自律神経の名医、順天堂大学医学部教授・小林弘幸先生の最新刊は『死ぬまで“自分”であり続けるための「未来日記」』。先生が提唱する「未来日記」は、「達成したいことを完了形で書く」日記でも計画表でもない、1日の価値を上げる、まったく新しいツールです。
本書より、「みなさんの人生が満足いくものになりますように」と、願う小林先生のメッセージをお届けします。
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「後悔」するのではなく「諦め」をつける
「未来の自分が微笑んでいられる生き方を考えて、今を生きる」
これは非常に大切なことであるにもかかわらず、なかなか実行できない人が多いと思います。
なぜなら、現代人は、とにかく忙しい。
毎日のやるべきことに忙殺されて、本当にやりたいことや重要なことを気にかける余裕がありません。
ところが、人生を左右するようなチャンスやピンチは突然やってきて、決断を迫ることがあります。せわしない毎日の中で、それに迅速に対応するのは難しいことです。判断を誤ってしまい、悪い方向へ進むこともあるでしょう。
だからこそ、適切なタイミングで、「未来の自分が微笑んでいられる生き方を考えて、今を生きる」ことに、真剣に向き合う必要があるのではないでしょうか。運命に翻弄されるのではなく、自分で舵を切るのです。
人生は、残念ながら思い通りにいかないことも多いものです。神様は、ときにとんでもないことをします。
けれども、どうか「後悔」ではなく、「諦め」がつくような生き方をしていただきたいと思っています。
後悔というのは、「こんなはずじゃなかった」と思ったときに生まれる感情です。思い描いていた理想とは異なる現実に直面し、「なんでこうなってしまったんだろう」と振り返ったときに、大事なところでベストを尽くしていなかったり、判断を誤ったりした分岐点が見えてくる。すると、「本当は、もっといい人生だったかもしれない」という思いが芽生え、後悔にさいなまれます。
いっぽう、諦めというのは、「これだけやってダメだったんだから、仕方がない」という、すっきりした心情です。たしかに、思い通りの結果は手に入れられなかったけれども、ベストは尽くしたんだから、どうしようもない。そう思えれば、「あのとき、ああしていればよかった」などと、過去を思い返すことはありません。完全に断ち切って、前を向けるのです。
「後悔」と「諦め」を大きく分けるもの。それは未来と真剣に向き合い、シミュレーションしているかどうかです。言い換えると「未来の自分が微笑んでいられる生き方を考えて、今を生きる」ということになります。
自分にとって本当に大切なものは何か?
ストレスを感じることは何か?
生きている間に叶えたいことは何か?
自分の価値観と、一度腹を据えて向き合い、どうか悔いが残らないように過ごしていただければと思います。
書くことで自分を動かす
人は、いくら頭の中でイメージしていても、実際に紙に書き出さないと、なかなか行動に移せません。
個人的なお話をすると、リーマンショックのころ、私は株で大損をしました。大損といっても、世の中を賑わすIT社長などとは額が比べものになりませんが、私にとっては大金です。一時期、株価が上がっていたときに、売ろうと思ったことがありました。でも、「まぁ、まだいいか」と、売るのをやめました。もっと上がるかもしれないという欲もあったでしょうし、もし下がり始めたとしても、そのときが来たら考えようと思っていました。その矢先に、リーマンショックが到来。どうしたものかと慌てふためいている間に、どんどん株価は下がっていき、大損です。
本来、株というのは、損失さえ出さなければ黒字になるので、それで御の字なわけです。だから、たとえば「10円でも黒字になったら売ろう」と、あらかじめ決めておけば、そのタイミングが来たときに迷わず売ることができるので黒字になります。
けれども、そのころの私は、「まぁ、なんとかなるだろう」「そのときが来たら考えよう」などと思って、自分の中に軸となるものを設けず、あやふやにしていました。要するに、そのことに対して真剣に向き合っていなかったのです。
人は、頭の中で考えているだけでは、なかなか行動に移せません。でも、頭の中のイメージを紙に書き出して現実世界に引っ張り出せば、真剣に向き合い、ちゃんと行動できます。書くことで、自分を動かすことができるのです。
そして、それを具体的に手助けするのが「未来日記」なのです。