英語がしゃべれるようになりたいけど、この歳では今さらもう遅い……。そんなふうにあきらめていませんか? しかし、TOEICテスト満点を5回達成した経験を持つミステリ作家、清涼院流水さんによると、英語を習得するなら時間とお金に余裕があり、経験豊富な50歳からがベストだそう。著書『50歳から始める英語』には、その独自の勉強法が詰まっています。中身を少しだけお見せしましょう。
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高価な英語教材もいらない
年老いた億万長者がいちばん欲しいものは、“若さ”だと言います。年をとるにつれて、時間はお金より貴重であることを、だれもが実感します。
活動的な英語学習者に50代が多いのは、「学習にかかる時間を節約できるなら、投資は惜しまない」と考える方が多い年齢層だからでしょう。若い頃は、時間を節約するためにお金を使うのはもったいない、と考えがちですし、そもそも自由に使えるお金がふつうは限られますので、その代わりに時間をたくさん費やすことになります。
ですが、年配者は、たとえお金を余分に使ってでも買いたいのが時間です。だからこそ、英語学習を始める時に、授業料の高い英会話スクールに駆け込んだり、高額の英語教材を試されたりする方が多いのです。
栄養ドリンクは、成分が同じでも値段が高ければ高いほど売れる、という話を聞いたことがあります。人間心理として、「高いほうが効きそう」と感じてしまうのです。
英会話スクールや英語教材にも同じことが言えますが、初級者の段階では、実際には、ほとんど効果はありません。せっかくあなたが英語学習へのヤル気を燃やしても、英会話スクールや英語教材から始める、という選択肢をした時点で挫折する可能性が高くなるでしょう。
英会話スクールでは通常、外国人が講師となります。英語学習者にとっては、外国人から教わるというだけで英語力が伸びそうな気がするものですが、基礎ができていない段階で外国人と英会話をくり返しても、いっこうに成長は感じられないでしょう。
外国人というのは、日本人の英語力を一瞬で見抜き、相手のレベルに下げて会話をすることができます。英語上級者なら、ネイティヴを活用してどんどん英語力を高めることができますが、初級者の段階では、外国人との会話は成長にはつながらない場合が、ほとんどです。
宣伝にだまされないで
考えてみてください。なんの競技でも構いませんが、たとえば、あなたが柔道を始めたばかりの子供だとします(ほかのスポーツを思い浮かべても構いません)。
その子供が柔道の世界チャンピオンに何度か相手をしてもらったからと言って、はたして、どんどん強くなるでしょうか。子供のレベルに合わせて、ほとんど遊んでいるのに近い感じで適当に相手をされて終わりでしょう。ネイティヴに英語を習うことも、これと同じなのです。
また、「今度こそ、だいじょうぶ!」と、驚異の効果を謳う英語教材はたくさんありますが、かなりヒットしているような宣伝がされているのに、日本人の英語力がいっこうに高まらないのは、どうしてでしょうか。毎年のように新たな“究極のダイエット法・決定版”が登場しては消えていくのと同じことで、そんなに効果がないからなのです。
「有名な英語教材を使ってみたのですが、まったく効果が出ませんでした。どうすればいいでしょうか」という相談を受けることが、筆者は昔から多くあります。そうした英語教材で効果を出した方の話は、まったくと言って良いほど聞いたことがありませんが、効果が出なかった人の話は、嫌というほど、さんざん耳にしてきたものです。
英語教材というのは、「実際はほとんど効果が出ないのに、いかにも効果がありそうに思える」という意味で、ダイエット法に非常によく似ています。もし本当に究極の英語教材(あるいはダイエット法)が存在するのなら、それ以外は、すべて淘汰されるはずです。そうならないのは、劇的に効果のある教材など、そもそも存在しないからなのです。