「何もわかってない!」と責められる、「もういい!」と突然キレられる、急に不機嫌になって口を利いてくれない……。男性にとって永遠の謎ともいえる「女性の不機嫌」。この謎を脳科学の観点から解き明かしてくれるのが、人工知能研究者、黒川伊保子さんの『妻語を学ぶ』です。この本に書かれていることを実践すれば、奥さんや彼女の機嫌も一発でよくなるかも? そんなとっておきの処方箋をいくつかご紹介しましょう。
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アドバイスより「共感」を
女性脳は、何よりも共感を求めている。話を聞いてくれて、共感さえしてくれればOK。男に問題解決なんか期待してはいない。
そのことに気づいている男性は多い。しかし、その意味の深さを、本当に知っている男性はあまりいない。
だから、男同士の飲み会では「女なんてさぁ、共感してやりゃあいいんだよ」なんてうそぶいているくせに、実際には、妻の話に、つい問題解決をかましてしまうのである。たとえば、PTAで起こったややこしいあれこれを訴えてくる妻に、「嫌ならやめればいいじゃないか」みたいにね。
女性脳は、共感してもらうことで、ストレスが減衰する。なぜならば、共感してもらうことで、自分と子どもの生存可能性が上がるから。共感こそが、最大の問題解決なのである。
私たちは、哺乳類である。人類には2年以上にも及ぶ授乳期間があり、そのうえ、最初の1年は子どもは歩けない。そんな人類の女性たちは、オオカミのように荒野で単独の子育てをすることはできない。体調を崩しておっぱいが出なくなったら、もうおしまい。2年以上の長きにわたって授乳する身に、それではリスクが高すぎる。
というわけで、太古の昔から、女同士の密なコミュニケーションの中でうまくやってこられた女性だけが、無事に子どもを育て上げてきたのである。21世紀の女性脳は、その進化の果てにある。
そんな女性にとって、共感してもらうことは、最強である。戦いに勝って恐れられ、遠巻きにされるより、「わかるわ、あなたの気持ち」「わかるわ、あなたの事情。お子さん、大丈夫?」と言ってもらうほうが、子どもは守られる。気にかけてもらえて、体調の変化にも気づいてもらえる。
だから、女性にとって共感は、戦いに勝つことより、問題解決より大切なこと。共感欲求は、男性の想像をはるかに超えて強く、その好感度が高いのである。共感さえしてもらえれば、ほっとしてストレスが減衰し、明日からもまた頑張れる。
したがって、PTAで起こったあれこれを訴えてきたときの理想の答えは、「PTAって、ホント大変なところだな。任せっぱなしにして、ごめんな。しかし、きみみたいなデキる女がいなかったら、回らないだろう」みたいな感じ。
「公平な評価」はいらない
もちろん、この国の夫のほとんどが、こんなセリフは言えていない。真逆の批判、「嫌ならやめればいいじゃないか。そんな愚痴言うくらいなら、なんで役員なんか引き受けたんだ」なんて返してしまう男性の、いかに多いことか……。当然、女はキレる。
男性は逆ギレと呼ぶが、逆なんかじゃない、正当な怒りである。「ねぎらいと共感」をあげなければいけない局面で、無駄な矢を放ってくるのだから。
というわけで、「アドバイスしていたら、逆ギレされた」は、「共感とねぎらい」をあげ損ねた証拠。これを挽回するには、「きみの気持ちは痛いほどわかるよ」くらいは言わないとね。
女性が人間関係のトラブルや愚痴を語り始めたら、「そりゃあ、ひどいね」「きみは、正しい」「よくわかる、その気持ち」と共感のあいづちを打ちながら、ひとしきり話を聞いてあげるのがマナーなのである。
間違っても、いきなり「相手の言うことにも一理ある」「きみも言い方が悪いよ」なんて公平な評価をしてはいけない。女性がパートナーに期待しているのは、中立の評価者なんかじゃない。えこ贔屓して「よしよし」してくれることなんだから。
そして、誰かが思う存分えこ贔屓してくれたら、「私も、悪かったかも」「こうしてあげればよかったかも」という公平な気持ちになるのが、カワイイ女性脳なのである。
重ねて言うが、女性との対話はそれが「相談」のように聞こえても、「まずは共感、次に共感、そして最後にアドバイス」が基本のリズムだ。
問題を抱え、不安や不満を感じ、共感を期待している女性脳にとって、「公平にジャッジし、有用なアドバイスをする」ということは、「ただ共感してほしいのに、ことごとく私を否定する」ということにほかならない。このため、女性は「あなたったら、いっつもそう! 私の言うことなんかちっとも聞いてくれない」とキレることになってしまう。
「アドバイスしていたら、逆ギレされた」ら、明らかに共感不足である。立ち止まって、相手の気持ちに共感するところからやり直さなければ。「きみの気持ちは、痛いほどわかる」と、すっと共感モードに入ってください。
親切のつもりが仇になり、せっかくの親身なアドバイスに逆ギレされる……男性にとっては、あまりにも理不尽なこの怒り。しかし、女性にも女性脳の事情があるのである。