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社交不安障害

2020.02.04 公開 ポスト

自分の弱点をさらけ出すのが「社交不安障害」の特効薬岡田尊司

人前で話すのが苦手、緊張してあがってしまう、社交の場を避けがち……。10人に1人が抱えているという「社交不安障害」。心当たりのある方も多いのではないでしょうか? 精神科医、岡田尊司さんの『社交不安障害』は、このやっかいなシンドロームの克服法を優しく教えてくれる本。自分を縛る不安の正体を知り、有効なトレーニングを積めば、改善は十分可能です! そんな本書の一部をご紹介します。

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「弱い自分」に向き合おう

視線に対する過敏性や対人不安の根底に、自分の不完全さが暴かれることへの恐怖がひそんでいる場合、どうすれば、その恐怖を克服できるだろうか。

(写真:iStock.com/Gilitukha)

一つの方法は、不完全さを積極的に自分からさらけ出してしまうというものだ。たとえば、緊張して、手が震えて困るというとき、それを隠そうとすると、そのことを気づかれてしまうという恥の意識が生じる。

しかし、自分から「すごく緊張していて、いまもマイクをもっている手がこんなに震えています。この前なんか、震えすぎて、手元が狂って、マイクを落っことしてしまいました。そしたら、すごい音がして。きょうはマイクだけは落とさないように、しっかり握っていようと覚悟を決めて参りました」という具合に、緊張していることをオープンにしてしまえば、案外それで笑いを取ったり、親しみを感じてもらったりして、いいつかみにできる。

こんなふうに、なんであれ、自分が隠したいと思っていることを、逆手にとってあっけらかんと話してしまうのだ。すると、大抵、聴衆は身を乗り出して聴いてくれる。それは本音の話であり、建前を繕った話よりずっと面白いからだ。

「なぜこんなに緊張するのかと考えたら、私、人の視線が怖くて。正直言って、皆さんの目もすごく怖いです。意地悪な目でじろじろ見られたら、私のだめなところを全部知られてしまうように思ってしまうんです。そんな真剣な目で見ないで、もっと優しい目で見てくださいね」

こうして自分から弱点をさらけ出した話ができるようになるには、自分自身と向き合い、自分を客観視することが必要だし、自己開示する練習を積むことが求められる

カウンセリングを受けたり、文章に書いて自分のことを表現したりすることは、話すのを避けていたことを言葉にする練習をしているとも言えるのだ。

いままで隠してきたことを気軽に話し、他者と共有できるようになったとき、自分が隠したがってきたものは別に恥ずかしいことでも、自分が不完全な人間である証拠でもなく、むしろ、それをきちんと言葉にできた時点で、自分の弱さに向き合えるだけの強さを手に入れたということに気づくだろう。

・ワーク  自分について、人に知られたくないと思っていることや、恥ずかしいと思っていること、隠していることがあれば、それについて書いてみましょう

最近のことでも結構ですし、子どもの頃のことや以前の出来事でも結構です。

・ワーク  人と接しているときや人前で話をしているとき、自分のみっともない面や醜い面、欠点など、気づかれるといやだなと思うことは何ですか

それについて、聞き手に語りかけるつもりで書いてみてください。

「罪の意識」を捨てる

不完全さが暴かれるだけでも恥ずかしいが、その不完全さに罪の意識(罪悪感)が混じるとき、恥ずかしさはいっそう強力な感情となる

(写真:iStock.com/Koldunova_Anna)

罪の意識とは何だろうか。そこには、善と悪という観念が関係している。善とは良い行いをすることであり、悪とは禁じられている行いに手を染めることだ。罪の意識を感じるとき、自分はしてはいけない行いをしてしまったと感じている。

善と悪の観念が育まれるのは、親や学校、宗教的な場での教えによってである。良いところは褒められるが、悪いところは厳しく叱られるという二面性の強い躾や教育を受けると、悪いことはあってはいけないこととなり、もしそういうことをしてしまった場合には、知られないように隠さなければならないという防衛反応を生じることになる。

逆に、おおらかに、良いところも悪いところもありのままに受け止められて育った人では、善悪の二面性にそれほどとらわれない。罪の意識にさいなまれることも少なく、隠し事もせず、心をオープンにしやすい。

罪の意識を感じやすい人は二面性を抱えやすく、またそれゆえに、自分の本心を隠さなければならないので、対人緊張が強まりやすい。

それゆえ罪悪感へのとらわれを克服すると、もっとオープンにありのままの自分を出しやすくなり、その結果、対人緊張を和らげることにもつながる。

・ワーク  あなたは罪悪感にとらわれやすい方ですか、あまりとらわれない方ですか。どんなときに、とらわれやすいですか。具体的な状況を一つお書きください。

また、あまりとらわれないという場合も、そういう気持ちを抑圧して、考えないようにしている場合があります。そういう気持ちにとらわれていた時期が過去にありますか。あればそのときのことを書いてください。

・ワーク  あなたの罪悪感は、どんな教えや体験に由来しているでしょうか

また、罪悪感と二面性、自分の本音をオープンに語れない傾向の関係について、何か気づいたことや思い当たることがあれば、お書きください。

関連書籍

岡田尊司『社交不安障害 理解と改善のためのプログラム』

人前で話すのが苦手、緊張して上がってしまう、自然に人付き合いができず、社交をつい避けてしまうという状態は「社交不安障害」と呼ばれる。もっとも頻度の高い精神的な困りごとの一つで、有病率は一割を超える。やっかいなのは、社交不安障害にともなう自信低下を生まれつきの性格だと思い込み、諦めてしまうこと。しかし、自分を縛る不安の正体を知って、有効なトレーニングを積めば、改善は十分可能だ。実際にカウンセリングセンターで使われるプログラムを紹介しながら、克服の方法を実践解説。考え方一つで、人生は大きく変わる!

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社交不安障害

人前で話すのが苦手、緊張してあがってしまう、社交の場を避けがち……。10人に1人が抱えているという「社交不安障害」。心当たりのある方も多いのではないでしょうか? 精神科医、岡田尊司さんの『社交不安障害』は、このやっかいなシンドロームの克服法を優しく教えてくれる本。自分を縛る不安の正体を知り、有効なトレーニングを積めば、改善は十分可能です! そんな本書の一部をご紹介します。

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岡田尊司

1960年、香川県生まれ。精神科医、医学博士。東京大学哲学科中退。京都大学医学部卒。同大学院高次脳科学講座神経生物学教室、脳病態生理学講座精神医 学教室にて研究に従事。現在、京都医療少年院勤務、山形大学客員教授。パーソナリティ障害治療の最前線に立ち、臨床医として若者の心の危機に向かい合う。 

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