1. Home
  2. 暮らし術
  3. ツキが半分
  4. 女が占い師にかけこむとき 失恋編その1

ツキが半分

2020.01.23 公開 / 2002.06.15 更新 ポスト

第1回

女が占い師にかけこむとき 失恋編その1まついなつき

占い師を職業とする人にお金を払って鑑定してもらったことは、取材以外だと4回しかない。

それは多いのだろうか? 少ないのだろうか?

そういえば「そうだ! 占いに行こう!」と決心の果てに占いに行ったことってないや、たいがいは、勢いとなりゆきで鑑定席になんとなく座っていた。

このときもそうだった。

 

なりゆきというか、酔っていた。

27歳なりたてで、3年つきあった男と別れて半年過ぎていた。

仕事はおもしろい。

遊び友達には不自由しない。

梅雨の合間の湿った空気の中を閉じた傘を一本持って、駅前の道をひとりで歩いていた。来月は友達と旅行。その前に原稿を2本入稿。濡れるのを注意しながら買ったばかりの靴を履いてきた。行動範囲は地下鉄と地下道とアーケードのある商店街を縫っていくので、傘もいらないくらいに足下は確かだ。

なにもイヤなことないじゃない。

今夜の飲み会も楽しかった。最寄り駅より、ひとつ前の商店街のある大きな駅前で降りたのは、夜の道を酔いを醒ましながら歩くのが好きだからだ。

15分後には、ひとりの部屋にたどりつき、シャワーを浴びて広げたシーツの上に横たわる。冷蔵庫の中に冷たいミネラルウォーターがあるし、深夜のテレビを少し見るのもいいな、明日の用事は夕方からだし、さしせまったしめきりもない。

 

あたしはゆっくりするのだ。

あいむはっぴーなのだ。

 

持っていた傘で地面をつっつく。

商店街はほとんどしまっていて、おそくまでやっている定食屋もさすがに店じまいをするところ。後はいくつか飲み屋の看板が、ひかえめに発光したり、小さなライトを浴びて浮かび上がっている。駅から家に向かう人の流れ、週末なので店から店へ移動する流れ、混み合ってもいなければ、寂しすぎることもない。

そこにちょうどよく乗って歩いて行けばいいのだ。

呼吸をひとつ整えて、前を見る。

そのとき、ふと見てしまった。

ここから先は会員限定のコンテンツです

無料!
今すぐ会員登録して続きを読む
会員の方はログインして続きをお楽しみください ログイン

{ この記事をシェアする }

この記事を読んだ人へのおすすめ

幻冬舎plusでできること

  • 日々更新する多彩な連載が読める!

    日々更新する
    多彩な連載が読める!

  • 専用アプリなしで電子書籍が読める!

    専用アプリなしで
    電子書籍が読める!

  • おトクなポイントが貯まる・使える!

    おトクなポイントが
    貯まる・使える!

  • 会員限定イベントに参加できる!

    会員限定イベントに
    参加できる!

  • プレゼント抽選に応募できる!

    プレゼント抽選に
    応募できる!

無料!
会員登録はこちらから
無料会員特典について詳しくはこちら
PAGETOP