昨秋発売になり、発売即重版となった『女は、髪と、生きていく』。本書はヘアライターとして20年近く活躍してきたNo.1ヘアライター・佐藤友美(さとゆみ)さんの最新刊になります。髪の本であるにも関わらず、「泣きました」「人生のスイッチが入りました」「美容師として全同業者とお客さんに読んで欲しい!」と発売直後から反響続々の本書。テレビや雑誌、新聞、ウェブで紹介され続けています。今回は、髪にコンプレックスを抱き続けてきた女性がさとゆみさんの「ある一言」で解き放たれた感涙エピソードです。
髪はリバウンドしない
髪はリバウンドしません。これがまた、髪の、いいところです。
前回ご紹介した、髪型を変えることで自分に自信が持てるようになったSさんの話でいうと、昨日褒められた髪が、次の日もちゃんと頭にくっついているところがいい。昨日褒められた記憶とともに、次の日も同じ髪がある。だから今日も頑張ろうと思える。これが、髪で、人が変化しやすい理由です。
たとえば、お気に入りの服を着ているときは、なんとなく気分が前向きになると思います。「今日の自分は大丈夫」。そう思えると、堂々と振る舞えるし、急なお誘いにも積極的にこたえてみようかなと思ったりします。
そんな「気に入った服を着ているとき効果」が、毎日ずっと続くのが、髪です。
服は毎日同じものを着るわけにいかないけれど、髪だったら、それは、「毎日」身につけて歩くことができます。
今からでも、自分を好きになれますか?
今、私は「気に入った髪は、お気に入りの服を毎日着るようなもの」と言いました。でも、残念ながら、その逆のケースもあります。
あるトークイベントでの話です。そのときも私は、気に入った髪を身につけたら、自分を好きになれる。髪は自信に直結するという話をしていました。
最後に「何か質問はありませんか?」と会場に尋ねると、ある女性が手をあげて「クセが強くてうまくまとまらないのですが、縮毛矯正をかけたほうがいいですか?」と聞きました。50歳前後の、ショートヘアの方でした。
私は薬剤のプロではないので、普段はアドバイス程度にしかお答えしないのですが、そのときは珍しく「いえ、縮毛矯正しないほうがいいです」と断言しました。
というのも、彼女の場合、縮毛矯正をしたら、せっかくのふんわりショートがぺたんこになって薄毛に見えてしまうだろうと思ったからです。
私は彼女にこう言いました。
「すごくいいクセですから、矯正でのばしてしまうのはもったいないですよ。そのクセがほしくてわざわざお金をかけてパーマする人がいるくらいです。もしまとまりにくいようなら、縮毛矯正ではなく、カットでおさまりよくしてもらいましょう」
彼女は納得したようで、その場はそれで終了したのですが、片付けが終わって帰ろうとしたとき、彼女が会場の外で待っていてくれたことに気づきました。
「あら、どうしましたか?」
私が声をかけると、彼女は突然ぽろぽろと大粒の涙をこぼしました。聞けば、小さな頃からクセ毛がコンプレックスだったそうです。
親戚に、「あんたのお姉ちゃんはサラサラのストレートヘアやけん、性格もまっすぐやけど、あんたはそのチリチリのクセ毛のように、性格も曲がっとんなあ」と言われたことが、ずっとトラウマで、毎朝鏡で自分の髪を見るのも辛かったのだそう。
でも、今日、私に「すごくいいクセですよ」と言われて、彼女の中で何かがはじけたのだといいます。
「私、今からでも遅くないですか? 自分のことを好きになれますか?」
そう言って泣く彼女。これまで、どれほど辛い思いをしてきたことでしょう。私は、きっと大丈夫。まずは気に入る髪型を手に入れましょうねと伝えて、一緒に美容院でのオーダーのポイントをおさらいしました。
後日、彼女から丁寧なお手紙をいただきました。その手紙には「今までで一番気に入った髪型になって、鏡を見るのが楽しくなりました」と書かれていました。
それを見て、心の底から、ほっとしました。
髪はリバウンドしません。
きっと、この手紙を書いた次の日も、その髪は彼女に味方してくれるはずです。これから毎日その髪と過ごすことで、彼女が自分を好きになってくれますように。その髪と過ごす楽しい記憶で、辛かった過去を上書きできますように。
そして、今まで自分の髪を好きになれなかったとしたら。ぜひ『女は、髪と、生きていく』を手に取っていただけたら嬉しいです。あなたが次に手に入れる新しい髪が、あなたに力を与えてくれますように。
女は、髪と、生きていく
NO.1ヘアライター・佐藤友美さんの最新刊『女は、髪と、生きていく』試し読み。
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