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社交不安障害

2020.02.03 公開 ポスト

不安な気持ちが消えていく「思考記録」のすごい効果岡田尊司

人前で話すのが苦手、緊張してあがってしまう、社交の場を避けがち……。10人に1人が抱えているという「社交不安障害」。心当たりのある方も多いのではないでしょうか? 精神科医、岡田尊司さんの『社交不安障害』は、このやっかいなシンドロームの克服法を優しく教えてくれる本。自分を縛る不安の正体を知り、有効なトレーニングを積めば、改善は十分可能です! そんな本書の一部をご紹介します。

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不安と戦わないこと

認知療法で一般に行われるのは、自分が過剰に不安がることには根拠がないと反証し、笑われることを恐れる思考が不合理で、現実的でないことを理解させ、その思い込みを修正することである。

(写真:iStock.com/ulkas)

この方法は、思い込みがそれほど強くない場合にはある程度有効だが、笑われたり怒られたりする恐怖にとりつかれているような人では、理屈ではわかっても、怖い気持ちは薄らがず、実際行動するとなると、やっぱり無理だということになってしまう。

その不安には根拠がないと、いくら反証しても、さらにその反証が出てきてしまうし、現実に不安がなくならないという事実を変えることはできないのだ。

無理矢理打ち消そうとする自分と、不安を感じてしまう現実の自分との間で板挟みとなり、余計に追い詰められるという場合もある。理屈や根拠をいくら挙げたところで、不合理な恐怖というものを、完全にねじ伏せることは至難の業なのだ。

実は、もっと有効で、そうした抵抗を乗り越えられる方法がある。それは、不安と戦わず、そこを超越してしまうということだ。言い換えるなら、不安になるかならないかで頑張らないということである。うまくいくかいかないか、笑いものになるかならないか、ということでは戦わないのだ。

不安を感じることは自然な反応であり、必要な反応である。われわれは不安を感じるから慎重に行動し、危険を予知することもできる。不安を感じない人もいるが、そうしたタイプは、反社会性パーソナリティ障害(サイコパスという言葉が使われることがあるが、差別用語なので、精神医学では用いられない。なぜか、脳科学者たちの一部がこの言葉を用いるのを好む)と呼ばれる。

反社会性パーソナリティ障害でない人はみな、不安を感じるもので、不安を感じるのは、あなたが悪いわけでも、どうにかしなければならない問題でもないということだ。

不安にとらわれすぎないために大切なことは、不安を感じてしまうかどうかではなく、違うところに目を向けることだ。不安になろうがなるまいが、そんなことはどうでもよく、肝心なことは、自分が伝えたいと思っていることを誠心誠意伝えることだと、自分の使命や思いに重きを置くのである。

うまくいこうがいくまいが、笑われようが喝采されようが、聴衆の反応ではなく、自分が伝えたい思いの方に集中する。この考え方を身につけることができると、人前で話すといった場面で、たとえ緊張しても、うまくスピーチやプレゼンをやりこなせるようになる

「思考記録」をつけよう

不安を超越する思考法を身につけるためには、思考記録をつけながら、不安になった場面で、その都度、練習を積むことも有効だ。

(写真:iStock.com/Nattakorn Maneerat)

社交不安に限らず、あらゆる感情や行動をコントロールできるようになるうえでとても重要なことは、自分に起きている反応(感情や行動)を認識するとともに、それを引き起こしている思考(認知)にも気づき、それらを客観視できるようになることだ。そのための訓練としては、不安な状況やそれを回避してしまう状況が起きたときに、どういう思考が働いてそのように反応したのかを、その都度記録することである。

対人場面や社交場面で、あるいは、それを予期した際に不安や回避が起きたとき、次に示すような「思考記録・練習表」に記入してみよう。

まず、「日時」「状況・反応」を記録する。次にどんな思考が働いて不安になっているのかを、「不安を引き起こす思考」の欄に書く。そして、その時点での「不安レベル」も記入する。次に、「不安を超越する思考」「根拠ある合理的思考」を考えて、書いてみる。最後に、不安レベルがどのように変化したかを書く。

不安を超越する思考とは、不安になるとかならないとか、うまくいくとかいかないといったことの成否ではなく、もっと自分が大切にすることに価値を置く考え方だ。

「不安になろうがなるまいが、~しよう」「うまくいこうがいくまいが、~しよう」「何が起きようが、~するだけだ」という形で語られる。

この考え方によって、不安になるかならないかを超越することができる。成功か失敗かというとらわれから、自由になることができるのだ。

そして、自分が本当に大切にする信念や方針を語り、そこを大事にする。

根拠ある合理的思考とは、自分が不安に思っていることが、現実的ではないことを、根拠をもって打ち消したり、根拠を挙げて、自信を裏付ける考え方である。

「~なので、心配する必要はない」「~なので、自信をもって~するだけだ」という形で語られる。

関連書籍

岡田尊司『社交不安障害 理解と改善のためのプログラム』

人前で話すのが苦手、緊張して上がってしまう、自然に人付き合いができず、社交をつい避けてしまうという状態は「社交不安障害」と呼ばれる。もっとも頻度の高い精神的な困りごとの一つで、有病率は一割を超える。やっかいなのは、社交不安障害にともなう自信低下を生まれつきの性格だと思い込み、諦めてしまうこと。しかし、自分を縛る不安の正体を知って、有効なトレーニングを積めば、改善は十分可能だ。実際にカウンセリングセンターで使われるプログラムを紹介しながら、克服の方法を実践解説。考え方一つで、人生は大きく変わる!

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社交不安障害

人前で話すのが苦手、緊張してあがってしまう、社交の場を避けがち……。10人に1人が抱えているという「社交不安障害」。心当たりのある方も多いのではないでしょうか? 精神科医、岡田尊司さんの『社交不安障害』は、このやっかいなシンドロームの克服法を優しく教えてくれる本。自分を縛る不安の正体を知り、有効なトレーニングを積めば、改善は十分可能です! そんな本書の一部をご紹介します。

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岡田尊司

1960年、香川県生まれ。精神科医、医学博士。東京大学哲学科中退。京都大学医学部卒。同大学院高次脳科学講座神経生物学教室、脳病態生理学講座精神医 学教室にて研究に従事。現在、京都医療少年院勤務、山形大学客員教授。パーソナリティ障害治療の最前線に立ち、臨床医として若者の心の危機に向かい合う。 

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