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可愛い戦争から離脱します

2020.01.29 公開 ポスト

「ブス」と言ってくる人を見返す必要はない整形アイドル轟ちゃん

整形のネガティブな面も含めてリアルに発信する活動をしているYouTuber・整形アイドル轟ちゃんが、初めての自己啓発エッセイ『可愛い戦争から離脱します』を発売しました。チケットは即完売、号泣する人が続出した本のサイン会を終えた轟ちゃんに、「結局、顔がすべてじゃん」と絶望する人たちへ届けたい思いを伺います。

インタビュー・文 ひらりさ

*   *   *

——本の刊行から1ヶ月。サイン会での皆さんの反響はいかがでしたか?

 可愛い戦争離脱宣言の3か条がすごく響きましたっていう声や女性の方だけでなく男性の方たちにも読んで頂けるのがすごく嬉しかったです。皆さん泣きながら感想を伝えてくださって、この本を書いてよかったと思いました。

(可愛い戦争離脱宣言:1.誰かに認められることを行動の目的にしない 2.自分が自分の一番の理解者 3.1人で幸福を感じる努力を惜しまない)

——今回の本は、1年かけて執筆したと聞きました。36万以上のフォロワーがいるYoutuberとして忙しく活動するなかで、本を書くのは大変だったのでは?

 Youtuberをやっているからこそ、本を作りたくなったんです。

みんな、動画って、寝る前とか、ダラダラしたい時に見るじゃないですか。

「整形女あるある」のようなネタを楽しんでもらえるのもうれしいんですけど、「自分の価値を守り抜く方法」や「幸せを感じる方法を惜しまない」というような、真面目な話を伝えるのには、あまり向いていない媒体だったんです。
 

——見た目へのコンプレックスにとどまらない、いろいろな「戦争」からの離脱の仕方は、確かに、本というフォーマットだからこそじっくり入ってくるなと思いました。『可愛い戦争から離脱します』というタイトルもグッときます。

 最初は全然違う、強めのタイトルで考えていました。『私をぶん殴って生かすことに決めた』とか『涙の一撃をぶちかませ!』とか、そういうニュアンスでした。
 

——かなりパワフルですね。

 私がYoutuberになったのは、200万円の借金をして鼻を整形したときなんです。仕事も恋愛もうまくいってなかったし、安値でやった鼻整形で失敗して、全部がどん底の時期に、鼻の再整形のダウンタイムの様子をYouTubeで配信したんですね。

だから当初は、崖っぷちで出した一撃で起死回生したよという話にフォーカスしたタイトルを考えていたのですが、後から考えると、何かしっくりこなくて。5時間かけて打ち合わせして、最後の最後、もう一個だけ考えましょうとなったときに絞り出したのが『可愛い戦争から離脱します』でした。
 

——より多くの女性に響くタイトルだと思います。

 みんなに自己投影して読んでもらいたいな、とは思って書いた本なので、それが伝わってるといいですね。だから、あえて自分の顔写真は載せませんでした。

表紙の女の子も「これ、轟ちゃん?」と言われるけど、私ではなくて、「可愛い戦争」にかかわっている全ての女の子の象徴のようなイメージです。

先輩Youtuberさんたちが自伝本はたくさん出されているし、私は波乱万丈な人生を送ってきたわけでもない。

だからこそ、「可愛い」の価値観に悩んだり、生きにくさを感じていたころの自分に向けて書いてみようと思いました。

「ブス」という悪口は稚拙で中身がない

——最初書きたかったことと、実際に書いたことでは、違いがありますか?

 世の中の言う「可愛い」や「ブス」に惑わされなくていいよ、というメッセージは一貫してますね。

自分でも意外だったのが、「もっと気持ちを楽にしていいよ」と伝えたくなったことですね。

私、かなり頑固な人間なので、当初は「こうやって考えるべき」とか「惑わされちゃダメ」というガツガツしたメッセージになっちゃうかなと思っていたんですが、書いているうちに、どんな人にも自分を否定しないでほしいし、いろいろな受け取り方をしてほしいという思いが強くなったんです。
 

——まさにタイトルの変更にあわせた、心境の変化があったと。「はじめに」もすごく温かいなと思いました。「戦いを楽しんでいるならそのままで。苦しいなら今すぐ離脱せよ」とか、本当に、じっくり考えながら言葉を選んだのだなと感じる文章ばかりでした。

 ありがとうございます。昔から、ものを考えるのが好きでした。「もやもやしてるなあ。でもなんかよくわかんないや」って思いながら、一人でずっと体育座りしてて(笑)。

でも深く考えられるようになったのは、Youtuberの活動をはじめてからですね。否定的なコメントをたくさんもらうようになり、そのストレスを自分なりに片付けて受け流すために、もっとしっかり考えて、解釈するようになりました。
 

——アンチコメントに対しては「反論文」を考える、という話が本でもありました。

 文章を書いたり読んだりするのも元々好きで、大学では古典の勉強をしていました。ただ、人に自分の気持ちや考えを伝えるのは、すごく苦手でしたね。小さい頃は嫌いな上に苦手だったんですが、今は好きだけど苦手、かな。

声優の養成所に通っていたときも、人前に出たら声が震えちゃってダメで。言葉は頭の中にあるのに、それが外に出せないんです。だから今も顔が赤くなるし、緊張しちゃうんですけど、Youtuberになってからは、苦手でも人前に立たざるを得ない状況が続いていて、おかげさまで慣れてきました。
 

——最初に動画を撮ったとき、それをYouTubeにアップロードすることに抵抗はなかったですか?

