前回に続いて、怒涛の出産の話です。しばらくおつきあいくださいませ。
ゆるゆるフィンランドでも、出産は修羅場
ようやく入院許可がおりてからがまた長かった。入院準備はとっくにできていた、と思っていたのは私だけだったのだ。
病院との電話を終え夫にタクシーを呼ぶよう頼むと、何やらごそごそと準備していてなかなか呼んでくれない。もう人に構ってる余裕がないのでしばらくはソファでだらんと座り放っておいたけど、何分かが経過したので状況を聞くと、「タクシー呼んだらすぐに来てしまうからその前にカメラのバックアップを」と返ってきた。刺そうかと思った。
カメラのバックアップぐらい事前に取っておけ。写真? どうでもいい。データなんて全部消えてもいいし出産の瞬間も別に撮らなくてもいい。
確かにタクシー乗り場はうちから一本向こうの通りにあり、いつも何台かは待機しているので呼べばすぐ来る。それにしても。
どうにかようやくタクシーに電話してもらい、荷物を持っていざ出ようとする頃には、痛みがひどすぎてもうなかなか歩けなかった。このとき陣痛は3分間隔。エレベーターに乗り、夫に支えられ、死にそうな思いでマンションのエントランスを出ると、確かにタクシーが待っていてくれたが、痛みでついに吐いた。入院支度にゲロ袋が必要なんて誰も教えてくれなかった。かろうじて排水溝に照準を当て、胃の中のもの、私の最後の栄養源を戻した。
初老のタクシーの運転手はそれでも優しくて、念の為、と私にスーパーの袋を渡してくれ、車に乗せてくれた。ありがたし。
途中ちょっとした工事渋滞で思ったより到着に時間がかかって、その間夫と運転手が談笑しているのを恨めしく思ったから、もう相当頭が出産前の動物モードになっていたんだと思う。
万国共通、出産時に夫にできることはなし
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フィンランドで暮らしてみた
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日本人の大好きな「かわいい北欧」。でも、その実態は?
暮らしてみて初めてわかった、フィンランドのちゃっかり賢く、ざっくり楽しい、意外な一面。
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