「何もわかってない!」と責められる、「もういい!」と突然キレられる、急に不機嫌になって口を利いてくれない……。男性にとって永遠の謎ともいえる「女性の不機嫌」。この謎を脳科学の観点から解き明かしてくれるのが、人工知能研究者、黒川伊保子さんの『妻語を学ぶ』です。この本に書かれていることを実践すれば、奥さんや彼女の機嫌も一発でよくなるかも? そんなとっておきの処方箋をいくつかご紹介しましょう。
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女性の脳は「プロセス指向」
「どうせ私なんか、どうだっていいと思ってるんでしょ?」
記念日を忘れたことで、このセリフを投げつけられた男性もいるのではないだろうか。男性脳と女性脳では、記念日の意味が違う。そのことは、肝に銘じておいたほうがいい。
女性脳は、プロセス指向型。「成果」よりも「ここまでの道のり」に対して、意識が集中する脳なのである。
たとえば、ビジネスで客先とのトラブルが生じたとき。女性脳の中では、トラブルの状況よりも、ここまでの客先とのやり取りや、そこで生じていた軋みがクローズアップされる。したがって、「状況把握」や「当面の対応」よりも先に「そもそもの人間関係の歪み」に気づくのだ。
それも大事なことだが、上司としては、トラブルの状況を客観的かつ端的に伝えてほしいのに、「そもそも3カ月前に、先方の部長がこう言ったんですよ……」と延々と経緯を話されて辟易することがある。男性上司には愚痴や言い訳にしか聞こえないのだが、これは「経緯の中に潜んでいる、本質的な問題をちゃんと伝えたい」という女性の誠実さの表れだ。
女性上司たちは、テンパって経緯を語り出す女性部下には、「わかった。経緯は後で聞くから、まずは状況把握からいこうか」と声をかけてやる。男性上司の皆さまも、これを覚えておいてくださいね。
さて、記念日に関しても、男性脳は記号論的かつ成果主義的だ。結婚記念日も家族や恋人の誕生日も、「何かイベントをしなきゃいけない日」にすぎない。「10周年」「50周年」のような節目には、それなりに「ここまできたか」という思いがあるものの、7年とか13年くらいの半端な記念日は、とくに感慨はないはず。
しかし、プロセス指向型の女性脳にとって、記念日は来し方を思う大事な日。結婚13年目とは、13年分の思い出を紡ぐ日なのである。「13年か~。そういえば、あのとき、あ~だったなぁ、このときは、こ~だったし」なんてね。
このとき、女性脳は「感情」で思い出を紡ぐ。今と同じ感情とともにある記憶を、芋づる式に引き出してくるのだ。ここが、男性にとって、とてもとても大事なことなのである!
結婚記念日に、夫が自分を大切にしてくれて、満ち足りた気持ちになったら、「これまでの幸せな思い出」を紡ぐことになる。しかし、逆に夫が自分をないがしろにしたら、「これまでのムカついた、やりきれない思い出」を紡ぐことになる。
男と女の暮らしなんて、幸せを数えても、不幸せを数えても、どちらもたっぷりあるものだ。思いっきり思い出紡ぎモードに入っている記念日に、優しい声をかけただけで、この結婚が「とても幸せな結婚」に思えてくる。反対に、ちょっとないがしろにしただけで、この結婚が「とても不幸な結婚」に見えてくる。
天国と地獄に分かれるのだ。これからは、とても怖くて記念日を忘れられないでしょう?
記念日を効果的に過ごす2つのコツ
ここで、記念日を効果的に過ごす方法を伝授しよう。コツはふたつある。
ひとつ目は、前々から声をかけておくこと。2~3週間前に「今年の結婚記念日は土曜日だね。美味しいワインでも飲みにいこうか」なんて声をかけておけば、記念日までの間、女性はそのことばを何度も思い出して、ちょっと嬉しい気分になっている。どの服を着ていこうか、靴はどうしようか、美容院にはいつ行こうか……などと考えて、その度に、夫が自分を大切に思ってくれているようで嬉しい。
近未来の記念日に言及するたったひと言が、記念日へのプロセスを作り出すのだ。それが、プロセスを味わい尽くす女性脳に、絶大な効果をもたらすのである。
これは、普段のデートにも使える。「梅雨が明けたら、美味しいビールを飲みにいこう」「寒くなったら、ちゃんこを食べにいこう」とかね。梅雨の間中ずっと楽しみにしてきた女性脳は、梅雨明けの夕焼けを見ながらビールをひと口飲んだだけで、至福の境地に至る。
「そんなに楽しみにされたら、万が一約束が果たせなかったときが怖い」という男性も多いのだが、それがそうでもないのである。「楽しみにして過ごすプロセス」が実際のデートより重い、というのが、女性脳の不思議なところ。実際のデートが延期になっても、「いいよ、大丈夫。夏本番のビールはもっと美味しいし♪」なんて軽やかに許してくれる。
ふたつ目は、記念日の当日、来し方を語り合い、ねぎらいのことばをかけてあげること。派手なお祝いでなくても、「ああいうこともあったね、こういうこともあったね。いつも傍にいてくれてありがとう」と伝えよう。周年記念のときには、「きみの味噌汁を飲むのも30年になるね。おふくろのそれよりずっと長いんだな」なんて、しみじみ言ってみて。
来し方をともに語り合ってくれる男性を、女性は、どんなに愛しいと思うかわからない。記念日は、その効果を1000倍にするポイント加算デーなのである。利用しない手はない。