいですね。
女性と一緒になって子どもを生むという行為がその土地を支配したという、いわゆるマーキングしたっていうことでもあったらしいです。ということから、縁結びの神様であります。
毎年旧暦十月を神無月っていいますね。ところが、島根県の出雲においては神在月(かみありづき)といいます。その月になりますと全国各地の神様が出雲大社に集まって、縁結びの会議を開いてたと。その総親方がオオクニヌシだと。
オオクニヌシは「幽事(カクリゴト)」をおまえは治めよということを言われるんですね。「幽事(カクリゴト)」というのは、現実世界以外のものすべてのことをいうそうです。死後の世界、あの世とかもそうなんでしょう。生まれる前のことも。
この人とこの人は結ばれるというのも前世から決まってるとすると、オオクニヌシがやってるってことになります。だから、縁結びの神様。
ちなみにこのオオクニヌシノミコトと一緒にスクナビコナという神もいます。
スクナビコナとオオクニヌシノミコトがタッグを組んで国づくりというのをするんですけど、スクナビコナは開拓の神様です。
温泉もいろいろ開発していったといわれてるので、いろんな地方へ行くと温泉神社がありますけど。だいたいスクナビコナが祀られています。オオクニヌシとスクナビコナがセットで祀られてたり。
いろんな土地で、なにかとオオクニヌシが祀られてることは多いです。
タケミカヅチ
オオクニヌシが日本を支配していくところで、「私たちが治めるのよ」と言って、アマテラスが部下として送り込んだ神がタケミカヅチです。
こいつはめちゃくちゃ強い。めちゃくちゃ強くて勝ったので、勝運向上。
茨城の鹿島神宮とか、あるいは春日大社。
春日大社には、鹿島神宮のタケミカヅチの神が、白い鹿に乗り、海を渡ってヤマトの国にやってきたという伝説がある。奈良公園に鹿がわんさかいるのは、神様の使いであるからということで、大事にして、あれだけ放し飼いになってるわけです。
鹿と出くわすと、どんなに高貴な方でも乗り物から降りて拝礼をしたっていうぐらいに、昔から奈良では大事にされてるんです。
放してある鹿は大事にしなさい。放してある鹿は大事にしなさい。「噺家」は大事にしなさいということで(笑)、我々も大事にされたりするんですけど。
コトシロヌシ
コトシロヌシは釣りをしていたので、大陸から七福神がやってくると、えびす様と習合してくる。だから、日本でえびす様っていうと、コトシロヌシのことを指すわけです。えびす様なわけですから、商売繁盛の神様ですね。大漁祈願ですよ。
コトシロヌシは、「この国よこせ」って言ったら、「差し上げます」って言ってすぐ海に飛び込んで自殺したそうです。弱いんです。
タケミナカタ
タケミナカタは負けん気強いやつなので、タケミカヅチと対決します。これが、日本初の力比べで相撲の発祥だと言われてます。
最終的には、タケミナカタは逃げていって、「もうここから出ませんから」っていったのが、長野県の諏訪大社。諏訪だけに、すまんと言ってですね、謝って許してもらえなかったそうですけど(笑)。
タケミナカタも一応戦ったということで、武芸守護の神様とも言われております。
有名なのは諏訪大社には御柱祭りという七年に一度の奇祭がありますね。死人も出るぐらいの祭りですよ。
サルタヒコ
アマテラスが統治を自分の孫のニニギノミコトに任せたのですが、ニニギノミコトが地上に降りてくるときに道案内をした神様がサルタヒコであります。天狗みたいな顔をしてたといわれます。
サルタヒコが道案内をしたことから交通安全の神様。道びらきという意味で開拓・発展の神様。
道祖神ってありますよね。田舎の方へいくと、道の交差点とか、曲がり角とかに。道祖神はサルタヒコと習合していくんです。道の境界にいる守り神みたいな、魔よけみたいな神様であります。。
ちなみにこのサルタヒコとアメノウズメが結婚します。結婚してからアメノウズメはサルをもらってサルの女でサルメとなります。だから、アメノウズメとサルメが一緒だってことです。佐瑠女神社のサルメです。
伊勢神宮のそばに猿田彦神社があり、その境内の中にポツンと佐瑠女神社があります。夫婦仲よくおります。
オオヤマツミ
ニニギノミコトが地上に降り立つと、コノハナサクヤヒメと出会うわけです。美女なので、ひとめぼれです。「嫁にしたいぞ」といったら、「お父さんに聞いてみます」。
このお父さんが山の守護神であるオオヤマツミの神なんです。山の親分ですね。山林守護ですよ。お酒の神様ともいわれてます。山のふもとの神社なんかによく祀られてます。
大山祇(おおやまづみ)神社も愛媛県にあります。
ここでは、「一人角力」という神事が行われている。五穀豊穣を願って、力士が一人で、神様と相撲をとるわけです。一人でやって。絶対に負けるわけです、人間は。
