宗教だったけれど、占い師さんのいうことは当たった。
あの時は確かに大きな転換期の前だったのだ。あのどうしょうもない状態の日々から、3年後、私は妊娠して、その相手の人と結婚して(結婚して子どもができて、という順序ではなかった)その経緯を綴った本がベストセラーになり、生活は本当に一変してしまった。
欲しかった赤ちゃん。
そして、ずっと一緒にいてくれるという夫。
これまでも生活するほど困ったことはないが、ぼちぼちだった仕事が、本が売れたことによって、ものすごく忙しくなってしまった。
それは、本当に運命に飲み込まれた! というような激変ぶりだった。
夢にまで見た自分の子どもはかわいらしく、夫となった男はどこにも行かずいつも自分のそばにいてくれる。なにより本の印税が全く何の仕事もしなくても毎月100万単位で振り込まれてくる。雑誌のインタビュー、芸能人との対談、本の宣伝になるからとせっつかれ、カメラマンの前で微笑むことを繰り返す。新しい連載、本の企画、話だけでも聞いて欲しいと、毎週のように菓子折りを下げて出版社の人がやってきた。
これは確かに。
自分の努力とかではない、なにか特殊な力が働いている。
ここまで大当たりしたのは、始めてだったけれど、仕事を始めて12年たっている私は冷静だった。入ってくる印税は、来年そのまま所得税でおさめることになるだろうと手をつけず(大当たり)、書き下ろしの企画より、雑誌の連載を優先して仕事はどんどん受けていった。雑誌の連載は、掲載時に原稿量がもらえ、それが1冊分にたまるとその印税ももらえる。この読みも正しかった。いつ書き上がるかわからない単行本のギャラより、レギュラーの仕事を細かくても積み重ねたもので、毎月の支払いをするほうが性格的に気が楽だからだ。
仕事に関してはキャリアも長かったので冷静に対処できたけれど、結婚と母親業は1~2年めなので、どうにも冷静さを欠いていたのかもしれない。
とにかく考えるよりカラダを動かさないとどうにもならないような日常だった。
『本が売れて、売れっ子になってうれしいでしょう?』といろんな人に聞かれた。『はい! おかげさまで。ほんとうにありがとうございます』とにこやかに頭を下げながら、本当は全然別のことを考えていた。
わたしはつまらなかったのだ。
ここから先は会員限定のコンテンツです
- 無料!
- 今すぐ会員登録して続きを読む
- 会員の方はログインして続きをお楽しみください ログイン
ツキが半分
占いページのない女性誌は、絶対成功しない。
かつて、占いページなしで新創刊という大英断を下しながらわずか2号で方針転換をした雑誌は、1冊ではない。
占いとあたしの、切っても切れない関係をセキララに綴る新連載!
※本連載は旧Webサイト(Webマガジン幻冬舎)からの移行コンテンツです。