 不思議となかったですね。衝動的にビデオカメラを買って、衝動的に撮って。後から嫌になったら上げなくていいやくらいのノリだったんですけど、撮り始めちゃったら「もったいない」という気持ちでいっぱいでした(笑)。

動画って、鮮度もあるから、古くならないうちに上げちゃわないと! って始まりました。こんなに続けるとは思ってなかったけど、「楽しくなるかも!」ってワクワク感はありました。
 

——動画の手応えを感じる指標はなんですか? 再生数とかいいねの数ですか?

 最初に喜びを感じたのはコメント数ですね。もともと、整形について話せる人や仲間がほしいと思っていたので、コメントが来たのが本当に嬉しかったんです。そもそも、最初は動画のインパクトの割に再生数も少なかったので。

だからほとんど気にしてなかったし、一層コメントがありがたかったんです。

今でも毎日全部目を通すようにしてます。
 

——動画を一つ作るのに、どれくらいの時間がかかるんですか?

 自分ひとりのものは1時間程度で済むことが多いです。長くても5時間くらいですね。

他のYoutuberさんとのコラボ動画だと時間がかかりますが、自分一人なら、最長でも5時間ですね。

あんまりいい機材を持ってないので、バッテリーが切れないうちに終わらせるよう頑張ってます(笑)。
 

——本の中に「他人からの慰めを待たず、自分を可愛がりまくる贅沢」というのがありましたが、最近ハマっている贅沢はありますか?

 シャインマスカットです(笑) 前はお金がなくて、安い種無しブドウばかり食べてました。

でもようやくシャインマスカットを買えるようになって。動画の編集作業してるときに、シャインマスカットとかイチゴとか、フルーツ食べてると「貴族!」って気分が上がります。
 

——コーディネイトやベストコスメ紹介など、幅広いネタで動画を発信していますが、やはり軸となっているのは「整形」。伝え方がとても難しいジャンルだと思うのですが、心がけていることはありますか?

 絶対「おすすめしない」ことですね。私自身は整形に1000万円以上お金をかけていますが、整形をすることがいいものことだよ、とは絶対に言わないようにしています。やっぱりリスクがあるものなので。

「この施術すごくよかったです。おすすめです」じゃなくて、「私にとってよかったです」という言い方を徹底しています。万人に良い施術は絶対にないですから。
 

——やはり視聴しているのは、整形したい方なんでしょうか?

 そんなことないんですよ。「轟ちゃんの動画で、こういう世界を知りました」って声も聞きますね。だからこそ、いろいろなテーマで動画を上げるように工夫しています。

自己評価がすべて

——本の中で、轟ちゃんにとっての整形は「マイナスをゼロにする」行為だと書いていましたよね。整形を続けるなかで、「ゼロになったな」と思った瞬間はいつでしたか?

 うーん。ゼロだと思えている時間はだいぶ長くなったのですが、まだゼロじゃないって思ってしまう危険性もあるし、ゆらいでいる部分もあるんです。ただ、「この先整形しなくても大丈夫かもしれないな」と初めて思ったのは、一度した整形を戻すことにしたときですね。

部分切開法で二重のベースをつくったうえで、より幅広の二重を埋没法という施術で形成していたんですが、その埋没法の糸を取ったんです。くっきり目立つ二重だったのが、今くらいの奥二重に自然となりました。最初のほうはしばらく元のままだったんですが、無意識に「戻れ戻れ」と思っている自分がいて。そしてやっと戻ったときに、「あ、これがいいな」と思えたんですよ。

解放されてきたんだなあと安心しました。
 

——轟ちゃん自身も、まだ解放の途上にあるんですね。2020年の抱負はありますか?

 まずはこの本が話題になってほしいです。そして欲を言えば、映像化したいんです。この本を原案に映画が撮れたら、すごく楽しいだろうな。Youtuberとして自分で自分を撮ることを3年やってきて、ある程度やり尽くした気持ちもあるので、そこから飛びだしたいなと思ってます。

あとは、整形について悩んでいる子向けのサービスを作れないかなあと構想しています。活動初期は、整形したい子の相談に個別に答えることができたんですが、今は数が多すぎて、一人ひとりとお話するのが難しいんですね。でも引き続き悩んでいる子がたくさんいるので。

それに、整形を考えている人が安心してカウンセリングや手術を受けられるような、クリニックのプロデュースもしたいなと思っています。
 

——「可愛い」の戦場を降りたいのに降りられない人へ、メッセージをお願いします。

 みんな、もうちょっと自己中になってもいいと思います。「可愛くないから」を理由にやりたいことを我慢している人があまりにも多い。私も整形前はバカにされるのが怖くて、あまりメイクを楽しめていなかったんですよ。

最近やっといろんなコスメを買おうと思うようになって、今はハイライトで肌にツヤをのせることにハマっています。整形するまでは、化粧は姿かたちを変えるものでしかなかった。

ハイライトというものに興味を持てたのは、心に余裕が出てきたからなんです。周りの視線を気にせず、自分の欲望に忠実に生きられるようになったのは、私の場合、整形してからでした。
 

——本の中では、「幸せ」や「自己肯定感」についての話も印象的でした。轟ちゃんの思う「幸せ」とはなんですか?

 自分が幸せと感じられたら、幸せなんだと思います。胸張って「幸せです」と言えてる人、あんまりいないじゃないですか。それが言える自信があれば、周囲の声も響かなくなってくるはず。まだ響いてしまっている人には、この本を読んでほしい。みんな、自分の生活を頑張って、自分で自分に納得していってほしいと思います。

 

整形アイドル轟ちゃん『可愛い戦争から離脱します』

結局、顔がすべてじゃんと絶望する人たちへ。自分の価値を守り抜く強さを手に入れる方法。

Chapter 1   顔ですべてが決まることもある

Chapter 2   絶望を飼って生きる

Chpater 3   恋愛はオムライスの上のパセリ

Chapter 4    幸せの予約をぶん取る


 

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