30過ぎてからの失恋の話は、笑えないからしたくない。
しかも4年もつきあって、結婚式場の下見だってしたのに、失恋なんかしている場合じゃなくってよ、ヒロミ。テニスコートの中では、コートをならすローラーに一番気持ちが移入できるんです。
あたしはこのまま全てを平らに踏みつぶすッ!
ぐわんごごんぐわわりぐわわわり。
若い娘どものぴちぴちした足が目に入ると憎い気持ちに飲み込まれるから、失恋した30過ぎ女は、下を向いて歩かない。
大股で胸はって歩く。
涙がこぼれないようにむしろ少し上を向く。
なんだってあたしは、失恋すると街中をうろつくのかね?
だって部屋に戻るとひとりぼっちだから。
わーわーわーわー、
泣いた。
ずーっと泣いた。自己嫌悪で。
彼に女ができたとか、なんだか知らんが嫌われてしまったとか、そーゆーお別れなら、ええいっ、次の男ッ! とふんばらないと仕方ない(泣いた後にね)と思うけれど、原因が「自分が男と一緒にやっていけないような、ゆがんだ生まれだから」という、ヘンテコな原因をみつけてしまって、身動きとれなくなって、眠れなくなって、パニック発作を何度も起こして、精神科へ行って、薬飲んで、別れました~という失恋だったから、泣いた次に何をすればいいのかわからない。
こんなときでも仕事はしていた――。
待ち合わせの場所に出向き、テープまわしながらお話聞いて、資料集めて原稿書いて、入稿する。その後眠れないので、ぼんやり朝まで自己分析にまたはまり、気持ち悪くなって薬飲んで、倒れる。
男ともだちがごはんに誘ってくれた。
「なんだかさー、食べ物噛んで飲み込むのって、体力使う」そういったら「どうしたいの? きみはさ」というので「子ども産んで育てたい」と答えたら、あきれられた。「噛んで飲み込むのもめんどうっていう人間が、なんで子どもなんか産んで育てられるんだよ?」
そうじゃなくて……。
だったら、ちゃんと食べて体力つけなきゃね、って言って欲しかったんだけど。
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ツキが半分
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※本連載は旧Webサイト(Webマガジン幻冬舎)からの移行コンテンツです。