英語がしゃべれるようになりたいけど、この歳では今さらもう遅い……。そんなふうにあきらめていませんか? しかし、TOEICテスト満点を5回達成した経験を持つミステリ作家、清涼院流水さんによると、英語を習得するなら時間とお金に余裕があり、経験豊富な50歳からがベストだそう。著書『50歳から始める英語』には、その独自の勉強法が詰まっています。中身を少しだけお見せしましょう。
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英単語の正しい覚え方
英単語と英文法の本を最低1冊ずつ(複数冊ずつでもOKです)、すぐに参照できるところに置き、毎日の学習記録を手帳やスマホなどにつける準備ができたら、いよいよ英語学習スタートとなります。
英語学習というのは、つまるところ、「おぼえている英単語を増やし続け、きちんと理解できていない英文法を減らし続ける」ということに尽きます。英会話にしても、聴いたり話したりする能力のベースは、英単語と英文法だからです。
ヤル気にあふれた真剣な英語学習者なのに、なかなか結果を出せない方は、「英単語と英文法のおぼえ方を知らない」ことが原因になっているケースが、非常に多くあります。
そもそも、「英単語をおぼえる」というのは、どういう作業でしょうか?
たとえば、英単語の本に「memorize=記憶する」と書かれていたとして、「ふーん、メモライズが『記憶する』という意味の単語なのか。知らなかった。次に見た時に思い出せるかな。どうだろう。じゃあ、次の単語」と、すぐ次の単語に移ってしまっては、“おぼえた”ことにはなりません。それは“見ただけ”という状態です。
筆者の考える「英単語をおぼえた状態」というのは、「memorize」という綴りを見た瞬間、その音と意味が1秒以内に浮かび、同時に、「記憶する」という日本語からも「memorize」という綴りと音を1秒以内に思い浮かべられるようになった状態を示します。
もちろん、初めて見た瞬間、完璧に体得できる人などいません。「memorize」という綴りを見ながら(発音記号や意味は隠して)、その発音と意味を1秒以内に思い浮かべられるまで、できれば声に出して(声を出せない場所なら脳内で)、「メモライズ……記憶する……メモライズ……記憶する」と、くり返すのです。最初は数秒かかったとしても、何度もくり返すうちに、必ず1秒以内にできるようになります。
手と口を動かして覚える
声で(あるいは脳内で)くり返すだけでは、なかなかおぼえられない場合には、「memorize」の綴りを何度も紙に書きながら(あるいはスマホなどに綴りを打ち込みながら)、そのつど「メモライズ……記憶する……メモライズ……記憶する……」と声に出すか脳内で連呼するようにすれば、よりおぼえやすくなります。
目で見て記憶しようとするだけでなく、声に出したり、手を動かしたりすることで、より深く脳に記憶を刻みつけることができるのです。
英単語の発音と意味をおぼえて終わりではなく、逆に、「記憶する」という日本語を見た時に「memorize」の綴りと「メモライズ」という発音を1秒以内に思い浮かべられるようにする。綴りをおぼえられなければ、何度も、何度でも書いてみる。ここまで仕上げて、初めて、「ひとつの英単語をおぼえた」と言えるのです。
英単語を実際に書くのには時間がかかると思いますが、珍しい綴りの単語は、実際に書かずにおぼえるのは難しいでしょう。たとえば、「宿泊施設」を意味する英単語は、カタカナで書くならアカマデイシュンという音ですが、次のどの綴りが正解でしょうか。
(A)acomodation
(B)accomodation
(C)acommodation
(D)accommodation
この例のように、同じアルファベットが連続する単語などは、たとえ意味と音を正確におぼえていても、綴りを正確に思い出せないことは珍しくありません。こうしたおぼえにくい単語を記憶するには、書きながら、「そうか。accommodationにはcとmが2個ずつあるんだな」とカラダを使って実感することが効果的です(正解はDです)。
何度おぼえても、なかなか英単語をおぼえられません、という方の多くは、実は、“そもそも1度もきちんとおぼえていない”のです。“何度もおぼえているのに”と感じるのは、単なる錯覚です。1度でもきちんとおぼえたものは、忘れにくくなります。