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妻語を学ぶ

2020.02.04 公開 ポスト

脳科学でわかった女性が「記念日」を大切にする理由黒川伊保子

「何もわかってない!」と責められる、「もういい!」と突然キレられる、急に不機嫌になって口を利いてくれない……。男性にとって永遠の謎ともいえる「女性の不機嫌」。この謎を脳科学の観点から解き明かしてくれるのが、人工知能研究者、黒川伊保子さんの『妻語を学ぶ』です。この本に書かれていることを実践すれば、奥さんや彼女の機嫌も一発でよくなるかも? そんなとっておきの処方箋をいくつかご紹介しましょう。

*   *   *

女性の脳は「プロセス指向」

「どうせ私なんか、どうだっていいと思ってるんでしょ?」

(写真:iStock.com/itakayuki)

記念日を忘れたことで、このセリフを投げつけられた男性もいるのではないだろうか。男性脳と女性脳では、記念日の意味が違う。そのことは、肝に銘じておいたほうがいい。

女性脳は、プロセス指向型。「成果」よりも「ここまでの道のり」に対して、意識が集中する脳なのである。

たとえば、ビジネスで客先とのトラブルが生じたとき。女性脳の中では、トラブルの状況よりも、ここまでの客先とのやり取りや、そこで生じていた軋みがクローズアップされる。したがって、「状況把握」や「当面の対応」よりも先に「そもそもの人間関係の歪み」に気づくのだ。

それも大事なことだが、上司としては、トラブルの状況を客観的かつ端的に伝えてほしいのに、「そもそも3カ月前に、先方の部長がこう言ったんですよ……」と延々と経緯を話されて辟易することがある。男性上司には愚痴や言い訳にしか聞こえないのだが、これは「経緯の中に潜んでいる、本質的な問題をちゃんと伝えたい」という女性の誠実さの表れだ。

女性上司たちは、テンパって経緯を語り出す女性部下には、「わかった。経緯は後で聞くから、まずは状況把握からいこうか」と声をかけてやる。男性上司の皆さまも、これを覚えておいてくださいね。

さて、記念日に関しても、男性脳は記号論的かつ成果主義的だ。結婚記念日も家族や恋人の誕生日も、「何かイベントをしなきゃいけない日」にすぎない。「10周年」「50周年」のような節目には、それなりに「ここまできたか」という思いがあるものの、7年とか13年くらいの半端な記念日は、とくに感慨はないはず。

しかし、プロセス指向型の女性脳にとって、記念日は来し方を思う大事な日。結婚13年目とは、13年分の思い出を紡ぐ日なのである。「13年か~。そういえば、あのとき、あ~だったなぁ、このときは、こ~だったし」なんてね。

このとき、女性脳は「感情」で思い出を紡ぐ。今と同じ感情とともにある記憶を、芋づる式に引き出してくるのだ。ここが、男性にとって、とてもとても大事なことなのである!

結婚記念日に、夫が自分を大切にしてくれて、満ち足りた気持ちになったら、「これまでの幸せな思い出」を紡ぐことになる。しかし、逆に夫が自分をないがしろにしたら、「これまでのムカついた、やりきれない思い出」を紡ぐことになる。

男と女の暮らしなんて、幸せを数えても、不幸せを数えても、どちらもたっぷりあるものだ。思いっきり思い出紡ぎモードに入っている記念日に、優しい声をかけただけで、この結婚が「とても幸せな結婚」に思えてくる。反対に、ちょっとないがしろにしただけで、この結婚が「とても不幸な結婚」に見えてくる

天国と地獄に分かれるのだ。これからは、とても怖くて記念日を忘れられないでしょう?

記念日を効果的に過ごす2つのコツ

ここで、記念日を効果的に過ごす方法を伝授しよう。コツはふたつある。

(写真:iStock.com/vadimguzhva)

ひとつ目は、前々から声をかけておくこと。2~3週間前に「今年の結婚記念日は土曜日だね。美味しいワインでも飲みにいこうか」なんて声をかけておけば、記念日までの間、女性はそのことばを何度も思い出して、ちょっと嬉しい気分になっている。どの服を着ていこうか、靴はどうしようか、美容院にはいつ行こうか……などと考えて、その度に、夫が自分を大切に思ってくれているようで嬉しい。

近未来の記念日に言及するたったひと言が、記念日へのプロセスを作り出すのだ。それが、プロセスを味わい尽くす女性脳に、絶大な効果をもたらすのである。

これは、普段のデートにも使える。「梅雨が明けたら、美味しいビールを飲みにいこう」「寒くなったら、ちゃんこを食べにいこう」とかね。梅雨の間中ずっと楽しみにしてきた女性脳は、梅雨明けの夕焼けを見ながらビールをひと口飲んだだけで、至福の境地に至る。

「そんなに楽しみにされたら、万が一約束が果たせなかったときが怖い」という男性も多いのだが、それがそうでもないのである。「楽しみにして過ごすプロセス」が実際のデートより重い、というのが、女性脳の不思議なところ。実際のデートが延期になっても、「いいよ、大丈夫。夏本番のビールはもっと美味しいし♪」なんて軽やかに許してくれる。

ふたつ目は、記念日の当日、来し方を語り合い、ねぎらいのことばをかけてあげること。派手なお祝いでなくても、「ああいうこともあったね、こういうこともあったね。いつも傍にいてくれてありがとう」と伝えよう。周年記念のときには、「きみの味噌汁を飲むのも30年になるね。おふくろのそれよりずっと長いんだな」なんて、しみじみ言ってみて。

来し方をともに語り合ってくれる男性を、女性は、どんなに愛しいと思うかわからない。記念日は、その効果を1000倍にするポイント加算デーなのである。利用しない手はない。

関連書籍

黒川伊保子『妻語を学ぶ』

アドバイスしただけなのに「もういい! 」と逆上される、「仕事と私(家族)、どっちが大事なの!?」とからまれる……。男性にとって永遠の謎である女の不機嫌は18種類に分類でき、そのすべてに対処法がある。そもそも男女のコミュニケーションギャップの多くが、男女脳の相違に起因している。共感を求める女性脳を理解して、優しいひと言をかけられれば、一発で妻の機嫌はよくなる、はず。本書は、人工知能研究者が脳科学の見地からすぐに実践できる具体例を示した究極の指南書。

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黒川伊保子

1959年生まれ。(株)富士通ソーシアルサイエンスラボラトリにて人工知能(AI)の研究開発に従事した後、2003年に(株)感性リサーチを設立。脳機能論とAIの集大成による語感分析法を開発し、マーケティング分野に新境地を開いた、感性分析の第一人者。また、その過程で性、年代によって異なる脳の性質を研究対象とし、日常に寄り添った男女脳論を展開している。著書多数。

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