バーッて負けると、ウワーッと拍手喝采。「今年も五穀豊穣ありがとうー」みたいな感じになるんだそうです。一回見てみたいですねえ。
コノハナサクヤヒメ
ニニギとコノハナサクヤヒメは一晩で孕んでしまうんです。コノハナサクヤヒメが一晩で孕んだもんですから、ニニギは疑うわけですよ。「おまえ、俺の子じゃねえだろ」と。「浮気してんのか」「いや、してないわ、あなたの子よ」と。
「証明するわ。今からこの出入り口のまったくないこの建物の中で、火をつけて子どもを産むわ。もし生まれたら、あなたの子よ」
意味わかんないです(笑)。こういう、これもウケイみたいなもんで、おまじないするわけです。神様の子どもであれば、どんな過酷な状況でも生まれるってことを言いたいんですね。
結局生まれます。火中出産っていう神話なんです。
これをやったことからコノハナサクヤヒメは火難よけの神様でもある。で、富士山頂に祀られてます。浅間(せんげん)神社。
浅間神社の奥社が富士山頂にある。火の神様で火中出産もやったから、活火山であったこの富士山に祀られているというわけですね。で、火の中で産んだから安産ということです。
イワナガヒメ
「お姉ちゃんも一緒にお嫁にもらってくれませんか?」といったら、お姉ちゃんが不細工だったんですね。それで「いいですー」と断ったことから、縁切りの神様。非常に悲しげなエピソードですけど。
縁切りっていうとマイナスイメージですけど、悪縁を断ち切って新しい縁を結ぼうという前向きな解釈もできますね。
京都の貴船神社に祀られてます。貴船神社の本殿じゃないけど、結社(ゆいのやしろ)。結ぶ社(やしろ)ということで、これは新たな縁を結ぶということです。
ちなみに天皇家に寿命があるようになったのも、これが原因と言われてます。神様は永遠の存在ですから、寿命がないはずなんだけど……。
「この世に生きる生命が永遠に栄えますように」のコノハナサクヤヒメ。「その栄華が岩のように永遠に続くように」のイワナガヒメ。なのに、イワナガヒメを突っ返してしまった。この世に生きるものは栄えても散ってしまうというのは、ニニギノミコトのこの行いのせいだといわれてるんです。天皇家に寿命ができたのもこれだと。
だから、ニニギノミコト以降はお墓があります。宮崎にも鹿児島にもあり、どっちが本当かって感じですが。
原則として、ニニギノミコト以前の神様にはお墓がないです。しかし、イザナミはある。イザナミは焼き殺されてるので、殺された場合はあります。殺されてない場合、オオクニヌシとか、アマテラスとか、祀られる神社はあるけど、墓はありません。
シオツチノオジ
このニニギノミコトとコノハナサクヤヒメの間に三つ子が生まれるんですね。この三つ子が、俗にいう、ウミノサチヒコ、ヤマノサチヒコ、すなわちウミサチ、ヤマサチです。
ウミサチ・ヤマサチ神話が有名です。ヤマサチが、お兄ちゃんのウミサチ(海の神様)から釣り針を借りたのに、なくしてしまい、探しても見つからない。お兄ちゃんにめちゃくちゃ怒られて、海岸で泣いていたら、シオツチノオジが現われる。
「どうしたんだい。じゃ、一緒に探しに行こう」とシオツチノオジに連れられて、ヤマサチは海中へと行ったと。これが浦島太郎の原形だといわれてます。
一緒に探しに行こうって、海中に行こうって言ってくれたから、道びらきの開拓の神様。そして、製塩業。
宮城県仙台。陸奥の国の一之宮に塩釜(しおがま)神社っていうのがあります。ほんとはちょっと難しい鹽竈(シオガマ)っていう字なんですけど、簡略化して、便宜上これで。塩釜神社にシオツチノオジが祀られてるんですが。これ、塩釜神社の摂社、末社が近くにあって御釜(おかま)神社といいます。
この御釜神社はちっちゃい神社ですけど、日本三奇の一つなんです。
御釜神社には四つの釜があり、未来を予知できる釜だっていうんです。お布施といいますか、一〇〇円納めますと、神主さんがこのカギを閉まってるとこ開けて見せてもらえるんです。写真は撮っちゃダメって言われましたけど。
ここに水が張ってあって、濁ってるんですけど、日本に何かあるとき、災いなり吉兆なりあるときに、透明になるんですって。3. 11の朝は、透き通ってたらしいです。伊達家に嫡男・跡取りが生まれたときも透き通ったそうです。そんなふうに何か変化があるときは、水に変化がある。そして、どんなに夏場でも絶対干上がらないそうです。雨がめちゃくちゃ降ってもあふれることはないそうです。不思議な水です。
オオワダツミ
ヤマサチが海底に行くと、トヨタマビメと出会います。乙姫様みたいなものです。やっぱりすぐにひとめぼれです。
お父さんのところへ行くと、今度は海の神様ですが、それがこのオオワダツミの神です。海の親分です。海上安全。海の神様。漁業守護とか。
福岡県の志賀島に志賀海(しかうみ)神社があり、そこにオオワダツミが祀られました。「漢委奴国王(かんのわのなのこくおう)」という金印が出たことで一躍有名となった、志賀島です。福岡県の地続きの島。
あとは、私の出身である旭市の隣の市、銚子にある渡海(とかい)神社。やっぱり港付近で多いんですね。
トヨタマビメ
これは乙姫様です。
トヨタマビメとヤマサチが、お兄ちゃんの釣り針見つけて、地上に戻ったときに、トヨタマビメも地上に出てきて、
「あなたの子どもを孕みましたので、産みたいです、地上で。海だとやっぱり溺れちゃうから」と言います。
でも、ヤマサチもずっと海の中にいたわけですし、「海でも大丈夫じゃねえの」って話なんですが、地上で産みます。
ヤマサチは「私の出産の様子を絶対に見ないでね。絶対に見ないでね。絶対に見ないでねー」って言われたんで、これは見てもいいってことだろうな。芸人のフリとしては見てもいいんだろうということで、見ちゃった。
そしたらばサメが悶えてたんです。トヨタマビメ、乙姫様の正体はサメだったんですね。それで「ウワーッ、サメだー」って言って、めちゃくちゃサメて。乙姫はサメザメ泣いて。シャークに触って。もっとちょっとジョーズに見られればよかったねっていうことで。全部このくだりは『落語DE古事記』にも書いてありますが(笑)。
出産シーンを見られちゃったので「恥ずかしいー」って言って帰っちゃったんですけど、産めたっていうことで、安産の神様にもなっています。
鹿児島に豊玉姫神社があります。
トヨタマビメとヤマサチの間にウガヤフキアエズノミコトっていうのが生まれて宮崎の鵜戸(うど)神宮に祀られているんですけど、断崖の絶壁のすごい崖にある。すごく景色の美しいところです。海があって。
鳥の鵜の羽根をふいてる途中で生まれたので、ウガヤフキアエズノミコト。ウがフキあがる前に生まれちゃったのミコトっていう。変な名前なんですけど。
非常に行ってほしい神社です。宮崎の南の方ですから、高千穂からは遠いんだけど。
有名な「下り宮」なんですよ。だいたい神社って階段上がっていくと本殿がありますよね。ところが鵜戸神宮は下にあるんです。階段の下。これが珍しい。
トヨウケビメ
伊勢神宮の内宮がアマテラスに対して、外宮がこの豊受大神、トヨウケビメであります。
トヨウケのこの「ケ」というのは「食」なので、産業の神様でもあります。この「ケ」はキツネ、昔「ケツ」と言われてたそうです。「ケ」と「ケツ」が一緒になってきて、稲を荷(にな)うと書いて産業の神様の稲荷。稲荷にはキツネがいます。稲荷神社にはこのトヨウケビメが祀られていることもあります。
そのほか、番外編として、
住吉三神は海上安全の神様で、厄除けの神様。
オモイカネはこのアマテラスが岩戸にこもったときに、それを出そうと言って指揮した、リーダーシップをとった指揮の神様なんで、知恵のある神様。
のほか、ヤマトタケル、応神天皇、菅原道真、徳川家康とお話が進み……
はい、というわけで、終わりました。
これから初詣とか、神社へ行く機会があると思いますけども、ただ神様を見ずにどういう神様が祀られてるかちゃんと見て、「この神様は確かあの神話の登場人物だから、こういうご利益があるんだな」と思ったりしてください。
もちろん社務所には、いろんなものを売ってます。いろんなご利益のお守りも売ってます。でも、やっぱりその神社の“専門”のお守りがいいですよね。
理解して行けば、神様も「おお、よく私のこと調べてきたな」と思ってくださって、仲よく近づけると思うんですね。
神話を知っていただいて、参拝に行ってもらいたい。
そして、やっぱり欲よりも感謝の気持ちが大事だっていうことです。
そういうことで、みなさんのこれからのね、参拝が有意義になりますようにという意味を込めて、「神々のご利益」という講義でございました。ありがとうございました。
* * *
最後にはサイン会で交流!
ご来場の皆様ありがとうございました!
そして、新年のみなさまのご多幸をお祈りします!
落語DE古事記
神社に行けば、私たちは神様にありとあらゆることをお願いしますよね。商売繁盛に合格祈願に延命長寿に縁結びに厄除けに……。
でもちょっと待って。こんなに頼りにしてる「神様」のこと、ちゃんと知ってますか?
神様について書いてあるのが「古事記」です。歴史の教科書でも最初の方に出てくるので、「古事記」について聞いたことのない人はいないと思いますが、でも何が書かれているかまで説明できる人って、少ないんじゃないでしょうか。
そこで、大学院まで古代史を専攻していた落語家の桂竹千代さんに、「古事記」を楽しく解説していただくことにしました。
爆笑注意ですから、静かな場所では読まないようにしてくださいね!
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